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大砲姫  作者: 阿波座泡介
デルガト半島動乱編
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デルガト攻略4


「あの姫殿下、もう一つお耳に入れたいお話があるのですが」


ニコラス・コールが、少し声を潜めてきた。


「話すがよい」


「それが、その……いやな噂でして」



いやな噂?



ニコラスはチラリとガードルート中尉の方を気にしている様子。



いらない気を使わせるのもどうかと思うので。



「ガードルート中尉、酒保を開けるように伝令をしてくれ」


「酒保でございますか?」


「うむ。砲も届いたしのぉ。攻勢前に兵を慰めねばな」


「拝命しました。兵も喜びます」


軍人礼をしたガードルート中尉は、天幕から出て行った。


「さて、これで良いか?」


「ありがとうございます」


ニコラスは平民礼で答える。



さて、ニコラスが語った『平民の噂話』はなかなかに興味深いものであった。



後ろで聞いたいたグレタから、何だかピリピリした空気を感じるが、見た目は笑顔のままだった。


まあ、怒りは分かる。


私も『ふざけるな!』と怒鳴りたいが、怒鳴る相手はニコラスではない。



それから、ニコラスに商売の指示を幾つか出して下がらせた。



グレタは何事も無かったように冷めた茶を淹れ直している。



「さてさて、事態は我の予想よりも深刻じゃな」


私は独り言のように呟いた。


「とんでもない話でございます」


淹れ直した茶を置きながらグレタが呟く。


「とはいえ、敵の正体と攻勢方向が分かったのは収穫じゃな」


「まことに」


グレタが頭を垂れる。


「では、グレタよ。忙しくなるな」


私は肉食獣のように笑った。





打ち合わせの後、私はグレタを伴って天幕から出た。



天幕の外は『はだか天国』だった。



「な……なんじゃぁ!」


砂浜に大きな穴を掘り、そこに防水布をおいて、川からの水を導いて貯めている。


その貯めた水をモビルスチームのボイラーで加熱して温水にしている。



なんと、兵たちは、あり合わせの材料で露天風呂を自作していた。



しかも、見渡す限り裸の女!



「よお姫さん。露天風呂つくるの許可してくれてありがとうな」


マッパのアンジェラが前も隠さずに立っていた。



あわてたグレタが私の前に立ちふさがるが、もうちゃんと見てしまったし。


しかし、酒保の許可は出したが、露天風呂も酒保に含まれるのか?


まあ、いいけど。



「少しぐらい騒ぐのはよいがの、男どもは何処へ行った? 混浴は許可せぬぞ!」



「ああ、男どもなら移動娼館だよ」


と言って大笑いしだした。



ああ、なるほど。


お盛んな事だ。




しかし、露天風呂か……



私も風呂は好きだ。


従軍中でも、必ず湯浴みをする。


しかし、でかいバケツにみたいなのに入って湯をかけて洗われるアレは、少々好みではない。



だが、眼前に広がるコレはどうだ。



これぞ『 露 天 風 呂 』だ!



なんと……なんと、素晴らしい。



私は魅入られたようにフラフラと露天風呂の方へと向かった……が。



「駄目でございますよ」



グレタに肩を掴まれた。



「あっ……いや……でも」



「駄目でございますよ」



「だって……オフロが……」



「大切な事だから何度でも申しあげますが、駄目でございますよ」



そんなあぁ~~。



予約掲載を使い、毎日昼の12時にアップするようにしています。


誤字報告を受け付ける設定にしました。


誤字脱字などございましたら、お知らせくだされば幸いです。

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