FILE:33 二分する意思
「戻ることを考えなければならない!」
「何を言っているッ!戦争に介入していくべきだ。もう後戻りは出来ないのだぞ!」
それは軍という垣根を越えて、二人の喧嘩へと発展しつつあった。
西は直ぐに踵を翻して「俺は本土戦争に加担しない」とだけ言い残し、管制室を後にする。
―・・・俺たちが魔法の世界にやってきて早半年近く。いつまで戻ることに夢を見ている・・・?
飯島はもう半年以上この地で生活していることで半ば自分たちが元の世界に戻ることを諦めていた。
二人のやり取りを固唾を呑んで見守っていた空軍の兵士たちはどっと緊張が抜けた表情となる。
しかし、本土戦争。何がどうなっているのか分からない彼らはイノセントに戦状を聞いてみることに。
本土戦争は南部と北部が民族の関係など無視した戦争をしているらしい。
東海地方というのは元々から資源豊富で有力な魔術民族、都市ということもあって狙われやすい地域でもあった。
そこに南端の海の里が取りにかかったのを機に一斉に戦争が始まった。
当の東海地方では、既に防衛魔法が張られ完全に隔離を保っている。
しかし、イノセントの話では既に何万人もの人名が失われている。
「・・・。だが、俺たちは部外者だ。立ち入ることは万人が許しても神は許さないだろう・・・。」
西はその思いを元に大和の存在を気にかけだした。
-俺たちが戻るために・・・まずは、派遣からだな。
翌日。
「滝を中心に大和のいるエリア王国へ向かわせる!?」
「あぁ。そこで数日、基地をはずす。」
西は過去に暗殺阻止のためにエリア王国へ向かった面子で再び大和の元へ向かおうとしていた。
「ですけど、面談拒否なんでしょう?」
「らしいな。一度イノセント大佐に連絡を取ってみる。」
最近、早乙女基地の面々は志木に打って変わって情報を得るときはすぐにイノセントに連絡していた。
「お前らは本当に命知らずか?だが、まぁ話してはやろう。」
・イノセントが直接大和を逮捕。
・直後にエリア王国では無く、フォースノーツ近辺の無人島へ投獄。
・無人島と言えども重罪者のための牢獄であるため島全体が天然の要塞となっている。
・無人島の死刑囚のため「ヘル・エリア」と呼ばれる場所の地下に投獄されている。
「なるほど、面会しようにも中々の難易度ってわけだ・・・。」
「・・・それに魔方陣の解除などそちらでは不可能だろう?一人人員なら回してやらんことも無い。本当にやるのか?」
無線連絡でありながら、西は一礼しつつその申し出を受け取る。
□■
「では、西始め3名。作戦を開始する。」
「四名に・・・敬礼ッ!」
あの日、エリア王国から戻る時と同じ風景。敬礼を返し、ヘリに乗り込む。
フォースノーツ海岸線沿い。
「はじめまして。エリア王国より派遣されたウィニー・パディントンです。以後よろしく。」
ウィニーの挨拶に全員が返す。
「自分は元から魔方陣解除班なんであまり戦闘では役に立たないかも知れませんが・・・。」
「構わん。」
西は頷き、付近に用意されたボートに乗り込む。
早乙女基地 食堂。
「・・・司令のいない。今聞きたいッ!司令の判断は間違っている!いつまでも戻るだけのことを考え続けることは間違っていないか?俺たちが安全に調査するためにも終戦に我々も協力すべきだ!」
飯島が昼食の時間中に全員にそう問いかけた。
通常の人間ならば、ここでの回答はNOであろう。しかし、一度殺すことを体験した彼らはここでNOと言えずにいた。
「た、確かに・・・。」
「それもそうだな・・・。」
飯島はニヤリと顔をゆがませる。
―シュンスケ。悪いな・・・。
フォースノーツ付近の海上。
西は何かの機械を取り出す。そこに数字を入力する。
「?司令。それは?」
「・・・これは、早乙女基地自爆装置だ。」
全員の顔が凍る。
「俺は魔法の世界にやってきた直後に基地の地下に米軍が開発した新爆薬を5つ設置した。それがあれば間違いなく、基地は吹っ飛ぶ。」
「あ、あんたって人は何をッ!」
西は滝のその発言(上司に対しての暴言)に対してさして怒ることも無く、言い放つ。
「戦争では、いつだって自分を見失う。だが、これがあれば違う。これがあれば基地の全てを背負っていると理解出来る。浅田さんもそれを分かってくれた。」
「・・・。」
「多分、今頃基地では飯島が俺がいないことを良しに戦争介入への準備を勧めているさ。戻ったら・・・。」
西はそれ以上は何も言わず、ただひたすら先の島を見続けた。




