FILE:5 早期哨戒命令
西は己の服が周りの環境と酷似している隠密行動用戦闘装着セットであることに気がつく。
元来、狙撃手などに配布される隠密行動用戦闘装着セット、通称ギリースーツ。だが、この中で生きていくためには見つからず
行動する必要もあった。
「ギリースーツか!」
西は直ぐに獣道から外れ草むらに姿を隠す。
「そんなところに隠れてどうするッ!」
魔法とあればこちらのものという顔つきで腕を振り払う。そこに沿って、炎が軽い軌道を描きながら草むらを襲う。
「だから、お前は怪我をしたんだ!」
「ッ!?」
大和の背中に強い打撲感。西の放った飛び膝蹴りを真に受けたのだ。
「かはっ!」
嘔吐感が直後に大和を襲う。
「てぇいッ!」
しかし、そこはやはり兵士。直後に脳内の電気回路が肘に命令を送る。肘を後ろにスライドさせろと・・・!
「ぐっ!」
肘をダイレクトに腹に直撃され、判断力が瞬時に低下する西。
「ちっ。近接戦闘は一旦避けるか。」
大和が新たな攻撃態勢に入ろうとした瞬間に西は出てきた草むらに姿をくらませる。
「意味など無いぞ!その行動ッ!」
再び、腕を振るい炎を放つ。
だが、真正面から筒状の何かが転がってくる。
-これは、!?
大和にはそれが何かわからなかった。だが、本能的に
これは危険
だと判断し、さっと後方に跳ぶ。だが、その判断は少し遅かった。
閃光爆弾が破裂するまで・・・。
カッ!!キーン!!
強い閃光と耳を劈く様に鳴り響く音。同時に、全身に拘束された感覚が走る。
「くっ。」
次、大和が気づけば西が己の体に巻きつく形で拘束している。
「少し、甘かったな。大和タケル。」
カチャン。大和の両手に手錠をかける。
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早乙女基地。
「現地兵士 大和タケルの投獄が完了しました。」
「まぁ、奴にも守るものがあったというべきだろう。だが・・・。我々も生き残るには手を尽くさねばならんからな・・・。」
浅田は西にそういい残し、司令室へと向かった。
「ん?川田。」
そこで、背後に川田が立っていることに気がついた。
「報告あがります。先ほど、一二零零丁度に離陸した無人偵察機TACOMが海没。スクランブルの指示を!」
「何ッ!?」
西と川田は直ぐに空軍へと走った。
「あ、西中尉。報告です。先ほど、TACOMに攻撃する現地民を確認。空、火とは異なる光を使う魔法かと・・・。」
「光・・・?」
新たなる里の奇襲により、西の判断も鈍る。
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光の里。
「隊長。先ほど、サトシが感じた飛行物体は空の里にも存在しないものでした。」
「ふむ。火の里の声にもあった例の悪魔の里の住人が放ったものかも知れんな・・・。」
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「有人でパイロットに指示を煽りますか?」
「・・・。」
-ここで簡単にパイロットを殺害するわけにも行かない・・・。だが、もしも里の人間が奇襲をかけてきたりしてもまた厄介。
「・・・。もう一度TACOMを発進させろ。それから哨戒機も一機発進させ、空域侵犯されたときのために戦闘機も配備しておけ。」
「はっ!」
ここでは実にいい判断だっただろう。
「TACOMパイロットはパイロット管制室へ。早期哨戒命令が下った。ホークアイとスクランブルに備えたF-15Jの発動準備もしておけ。」
「了解。TACOM発進準備完了しました!中尉ご指示を!」
そこで、西は空気を吸う。戦場の空気を大きく。
「発進ッ!!!」
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早乙女基地 滑走路。
「TACOM発進確認。ホークアイのも急がせろを!」
「イーグル(F-15J)の出車確認。」
「そっちも急がせろ!何が起きるかわかんねぇ!」
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早乙女空軍基地 管制室。
「TACOM再び墜落しました。さらに東より急速移動物体の確認。現地動物の可能性もありますがかなり大きいです。」
「ちっ!このタイミングでッ!?」
管制室のレーダーには確かにマークがあった。すばやい移動物体の・・・。
「こんなところで簡単に殺れて何が国防軍だッ!やり遂げろ!俺たちの最後の希望 日本を消すなッ!!!」
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