FILE:8 日本国民 大和タケル
投稿日変更のお知らせ 火曜日のみ→火曜と金曜。
「ピクシーに大和。助かった。早乙女基地全体の意志として礼を言わせてくれ。」
「貸しね。じゃ戦争に・・・フゴッ!何すんのさ大和!」
大和がピクシーの口を押さえ、ピクシーの言おうとしたことを遮る。
「お前たちは自分たちのことを日本国民と言ったな・・・。」
「あぁ。」
西の回答を聞くなり、大和は束ねてあった後ろ髪をほどく。そして、おもむろに西からナイフを取る。
最後に静かに長い後ろ髪に手をかけ、それをナイフで切り捨てた。
「ちょ、ちょっと!何してるの!?火の里の証明を捨てる気!?」
「・・・。俺も今からはお前たちと同じ日本国民だ。」
西ですら、その行動に驚きを覚えた。
―こいつは・・・一体、何を言っている?
その確かな疑問が西の中にあった。
「大和くん。石油というものはあるかね?」
何か異様なものを感じていた西を含め、張り詰めた緊張の空気に違う貫禄のある何かが混ざる。
「浅田司令ッ!」
咄嗟に西は敬礼の姿に変わる。
「石油ですか?」
「あぁ。火のみを使えても持続されたり加工するには石油が必要であろう?」
「大和、’黒火液’じゃ無いかしら?」
そこで、ピクシーが何かを閃いたと言わんばかりに小さな手をポンとうつ。
「ならば、実物を見てもらうかな。」
と、浅田は案内を開始する。
□■
早乙女基地 整備室。
「やっぱり、黒火液よ!火の里原産だと思ってた。」
そこで、西が何かにつまった様な表情になった、かと思うと何かを思いついた表情になる。
「大和。五つの里のそれぞれの場所を書いてほしんだが・・・。」
この状況下では全く違う話で少し大和も拍子ぬけた表情になるが、近くの紙とペンを使って書く。
「きゅ、九州・・・地方・・・!?」
大和の示した地図は確かにそう示された。
そして、順々と里の地を書く。火の里、光の里、空の里、海の里、森の里。
一番勢力を誇っているのは沖縄周辺の島々を陣取っている海の里。何度も海戦が開かれたが、幾度無く全ての里が負け続けた。
「一応聞きたいんだが、世界地図をかけるか?」
「世界地図?」
と、少し悩んだ表情になり、大まかに書かれていくのは科学の人間たちが見る世界地図を全く同じ。
「あ、ありがとう・・・。」
「?」
何かが回り始めた。そう感じた瞬間でもあった。
そこに富山軍医が姿を現す。
「西、報告するぞ。石油始め水も少し少ない。何とか出来ないだろうか?」
「・・・。軍医、提案がある。西中尉と火の里に訪問するのはどうだろうか?良い黒火液の採掘場がある。」
大和が軍医始め数名兵士に提案した。
「・・・。浅田司令に聞いてみよう。」
「ん?火の里で石油採掘?良いんじゃないか?やられっぱなしじゃお前たちもたまらんだろう?少しはこちらからアプローチをかけるのにもってこいだ。」
許可が下りた安堵、と同時に「やられっぱなし」に対する苛立ち。これが俺たちに刻まれた軍人の証なのかと西は少し焦った。
□■
「CH-47Jを準備しろッ!」
その声が基地内に響きわたり、幾名の人間が地上に繰り出された。
「ほぅ。これが・・・。ヘリコプター・・・ッ!」
「あぁ。CH-47J、通称チヌークだ。」
本来はレーザーサイト・ミサイルサイトへの補給が主任務だが、輸送なんかにも使われる。
「さぁ、乗ってくれ!」
ヘリコプターに乗る装備を整え、坂田トウジパイロットと西、大和がヘリに乗り込む。
「発進!!」