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世界の終わりから  作者: 灰羽 中也
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1ー14 レーヴァテイン

 火の粉を舞い散らせその剣を振るうエバンズさんは、まるで物語の主人公みたいだった。


「北欧神話に名高き、レーヴァテイン…そんな想像の産物、存在するはずないですわ!」


「そう、こんなものは存在しない。ただそこは大した問題じゃないよ、アイラ。改めて説明しよう、私の能力は剣を生み出能力。それが実在しようとなかろうと想像さえできれば、それは生み出せる。魔剣だろうと聖剣だろうと、ね。」


「…坊っちゃまを甘く見ていたようですわ。家を追放されたとはいえ流石は‘’エンフィールド‘’家の血筋ですわね」


「もう捨てた名だ…。降伏を勧めるぞ。君の能力ではレーヴァテインには打ち勝てまい」


「強がろうとそれは紛い物、それに…それほどの能力、いつまで維持していられるかしら?」


 オスカーが小さく舌打ちをする。


「チッ!流石に目敏いな。確かにこの炎剣を長く維持することはできないが…君の策を焼き払うのには、充分だ!」


 オスカーが剣を一振りすると先程まで手こずっていた剣は一瞬で燃え尽きた。


「くっ!出し惜しみしている暇はないようですわね…ならくらいなさい!ワタシの切り札を!大樹の融食花(アシッドブロッサム)!」


 アイラが叫ぶと、地面の下がゴゴゴと激しく鳴動する。


 巨大な植物の蕾と、それを取り囲む大量の根が出現する。

 蕾は大きく口を開け、まるで食虫植物のようだ。


「先程までのとは訳が違います。水分をたっぷり含んだこの根を簡単に焼き切れると思わないことですわ!」


 次々と迫り来る攻撃を、斬り、避け、飛び込み、斬る。

 オスカーが剣を振るうたびに火の粉が舞い散り、瞳が紅く燃ゆる。


 根の先端を焼き切るたびに、また再生し襲いかかってくる。

 凄まじい再生力だ。


 大きく口を開いた花は強烈な酸を吐き出し、炎を搔き消す。


 どちらも決め手に欠け、一進一退の攻防を繰り広げる。

 が、オスカーには時間がなかった。


(このままではジリ貧だな…勝負に出るか…!)


 オスカーが炎を広く放出し、壁を作る。


「悪あがきを…!」


 オスカーは正眼に剣を構え、目を瞑り唱える。


「この一振りに全てをかける。炎よ、我が難壁を打ち滅ぼしたまえ!天焦がす神滅の炎(スルトルフレア)!」


 赤い光が剣に集まり、収束する。


「ハアアアアアァァ!」


「くっ!私を守りなさい!大樹の城壁(ティンバーウォール)!」


 アイラは自分の前に全ての根を集まらせ、防御態勢をとる。


 炎が、打ち出される。波の様に襲い掛かるその炎は植物ごとアイラを包み込み、そして燃やす。


 熱気がここまで伝わってくる。

 肌はひりつき、水分が蒸発していくのが分かる。


 炎が消えると、オスカーはガクッと膝をつく。


「エバンズさん!」


「大丈夫、少し疲れただけだ」


 植物の燃えた灰の先には、服がボロボロになったアイラの姿だった。

 肌はところどころ赤くなり、こちらもまた膝を落とし、しゃがみこんでいる。


「はあ…はあ…」


「くっ、倒し切れなかったか…しかし、君を殺し斬るにはただの鉄の剣で充分だ」


「まさか全て燃やし尽くされるとは…ワタシの負け、ですわね」


「素直に負けを認めるとは、君らしくもないな」


「ふふ、この状況で足掻くほど、ワタシもバカじゃないですの」


「降伏するなら命までは取らん」


「お優しいのですね。ならお言葉に甘えて…降伏すると思いましたかぁ!?」


 根が飛び出す。狙いはオスカーではなく…累。


「咲坂っ!!」


「なっ!?」


 オスカーが動く間も無く、累の体が根によって絡め取られる。


「ぐっっ!」


「坊っちゃまは動かないでくださいまし!」


「アイラ…!」


「詰めが甘いところが坊っちゃまの悪い癖ですわぁ。すぐにワタシを殺せば人質なんて取られることもなかったのに」


「咲坂…抜け出せそうか?」


「無理…そうですね。俺も油断してました、すいません」


「いいや、私の失態だ。アイラ!何が望みだ」


「聞くまでもないことでしょう?抵抗しないで私にいたぶられてください」

 


「ぐっ!」


 人質を取られたことによって抵抗できなくなったオスカーは、アインによっていたぶられ続ける。


 植物の根を鞭の様に扱い、何度も何度も打たれる。

 全身に血が滲み、傷だらけの体で痛みを耐える。


「いい、いい!いいですわぁ!やはりワタシの愛を受け止めきれるのは坊っちゃましかおりませんわぁ!」


「言った、だろう。君の愛など、お断りだ…っぐ!」


「その減らず口もいつまで叩けるか見ものですわ。もっとその苦痛に歪む表情をワタシに見せてくださいまし!」


「エバンズさん!俺のことは気にしないで戦ってください!」


「何を言う。仲間を見捨てては、私はこの剣に誇ることなどできない。君を救って死ぬのであれば、本望だ」


「あらぁ、男の子の友情って素敵ですねぇ。甘ったるくって美しくて…壊しがいがありそうですわぁ」


 アインはオスカーを更に強く痛めつける。


「ほらほらぁ!このままではお仲間が死んでしまいますわよ坊や!」


「くっそ…!」



 俺が…もっと強ければ、能力を使えれば…!

 こんな時に、どうして力が足りないんだ…!



 ’‘また’‘俺は無力なのか…!





 ’‘また’‘…?


 そうだ、確か以前にもこんなことが…


 あれは、確か…



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「累!」


「花音!よかったここにいたのか!」


「早く逃げよう?まだ追ってきてる!」


「くそっ!一体何で俺たちを執拗に付け狙うんだ!」


「わかんないよ!でも、捕まったら絶対ただじゃ済まない!」


「こっちだ!」


 そうだ、俺は花音の手を掴んで、走り出したんだ。

 走って走って、どこに向かっているのかもわからずに走り続けた。


 そして、あいつらにとうとう追いつかれてしまった。


「手間をかけさせてくれたが、もう逃げられんぞ。その様子を見るとまだ目覚めてはいない様だが…奴らの手に渡るのも癪だ。ここで、死ねがいい」


 金髪に冷たい碧眼を携えたあいつには、訳のわからないことを言っていた。

 今ならわかる。あれは能力のことだったんだ。


 仲間であろう一人の巨漢の男が、ニヤリと笑うと目の前が真っ赤になって、熱くて、痛くて…

 花音も泣き叫んでいた。

 炎の中、俺たちは互いの姿すら見えなくなってそれで…


 気付いた時は一人だった。

 花音の姿はなく、周りには微かな残り火だけだった。


 花音は死んだのだとわかった。

 わかってはいたが、理解ができなかった。


 あんなことをした奴らが憎くて、何もできなかった自分に嫌気がさして

 それで俺は抑えきれない怒りと共に能力に目覚めたんだ。


 それから探した。花音を殺した奴らに復習をするために。

 あてもなく走り回った。

 そして、見つけた。


 金髪の男と巨漢の姿はなかったが、確かにあの場所にいた奴らだ。

 殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる


 花音が味わった苦痛を、恐怖を悲しみをお前らにも味合わせてやる。


 そうして俺はその場にいた奴らを殺し尽くした。

 大した抵抗もなかった。大した力もない奴らだった。

 こんな奴らに花音は…


 それから怒りが収まらない俺はやり場のない気持ちをぶつける様に周囲を破壊した。

 彷徨うように壊して壊して、そして力が尽きて倒れた。


 そして目覚めた後に出会ったのが竜二だ。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「そうだ、俺は…!」


「咲、坂?何を…」


 俺を縛っていた根が弾け飛ぶ。


「エバンズさん、全部思い出しました。これで、戦える」

 

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