FILE:55 離別した者たち
FILE:55 離別した者たち
大和タケルの実家地下。
「間違いなく第一世界大戦時の米軍基地ですね・・・。」
歴史を得意とした斉木トシキは宙に浮かぶ?米軍基地を眺めそう呟いた。
「・・・記録じゃ確か爆撃程度しか残っていないんだろ?」
「正確には爆撃と思われる程度で実際には不明のままです。」
―これが悪魔の里と早乙女基地を形容した理由か・・・。
「ですが、これで大分と納得着きましたよね?司令。」
川田が唖然としていたその表情をやっと直し、西に話しかける。
「・・・いや。また増えたという方が正しい。」
「?」
川田の表情には疑問のみがあった。
「どうして、こんなところに米軍基地跡がある?大和は何か知っているのか?」
彼らは事実上行方不明である大和を捕まえる必要がある。
「大和に関しては最後に確認されているのは・・・。」
「志木さんが乗っていた大陸船団飛行船に志木と名乗って帰りに乗り込んだのが最後です。」
―そこにやはり秘密があるのか・・・?
しかし、彼らの思考はここで停止させられる。
ズシン・・・ズシン・・・。
地を始め、空気ですら揺れている様に感じる。目線をゆっくりと米軍基地から真っ直ぐへと切り替える。
ズシン・・・ズシン・・・ズシン・・・・。
そこにはとても人間とは言えない様な人間がいた。しかし、肉は無く皮が目立ってその下には骨がしっかりと見えた。
「きょ、巨人ッ!?」
一言で言えばそうとしか言い表す事が出来なかったのだ。
「あんなのこっちに来て見たこと無いぞ!」
「何にしても危険ですかも知れません。地上戦闘用意。川田空士他空軍関係者は目を凝らして見ていてください!」
「「りょ、了解!」」
一気に焦りが増す。
《グォォォォォ・・・・・・。》
巨人の慟哭が響きわたる。同時に西達の背中を通り過ぎる悪寒。
ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!
巨人は西達の存在に気がついた途端、その歩みを走りに変える。
ドッ!ドッ!ドンッ!!
ブワッ!空が地とも言えるこの空間の中、空を裂く爆ぜる音。
それは巨人の跳躍だった。
米軍基地に届く様な距離にまでその高さをあげる。それは、西達への距離を一気に縮めるサインとなった。
「戦闘用意ッ!」
西の怒声とも言える叫びが空間を包む。それは緊張を最高にまで引き上げ、ゴクリと生唾を飲み込むものまでいた。
ダダダダダダッ!!!
89式5.56mm小銃がその轟音を鳴り響かせる。その音を鳴らしているのは斉木。
その顔は冷静さを保ちつつ、緊迫さを醸し出していた。
ビスビスと、ダットサイト越しに巨人への着弾を確認。しかし、巨人はそれを物ともしない様子。
そして、彼らの眼前で視界と己の体が大きく揺れる。巨人の着地だ。
「うわあぁッ!?」
その大きさは軽く15m。近くで見るとさらに緊張が増す。
ダダダダダダダダダダダダダダダダ・・・・・。
先ほどより長い銃撃。しかし、やはりその射撃は無駄と言わざる負えなかった。
「斉木ッ!撤退だ。離れろ!」
西がすぐに指示を出す。
「ガッ!?うわぁぁぁぁ!!」
その叫び声は西に説得され脱出の手はずを整えた諫早の叫び声だった。
パンッ!
その破裂音が短く響くようで響かず、また確かに西たちの耳に届く。
「諫早・・・ッ!」
諫早はその形を残さず、巨人の握力を前に屈してしまう。
唯一残ったのは彼らに降り注ぐ真っ赤な血の雨。
「に、逃げるぞ!!」
すぐにハシゴを登り、地上へと戻る小隊。
《グォォォ・・・グォォォォォォォォォ!!!!!!》
下からその悲愴とも言える叫び声が轟くのを彼らは聞いた。
「登って・・・来ない?」
―大和はあんな奴がいる上で生活していたのか・・・?
西は背中に汗が流れていることを察知し、それが巨人への恐怖と同時に大和への怒りであることに気がついた。
「諫早・・・済まない・・・。」
西は謝罪の意を口にする。しかし、それを届ける相手は既に風船の様に弾け飛んだ後で、彼らはなすすべも無く、彼の死を悔やんだ。
彼らは被っていた鉄帽を腕に抱え、手を合わせることしか出来なかった・・・。




