幼馴染は鈍感
マホがその男を振った翌日学校に行くと、マホの椅子がなくなっていた。らしい。僕は後から友達に聞いたからよく知らない。
なんでも、マホが振った男子生徒に想いを寄せていた女の子が逆恨みでマホをいじめ始めたらしい。
マホから聞いた話だと、その女子生徒は
「ちょっと、あんた調子乗ってんじゃないの? ちょっと顔がよくておっぱいが大きくて性格良くて品行方正でちょっと抜けてるところが可愛いからって……ぐすっ……ひぐっ……ちがっ、泣いてないわよ! あんたにはワタルくんだっているでしょ! それなのに……私のテツヤくんを……許せない!」
と言ってきたそうだ。しまいには
「お前の席ねぇから!」
この有様。相当ご立腹な様子。
ちなみに友達から聞いた話だと、マホは終始その話を聞くよりも自分の椅子を探すのにキョロキョロしていたそうだ。椅子大事だもんね。
いじめはだんだんエスカレートしていって、ある日上履きがなくなった。そこで僕は気付いたんだけど、本当にもっと早く気づいてやりたかったと思う。
「マホ、上履きは?」
「サキちゃんじゃないかな……最近よく私のものを捨てたりどっかにやったりするのよ、やめてって言ってるんだけど」
サキちゃんて言うのがいじめのリーダー格だった。
「それいじめじゃねーか!」
「いじめ? 誰が誰をいじめてるの?」
「サキがお前をいじめてるんだよ! ちょっとこい!」
そう言って僕はマホとサキのクラスに殴りこんだ。
ドアを勢いよく開けて言い放つ。
「おはよう!!」
「「「お、おう」」」
しまった、真面目な性格が出ちゃった。
「じゃない!! おいサキ! いや、老い先じゃないぞ? 別に僕の老後の話をしに来たわけじゃなくて……え? 聞きたいの? しょうがないな……じゃなくて!! サキ!」
「な、何よワタルくん」
「マホの上履きを返してくれ! あとマホをいじめるのをやめてくれ!」
我ながら馬鹿な申し出だったと思うよ。いや、僕馬鹿だからそれしか方法がなかったんだけどさ。
「わ、分かったわよ。わ、ワタルくんがそう言うなら……」
赤くもじもじしながらそう言ってサキはその日からぱったりといじめをやめた。トイレにでも行きたかったのかな?
この時ばかりは自分の顔の良さを親に感謝したね。おかげですんなり許してくれたぜ。
「別にワタルは、顔、悪い方じゃないけど特別良くもないよ?」
天然の一言は本当にメガトン級だからやめて欲しい。死んじゃうよ。
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