FILE:38 ダイワ爆弾
「飯島二佐!報告上がります!食堂から・・・軟禁していた全員が・・・行方不明になりました!」
その報告は飯島を始め管制室の兵士たち全員に衝撃を走らせた。証言によれば、見張りだった兵士 諫早の弟諫早 カイトもいなくなっていたらしい。
「・・・諫早の弟か・・・。」
飯島は極端に渋った顔をする。
「・・・シュンスケにはまだ知らせていない、重要な話があるんだが・・・。」
数日前 資料室。
飯島はパソコンにもめっぽう強く定期的に誰かが資料室の何のページを見ているかなどをチェックしていた。
その日は、魔法の国に来てから初めてのチェックで相当の仕事量が予想されていた。
しかし、そんな予想とは裏腹に速球の様に目に入ったのはある記事。
「・・・新型爆弾?」
飯島の言う新型爆弾とは、アメリカ、日本、EUとが共同に開発したもの。
しかし、肝心なのはその中身。
日本は国防軍を設立させるより遥か前。西、飯島がまだ高校生だった頃、世界で初めて第三のエネルギー「ヤマト」を作り出していた。
愛知の中小企業が提案した第二永久機関(第一は開発されているものの、実用には程遠い。)を利用した半永久的に使えるエネルギー。
そして、それを元に作られた大和爆弾。ワ爆と称されるものが遂に前年開発されたのだ。
実験によりワ爆は、半永久的に燃え続けるエネルギーのため島一つを軽く消したのだ。
だが、それを言うより先にそのワ爆に関する記事が誰かに読まれたのだった。
「誰かがワ爆の資料を読んだ・・・?」
そこで、飯島は直感的に時間軸と資料を読み取られた時を計算した。
「・・・大和がいた頃?」
日にちははっきりと今年の春先となっている。丁度、彼が自分も日本国民と名乗っていた頃。
「まさか・・・大和タケルが・・・?」
何の目的があるのか。しかし、ただ科学に興味を示しただけとも言い切れなかった。
それほどまでにワ爆というのは恐ろしいものであり、同時に電子の世界に何か悍ましい何かを感じたのだ。
再び、戻って。
「・・・しかし、彼らは一体何を目論んでる?」
飯島には西たちがIT作戦に関与せずとも、わざわざ基地外へ出ていく理由が分からなかった。
「どうでしょう。単なる当てつけにしては大人気ないですし。」
西と行動を共にしていた中で唯一残った陸軍兵 沢木はそう伝える。
「・・・大和を追う気だな。」
飯島は高校時代からの故人である西の考えをほぼ確信的に貫く。
□■
旧火の里周辺。
「良かったのか?諫早。」
斉木が決心をつけた表情の諫早カイトにそう問いかける。
数時間前。
「司令。何をなさってるんです?」
西たちの怪しい動きを察知していた諫早がそう言って近づく。
「・・・。俺たちは今日中には基地を出る。」
「!?何を言ってるんです!?」
勿論、最初それを聞いたとき諫早をえらく驚いた表情をした。
それも当然であろう。
「ヒデキは恐らく知らない内に大和の理想に惹かれている。だが、そんなもののために大切な人間を失いたいか?」
基地内で唯一肉親である兄を失っていたカイトはこの西の考えを聞き、自分に問い直した。
―死んだ仲間に顔向け出来る選択を俺はしているのだろうか?
その問いの答えが出る頃には全員の手錠を外し、荷物を整えていた。
再び、戻って。
「ですけど、司令。どうして、火の里へ?」
「・・・。移動手段も少ない中、俺たちが来れる一番近い場所と言えば・・・。」
西は歩きつつ、質問に答え、そして一軒の家の前で止まった。
「大和の家・・・?」
斉木はそれが誰の家かは分からなかった。しかし、先刻の西の発言からするにそういうことなのだろうという意の発言でもあった。
ガチャン・・・。
扉を開けて中に入る。途端に見えたのは普通の家。
しかし、中央の床が扉の様になっていて開けられている。近くによると最初の階段の足跡の上にも既に埃が積もっており、最後に誰かがやってきてから結構時間が立っているようにも取れた。
ゆっくり、ゆっくりと手に9mm拳銃を握りつつ階段を下っていく。
「ッ!?」
一同の表情は一瞬で驚愕へと替えられた。
澄んだ様に青い空。それが真下にあるのだ。一瞬にして変な世界に迷い込んだ、そんな錯覚を生ませた。
「司令ッ!」
川田が上を指差す。そして、見えたのは・・・。
「こ、コンクリートの道ッ!?」
そして、その先に繋がっているのは・・・。
「アメリカ軍基地ッ!?」
西たちは聞いたことがあった。今から大よそ100年以上前、第一次世界大戦の際アメリカ軍が参戦した直後アメリカ軍基地の一つがこの世から姿を消していたのだ。
混沌の世のせいで大きな記録は残ってはいなかった。
記録では不明軍により爆撃とだけ残っている。
「・・・それがまさか・・・。魔法の国にいたなんて・・・。これが’悪魔の里’と呼ばれる存在なのか・・・!?」




