FILE:62 高度300の敵影
FILE:62 高度300の敵影
「ヒデキ。俺は極東に移る。許可してくれ。」
「ッ!ふざけるな!勝手な行動をして!ゆるされる」「浅田司令が死んだ。」
唐突に西が言い放ったその言葉。最初飯島は何を言ったのか聞き取れなかった。
正確には聞き取りたくなかった。
「悪い冗談は止してくれ・・・。」
「冗談ではない。こんなときに冗談を言える方がふざけている。浅田司令は東北の地で大和爆弾を追って死んだ。イノセント大佐もなッ!」
ダンッ!
西は机を大きくたたいた。周りも話の展開についていけないようにも見える。
「だからと言ってきさまを極東に移乗させることは認めない。」
「いいや。このままでは俺たちは撃墜させる。」
はっきりと自信を持って宣言する西。
飯島はその面構えを1mmの変化させず、ただ相手を見るだけだった。
「飯島二佐!敵影5確認!」
緊急事態と判断した兵士がすぐに飯島に報告をする。
飯島の顔が一気に変化した。
―この男、気づいていたのか!
西たちが搭乗する瞬間、彼らは見たのだ。上空を舞う数機の飛行船を・・・。
「高度は?」
「はっ。ちょうど250です。さらに50上で確認してます。攻撃は確認出来ず。」
西は少し落ち着いた様子で言う。
「良かったな。まだ相手も気がついていない。」
「きさま・・・知っていたな・・ッ!」
飯島はガッと西の胸倉を掴む。
「飯島二佐。止めましょう。」
総軍の吉岡がその一部始終を見ていたらしく彼らを止める。
飯島は半ば仕方なしに西を離す。しかし、尚も西の顔は余裕が貼り付けられていた。
「はっきり言います。確かにあなたのやっていることは軍人としては優秀・・・だったとしてもここは国防軍の中。誰もあなたについて行きたいとは思わない。それを証拠に準備は完了している。この船を堕とす気ですか・・・?」
「くっ・・・。」
「司令。司令は貴方です。移乗の許可は自分で判断してください。」
それだけを言い残すと吉岡は管制室を後にする。
残ったのはどことなくぎこちない空気。
【こちら、空母。】
【こちら、極東。】
【これより、西総軍二佐を移乗する。高度を400落としてくれ。】
□■
移乗後。
「無理言って済まないな・・・。」
西の言葉に今井は何も言うことは無かった。代わりに弁解してきたのは栄だった。
「司令。高度300地点に敵影が・・・。」
「あぁ。分かっている。珍しく飯島二佐がしくじったんでな。高度を400上げてくれ。対空戦闘用意!」
西の指示が極東内に響き渡る。
それを合図に兵士たちの動きは慌しくなる。
「敵影は5だな。03式中距離地対空誘導弾の準備をしてくれ。」
「はっ・・・。準備は完了しています。」
西はレーダーを見る。光る5つの輝点。
「目標へのレーダー照射完了しています。」
栄が報告を西にも告げる。
「よし。SAM-4を上げてくれ。」
無理に設置されミサイル発射装置が機械音を鳴らしながらその体を縦に立てる。
「SAM-4発射用意良し!撃ち方始め!!」
ミサイルハッチが開かれる。
ブワッと発射装置が溜め込んでいた白い煙を上げる。その真ん中を煙を裂くように現れるミサイル本体。
下方部では赤い炎を纏いながら発射させる。
どうやら、発火を確認したのか敵機も極東の存在に気がつく。
パッと明るい光が一瞬光って光はそのまま文字通り高速で極東へと一直線。
「敵機の発火を確認。SAM-4との接触5秒前。4、3、2、1」
ドーーンッ!!
その両者はその身をぶつけ合い弾ける。
「ちっ。気づかれたな。5機相手は大変そうだ・・・。」
しかし、その瞬間輝点の一つが消失する。
「どうした!」
「・・・恐らく空母より発艦したイーグルでは・・・?」
【こちら、F-15DJ。目標に攻撃をした。】
【了解。確認した。】
「目標同高度。目前です。」
「自分が高射運用の指示を出します。」
栄がレーダーを確認しつつ、西に告げる。
西の表情は今日一番の緊張を表していた。しかし、すぐに覚悟した様に指示を出す。
「発射角度0度に変更。10式主砲撃ち方始め。」
「う、撃ち方始め!」
西の無線での声を聞き、10式戦車に乗っている兵士が主砲を放つ。
ドッガーンッ!!
「目標への着弾を確認。沈黙も確認しました。」
「残り3機・・・。」
しかし、負けてばかりといえない敵機も遅れて攻撃を開始する。
「目標より発火確認。」
栄がヘッドマイクに手をかける。その姿はいつも飯島と同じ癖の様にも見えた。
「SAM-4を使って食い止める・・・。目標へのレーダー照射変更。」
「進路を左30度へ旋回。」
大きく左に傾く極東。
「目標へのレーダー照射完了!」
SAM-4専属トラックよりの入電を確認し、栄が決心のついた表情をする。
「SAM-4を上げてください。」
発射装置が再び立たされる。それを確認した栄は先刻と同じように「SAM-4用意良し。撃ち方始め!」と叫ぶ。




