FILE:6 F-15J墜落
早乙女基地 管制室。
「急速移動物体が基地に突撃するまで計算では約2時間と言ったところです。」
「・・・。10式戦車部隊を基地周辺に緊急配布させる。目標を視認した時点で一斉掃射をさせろ!」
「了解です。」
飯島は司令を下す。10式戦車部隊を直ぐに配置するように。
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早乙女基地 整備室。
「斉木!何をぼさっとしている。早く10式のメンテを進めろ!」
悪運によって運命に翻弄させた兵士達は幾度と無く起きる急な闘いに既に限界を感じていた。
「すみません!」
しかし、プロとしてまた一人の運命の被害者として斉木もまた必死に闘い始める。
「いいか?俺たちは直接戦争に加担するわけでは無い。だが、同じ仲間としてここで油まみれにならないと連中を殺すはめになる。敵に殺られるならまだしも身内に殺されちまう兵士なんていちゃならねぇ。」
「・・・はっ!」
斉木はその言葉を元に全身に力を込める。
早乙女基地 管制室。
「何ッ!?囮だと?」
「あぁ。実際にどれほどの大きさなのかは視認しなければはっきりしない。俺がバイクで引き寄せるから無線で合図を送ったら10式戦車による一斉射撃を行ってもらいたい。」
西は己の言葉に大きな自身を持って発した。
「分かった。独身のお前には何も無いかも知れないが・・・生きろよ・・・。」
「・・・。馬鹿、俺にも守るものぐらいあるさ。己のプライドって奴よ。何、俺のじいさんは生き延びた軍人さ。そのDNAがあるならば’勝つことはできなくても生き延びること’程度なら出来るさ。」
その言葉を言い、西は直ぐに踵を翻しバイクの車庫へと向かった。
早乙女基地 車庫。
「ご健闘を祈ってます。」
「くくっ。そんなに祈ってもらわずとも俺はきちんと生き残って帰ってくる。それが今の俺たちに課せられた任務だ。」
「はっ。」
ブロロロン!!
バイクはまるで戦国の暴れ馬の如く大きな嘶きを上げた。エンジンの強さに思わずウイリーの様になる。
「ははっ。まるでじゃじゃ馬だな。さて、行くか。」
途端に隣で車庫番をしていた整備士が敬礼をする。そして、バイクを発信させる。
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早乙女基地 管制室。
「報告です。早期警戒管制機 E-2Cより光の里より30の飛行物体を確認。」
「・・・。よし、スクランブルだッ。F-15Jを二機・・・発進させろ。」
「了解です。」
早乙女基地 地上滑走路。
滑走路は先刻よりもさらに慌ただしくなっていた。
「F-15J二機の準備完了しました。いつでも行けます!」
「健闘を祈る。グッドラック。」
整備士の言葉を胸にパイロット達は戦闘機を発進させる。滑走路を瞬く間に駆け抜ける戦闘機は無事に離陸をする。
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「こちら、F-15J。ほうきに跨った群衆を発見。攻撃許可を!」
「こちら、管制室。攻撃許可を下す。」
早乙女基地より南部に十数キロの上空。
二機の戦闘機と30人の魔法使いとの上空での闘いが幕を開けようとしていた。
ズダダダダダッ!!!
先に攻撃を仕掛けたのはF-15JのJM61A1 20mmバルカン砲。20mmバルカンは大きな音を立て、光の魔法使いを襲う。
「おのれっ!それが悪魔の鳥か!!」
ピカッ!ヒューン!!
光の使い手達はバルカン砲に恐れをなすどころか、指先に光を集め発砲を行なった。
カンカンッ!ドーン!!
数発、小さな光の弾がイーグルに直撃する。途端にそれは爆発をし早々にイーグルの装甲に亀裂を走らせる。
「ちっ!装甲が殺られた!奴らを甘く見るな!」
「了解ッ!」
二機間でそう会話が走る。
「旋回し、空対空ミサイルの発射を許可する!」
管制室よりの声がパイロット両名に放たれる。だが、実戦経験など無かった諫早ケイタパイロットは、再び20mmバルカン砲を放つ。
「何をしている諫早ッ!早く上空で旋回しろっ!」
だが、光の使い手達はその攻撃に屈しない。
「一羽は上に逃げたがもう一羽は変な物体を飛ばしている!」
「りょうッぐああぁぁ!!!」
バルカン砲に直撃した兵士一人が堕ちていく。それに続き、二人、三人、四人と次々に兵士たちは地上に堕ちていった。
「ははっ!ざ、ざまぁみやがれッ!何が魔法だッ!」
「諫早!急げ!死ぬぞ!?」
その言葉が諫早の脳内に届くには遅すぎた。
「えっ?」
我に返った時、一人の兵士がイーグルのエンジンへと突入した。
バードストライクを超えるそれは光を集約させ、大きな爆発を生む。
「い、諫早・・・!」
耳を劈く爆発音はもう一人のパイロット 大島カズキと管制室を襲った。
「大島・・・退却だッ。各員は地対空ミサイルを至急配備。残り敵数は10だっ。何としても叩けッ!」
諫早の死は彼らが今どこにいるのか、それを正した。
これが戦争なんだと・・・。