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ワンダーリアル  作者: 淡水
第七章:セントラル衝突飯島視点編
44/80

FILE:44 空中戦艦 「極東」発艦

空中戦艦「極東」始動数日前。テンプル王国の裏通り。

そこには何故か氷の女王と、男が一人佇んでいた。男はすっきりとした顔立ちでいかにも清潔そうな男。

名を大和と名乗った。

一方の氷の女王もその存在をさして何とも思わずいた。


FILE:44 空中戦艦「極東」発艦


「何ですの?改まって。わたくしたちの一族は滅び行きましたわ。」

「いやいや、早まってもらっては困ります。」

スッと大和は腕まくりをする。すれば、そこには紋章が描かれている。


「やはり、貴殿も彫っていましたか。」

「・・・。新魔法は結局は簡略化したもの。旧魔法は一芸に長けた人間が使うべきですよ。女王だって、その纏わりつく凍てついた空気、魔法なんですし。」

女王は大和の用件が何かは想像が出来ずにいた。しかし、腕の紋章を見て確信することはそう難しくなかった。


「サウスでの絶対王の死。一介の人間のやることで無いと思ってましたらそういうことですのね。」

「存じ上げてましたか。なら、話は早い。これらを’貴女’に受け取ってもらいたい。」

大和は物々しい箱に納められた何かを手渡す。箱の中にはそれぞれ、短剣、首飾り、本、義眼の4つ。だが、すぐに大和の指に嵌められているそれに女王はすぐ気がつく。


「そちらの物は返していただけないのかしら?」

大和が待ってましたといわんばかりに口角を上げた。


「あ、これは失礼を。」

指輪を外して女王に渡せば、後は用など無いと言う風にその場を後にしようと踵を翻す。

「もういいのかしら。用は終わりまして?」

「えぇ。もう’悪魔’の力には興味ありません。後はご自身で戦争に身をもって立ってください。」

大和はそう告げれば、その場をすぐ離れていった。


「これで、死ぬ体になりましたわね。」


□■

時間は戻って、早乙女空母。

一人の飛行士が一瞬で全身に火を纏わせた。

「・・・これはすごい・・・。」

空母の兵士たちは皆、驚いた表情をしていた。


「あんたらは新魔法しか知らないんだったな。」

「いえ、旧魔法も少しは。」

空母の食堂では飛行士も交えて話が展開されており、その場には沢木を含め、数人の兵士がいた。


「旧魔法ってのは紋章と呪文が必要だ。頭で呪文を唱えて書かれている紋章が有効化するってわけ。まぁ、旧魔法は複雑で習得する奴なんざ職人やら兵士でも階級の上な奴らばっかだ。戦時中じゃ一般の兵士も習得していても使う機会はそこまでいない。」

「やっぱり、戦争は大変ですね。」

「あんたらは軍人という感じでは無いな。」

一同がその言葉に同じ回答を考えた。


彼らは全員元自衛隊兵士でもある。戦争するために人を殺すことの出来ない人間たちでもある。


その表情を見て、飛行士も納得がいったのか・・・いかなかったのか。それ以上は深く追求することは無かった。

「じゃ、俺は下に戻るわ。」

飛行士はそういい残し、そのまま空母の操縦室へと向かって行く。


「しかし、魔法って無限ですね。」

「・・・。ま、俺たちはそれに染まっちゃ駄目だけどな。氷の女王なんかもあの張り詰めた冷たい空気は全部魔法ってんだろ?すげぇけどな。」

それぞれが何かを隠す用に魔法の話題を取り上げている。


すると、いきなり放送が始まる。


【空中戦艦「極東」への搭乗員を決定した。よく聞いてくれ。】

突然の放送で始まった声の持ち主は飯島だった。


【まずは空軍兵士より抽出。立花ヨウスケ一等空士。栄タクミ一等空士。米倉カズキ二等空士。麻生ユウヤ二等空曹。今井コウヘイ空曹長。陸軍よりは杉本トモキ陸曹長以下篠原二等陸士、柳一等陸曹、安部陸士長、竹谷二等陸士、青梅三等陸曹で行く。またパイロットはライズ・ボイルパイロットだ。】

そして、放送は終わった。


「お、俺かよ!」

所々にそんな声も漏れていた。沢木たちと一緒に食事を取っていた立花は少し緊張の顔をしていた。

「頑張れよ。なーに、お前ならうまくやれるさ。」

周りの奴らはそう言ってはいるものの、その声は立花には届いていない様子。顔色の悪いまま自室へと戻っていく。


□■

数日後の後に氷の女王率いる氷の北部と称されるその船団は太平洋にあった。ワールド・シー・インパクトとも呼ばれることとなった海戦。

そこに赴くは数多の空中船団。そのうちに混じっているのは何か異常な物体。早乙女空母の姿。

空母の滑走路には極東の巨体もあった。旧魔法の一種でもあった固定の魔法を利用し、10式戦車が5台既に設置されていた。

他にも対空ミサイル、対艦無誘導爆弾など様々なものが設置されていた。


立花の姿も滑走路にある。その手には一枚の写真が握られていた。


―誰が、こんな数奇な運命を辿れといった・・・?

写真に写る息子たちを見て、涙を呑む。


「・・・。司令の言っていたことはあながち違っては無かったのかもな・・・。戻りたい、一刻も早く。こんなにも刻苦の思いに駆られるならば・・・。」


少し自嘲気味になる立花。


「まぁ、これも運命。死ぬよりはマシだッ!」

そう、言って己を奮い立たせ極東に乗り込んだ。


「極東の準備が整いました。」

「了解。空中戦艦「極東」・・・テイクオフッ!」


巨大な空中戦艦は宙に舞い始めた。


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