FILE:66 木の葉落とし
FILE:66 木の葉落とし
【こちら、F-15DJ!】
【こちら、空母。】
【只今からそちらに帰還する。】
背後には半ば怒り狂った竜。大島は人生上1、2を争うピンチに見舞われていた。
しかし、ここで墜とすわけにはいかなかった。
だからこそF-15DJは大きく旋回、空母目掛けて一直線に飛び始めたのだろう。
《待てッ!!》
背後から迫り来る大きな存在。
竜は飛びつつその顎を大きく上へと持ち上げた。そして、再び戻す。
すると、口から火の玉が放りだされる。
「右150°に旋回ッ!」
確認していた嶋岡思わずそう叫ぶ。大島は操縦桿を右に大きく傾ける。
接触すれすれで見事に回避。
「大島さん。こいつの底力を見せてやりましょうよ。」
大島は嶋岡の提案を了承し、その機体を大きく上へと上げる。
そして、旧日本軍飛行隊お家芸とまで言われた大技「マニューバ」を大島は実践しようとした。
木の葉落としとまで言われ出来る人間が少なかったマニューバ。
「マニューバをやる・・・。」
「む、無理ですよ!」
「俺は元はブルーインパルスとして航空技術を磨いていた。何度か経験はある。」
ある一定の高さについた時、レーダーの輝点は己の近くにあることを示している。
「向こうは冷静じゃない・・・。この戦いは冷静さを持った者が勝利する。」
大島は輝点をしっかりと見つめながらそうつぶやいた。
ピコン・・・ピコン・・・。
「・・・。」
「・・・。」
一分が非常に長い。
一秒が長い。
「俺、大島さんを信じてます・・・。」
輝点が自分たちより前に存在することを悟った大島は落としていた速度を一気に加速させる。
ギュゥゥォォン・・・・ッ!!!
イーグルがまるで木の葉の様にヒラヒラと舞う。
竜は背後にいるそれに全く気がつかない。
「AIM-120D AMRAAM発射ッ!!」
アムラームが機体から放たれる。その姿は竜を狩るハンターの放った弓矢の様に・・・。
弱点が開いている竜は断末魔を上げる余裕すら無くその命を絶つ。
竜が撃墜される姿を誰もが見た。
そう、彼らは奇跡を呼んだのだ、その手に。
海上。
「り、竜が・・・やられた・・・ッ!?」
南部軍の冷や汗は度を越えている。見たことも無い物体が易々と竜を墜とすのだ。無理も無かった。
「て、撤退命令が下ったッ!!」
とうとう痺れを切らしたお上は撤退の命令を出したらしい。
だが、彼らは完全な罠に嵌っていた。氷の女王の作り出した優位すぎる空間で・・・。
「動けないッ!!!」
生きている船は少ない。その船すら動けない。
まさに万事休す。
その後、大陸船団の猛撃により南部軍は全滅という大敗。撤退すら不可能だった。
しかし、その際奇妙な飛行船が戦線を離脱したことを知る者はいなかった。
世界のどこか。上空。早乙女空母 管制室。
「西二佐以下4名の拘束を解く・・・。」
飯島は遂に己の間違いに気がついたという表情でそう告げた。
しかし、滝、諫早の旨はやはり皆に衝撃を与えた。
西はタバコを吸いに甲板に出た。
早乙女空母 甲板。
そこには飯島の姿もある。科学の世界から持ち込んだタバコなど既に切れており、魔法の世界のタバコが彼らの主流になりつつあった。
「本当にワ爆があるんだな・・・。」
飯島が唐突に話しかける。
西は頷くだけ。
「大和はまた行方不明。振り出しに戻る・・・だな・・・。」
「浅田さんのためにも俺たちがやらないとな。」
今は亡き男の顔が不意に浮かんだ。
「俺たちの旅路ももう半年以上。変わったかな?」
今日の飯島はどこか少しおかしい。そう感じることも出来たが、誰だって哀愁に浸かりたいという意思があるのかして西も変なことを聞くことは無かった。
「変わった・・・というよりは変えられた・・・だな。この同じ姿をした広大な地で、俺たちは世界に自然に他人に、そして戦争に変えられた。軍人では無く・・・ある意味現実を与えられた。」
「・・・分かる気がする。」
飯島は煙を吐きながらそう簡単に答えた。
□■
早乙女空母 作戦室。
「また目的を見失ったな・・・。」
西が思わずそんなことを言ってしまった。
「報告があります。」
たまたま居合わせたウィニー・パディントンが立ってそう言った。
一同は思わず期待を膨らませる。
「海戦時に無許可でイーストテンプル王国から大陸船団の飛行船が造船都市シャルロット王国へと向かっています。」
「造船都市・・・?」
「造船で有名な港町です。向かうのはどうです?」
飯島は深く考えた様子で言葉をひねり出す。
「いや、よそう。それより大和爆弾を追ったほうがいい。浅田さんの残したヒントがある。」
□■
Eエリア シャルロット王国。
「大きい船を注文するんですね。」
設計者が驚きを露にした。一方の注文者である大和は涼しい顔。
「どのぐらいの費用、期間がかかりますか?」
「このサイズですと・・・費用は86億ドグスですかね。」
日本円で約86億となる莫大な費用。
「ついでに期間は?」
「まぁ、数日あれば可能ですよ。」
その辺は抜かり無いという自信満々の表情を見せる設計者。
大和はそれで良いと告げて町へと繰り出す。
「じきに戦争を終える・・・。きっと彼らは全力で止めるだろうな・・・。」




