FILE:2 妄想の科学
「魔法・・・だと!?」
一同の頭には理解不可能だった。理由は簡単。そんな経験など無かったから。
小人というのは概ね妖精と同じ区分で名前をピクシーと名乗った。
この世界にはいくつもの魔法使い種族がおり、代表格の5つの種族が戦争を行っているらしい。
「ですけど、あの変な物は何ですか?」
と、ピクシーは自衛隊由来の9mm拳銃に指を指した。
「これは科学の結晶。9mm拳銃だッ!」
「科学ぅ?そんな妄想の世界の様なもの・・・。」
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早乙女陸軍 射撃場。
パーンッッ!!
乾いた音が射撃場に鳴り響いた。
「う・・・うるさーーい!!」
ピクシーは銃の音に負けじと声を上げた。
「言っておくが魔法のほうが俺からすれば、妄想的だ。」
マネキンの頭に焼け焦げた丸い傷をピクシーに見せ、西は語る。
―これが我らの技術だと!。
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「これだけの力があるならやれるの!私たち、火の里の民のために力をふるって!」
9mm拳銃に加え、M4カービンの射撃を見たピクシーは浅田のいる前でそういった。
「すまないが西中尉以外は席をはずしてくれ。」
その言葉に従い司令室を後にする数人の男たち。
「我々は望んでここに来たわけではない。とだけ言っておこう。西中尉、君はどう思う?」
「はっ。私の考えではその様な無意味な戦争に加担する必要は無いと思います。」
西のその発言にピクシーの顔が一瞬にして怒りに変わったのは言うまでも無い。
「どうして!?貴方には守るものは無いの!?」
「いいかっ!?よく聞け!我々の守るものは、見知らぬ日本国民とお上の面だけを守ってるんだっ!冷酷無比で構わない。おとぎ話の世界では無い。俺たちは俺たちしか持っていない価値観でこれから行動しなければならない。」
そこで西は一つ呼吸を置く。
「今の俺たちに軽率な行動など許されないのだっ!この先、一人の戦死者も出さずに元に戻るには!」
その言葉を聞き終わる頃にはピクシーは逃げるように光の如く残像を残しつつ消えていった・・・。
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早乙女空軍基地。
「ということは?」
「つまり、この基地自体の座標は一寸違わずここにあります。」
西はピクシーの消えた後、自分たちはどこにいるのかという興味を持った。まずは手短にどれぐらい座標が変わっているのか、空軍に問い合わせた。
だが、不思議なことに座標は前も今も同じだと言うのだ!
「・・・夢とは行かないか?」
名前も知らない空士を訪れていた西。
「無理でしょうね。」
そこで二人に沈黙が訪れる。
「君、名前は?」
「はっ。私は川田トミコ一等空士です!・・・ってあれ?」
そこで川田からはどこか気の抜けた声が放たれた。
「どうした?」
西にはあまり空軍の保有するレーダーには詳しくなく、現状を聞くだけが精一杯だった。
「基地の外でレーダーが人?を感知しました。」
「・・・。」
そこで西は踵を返し、空軍基地を後にし地上への通路へと向かう。
「に、西中尉?」
止める間も無かった川田は西の遠ざかっていく後姿を眺めるだけだった。
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早乙女基地 地上。
「だ、誰か・・・いるかぁ・・・?」
その悲壮たる声は空しく近くに人に聞こえるか聞こえないかぐらいだった。
「誰だ?」
声に対する声。西だ。
西の眼前にえらく傷ついた一人の人間が今にも気を失いそうな状態。
―戦争による怪我か?
兵士としてでは無く一人の人間として、その男を見ていた。
―軍医に見せるか?
「戦争による怪我か?入れ。」
「良いんですか?」
西の後に着いてきた兵士は少し不安げな顔をしてそういう。
「戦争には加担しないが、少なくともこの地の情報を仕入れるには現地民との交流も多少は必要であろう。」
兵士は頷きゲートを開ける。
「お、恩にきります・・・。」
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