~B・R~ Prophet ~唐津編~
唐津競艇場――
~B・R~ Prophet ~唐津編~
唐津モーニング一般戦――
昼を過ぎると、年配の客層が多くなった。
漁を終えた船員や、農家の人たちの憩いの場と様変わりしている。
そのなかに、車いすを押しながら楽しそうに展示を見ている老夫婦があった。
「やっぱり、楽しいね~」
「ええ~。昔は大きいの取りましたね~」
団扇を仰ぎながら、11Rを観戦していたとき――
「よう。お久しぶり~」
作業服を着た年配の男が二人に声をかけた――
「どうも……」
「あれ? 覚えていない?」
「えっと……」
「昔、お世話になった田中ですよ」
「おお……。そ、そうでしたか」
老夫婦は、思い出せないでいるようだが――
「今日は、儲けているかい?」
「い、いや……」
「な~んだ。じゃあ、12Rやってみなよ。買えば当たるレースだよ」
「いえ……、わしらは遠慮しておくよ。年金生活なものだから」
「そうかい? でも、せっかく来たのだ。最後のレースくらいは賭けてみなよ」
そう言うと、マークシートを差し出した。
「いや、私たちは……」
「いいって、いいって。ついでだ。一緒に買ってきてあげるよ」
言いながら、なかば強引に1-2-3.4・1-3-2.4の4点を記入して「1点500円の2000円で十分だよ」――
それでも渋っていると、締め切り終了3分前のアナウンスが流れた。
「締め切りになっちゃうよ、大丈夫。当たるよ」
老夫婦は、最後のレースだから、と――、仕方なく2000円を渡した。
そして12R、締め切りのアナウンスが流れた――
12R――
枠番勝率 平均ST モーター勝率
① B1 35 0.22 33
② B1 36 0.19 32
③ A2 48 0.20 27
④ A2 50 0.20 19
⑤ B1 18 0.22 36
⑥ B1 22 0.20 52
地元選手④
晴れ
風速1m
12Rが始まった――
トップスタートは③
①②は出遅れ。
そのまま③が、あっさりまくりきると④が続いた。
⑤⑥はうまく展開を捉え、3着争い。
結果、内枠有利の⑤が3着を取り、3-4-5、5000円で決着した――。
――レースが終わっても、あの男は戻ってこなかった。
「あなた……」
「すまない……」
「……。帰りましょうか」
――「これ、頼まれていた舟券です」
その、青いキャップを被った若者が近づくと舟券を差し出した。
その舟券は――
3-4-5・1点・2000円
「こ、これ……」
「さすがですね。勉強になりました」
そう言い残して、去っていった。
――老夫婦が車いすを押して競艇場を出ると、警備員に両脇を掴まれている、あの男がいた。
「あ!? す! すまねえ……。こんなつもりじゃ……」
すると老夫婦は、その男に向けて札束を振って見せた。
「田中さん~、ありがとう」
「へ?」
――「さて、婆さん。たまには美味しいものでも食べに行きますか?」
「そうですね~」
蝉の合唱が、二人を迎えていた――
~B・R~ Prophet
さて、次の競艇場はいったい――