デルガト攻略2
アンホをつくるぞ!
さて、アンホである。
硝安油剤爆薬とも言う。
爆薬の中では異質で、精製した硝石と鉱物油でつくる。
爆発させるのがチット難しいが、その分運用が簡単。
しかも、発生ガス量に比して発生熱量が少ない特徴があり、岩を砕く発破に適している。
デルガト城門付近の地形は独特だ。
デルガト半島島繋部は、本土から魚の背びれのような切り立った岩が連続して続いている。
ロッククライマーなら喜びそうな場所だが、こんな所で戦争をしたがる奴は少ないだろう。
その岩山が切り落とされたように途切れるている場所が、デルガト城城門前の広場だ。
平民軍ことユリアナ私兵団は、デルガト要塞から見えない所でアンホ爆薬をつくり、背びれ岩山に対して発破を仕掛けた。
硬いチャート岩の塊も、アンホを使えば楽々と瓦礫となる。
この大量の瓦礫は、排土板を装備した四号ちゃんモビルスチームで運ぶ。
運ばれた瓦礫は、デルガト城から見えて半島から少しだけ離れた海中につくった木枠に入るように海に投下してゆく。
この辺りは海流が早いので、そのまま沈めてもバラけて分散してしまうので、木枠を使ったのだ。
もちろん、海流の強い海での水中作業は素人に手が出せるものではない。
しかし、私は得難い人材をココで得たのだ。
それはカトチャ村の漁民である。
彼らは、素潜り漁の達人であった。
私は、先に開発した潜水具を彼らに与えて水中土木工事を依頼したのだ。
すると、彼らは軽々とこなしてゆくではないか!
キミら私の直属決定な!
木枠を海中に沈めて埋めたてる工法は、日本幕末期に長崎に砲台場をつくった方法の借用だ。
岸から漁船を組み合わせた浮橋を使って瓦礫を次々と木枠に放り込んでゆく。
数日で、海面から瓦礫の山が頭を出した。
「質問よろしいでしょうか」
ルイスが敬礼しながら質問してきた。
「許可する」
「ありがとうございます」
ルイスは、短期間で軍隊式のマナーを理解してきた。
「岩屑を捨てるのに、なぜこんな方法を使うのでありますか?」
「不思議か?」
「はい、姫殿下。普通に捨てても問題が無いように愚考いたします」
「捨てるだけならば、それで十分じゃな。だが、それでは勿体ないであろう?」
「勿体ない、でありますか?」
「うむ。ただの瓦礫とて、有効に使えば恐ろしい武器となるのじゃ」
「瓦礫を武器とは……自分には敵に投げつけるくらいしか思いつきません」
「今、我らが攻めているのは、敵の心じゃ」
「心でありますが?」
キョトンとしたルイスの顔が、少し愉快であった。
昼夜を問わず定期的に爆発するホアン爆薬。
数日で海から顔を出した瓦礫の山。
これらが目には見えないが、よい仕事をしているはずだ。
魔改造砲艦リフォーマーと一緒に来た蒸気動力船は二隻ある。
一隻が『フォロワー』、もう一隻が『アレスト』。
この二隻の船は、同型艦で木造竜骨工法で建造した。
一応は、鋼鉄の装甲板を一部につけてはいる。
鉄で船体をつくりたかったが、あまりに先進的すぎて作れる者がいない。
リペット工法と溶接工法を普及させなくてはいけないが、現状ではまだまだ無理だ。
先の進水したのがフォロワーなので、この船を『フォロワー級砲載艇』と呼ぶ事にした。
大きさは現在のミサイル艇ほどの小型艦で、外洋航行能力は低い。
兵装は、四号ちゃんモビルスチームの砲塔と同じものが艦体中央に沿って前に二つ、後ろに1つ。
前後の砲塔の間に、小さな露天艦橋と煙突が一つ。その後ろは予備動力として帆走用のマストが一本。
現代地球の知識で見れば、ドレッドノート級戦艦(大和型戦艦とかの元になった船)を超小型化したような船だ。
こちらは、マウリス海軍が蒸気機関実証実験用に建造したテストベッドを流用した船だ。
そう、海軍が『実験として2隻だけ建造した船』をもらい受けて改造した。
実験艦の建造プランの監修をする対価に、試験後の船を貰ったのである。
建造プラン時から、改修を計画していたので、改造はアッと言う間に終わった。
副砲の場所には、バレット対物ライフルをガスピストンによる機関銃化したバ式機関銃を単装で搭載している。
機関銃と言っても、射撃速度は遅く、毎秒1~2発程度だ。
弾倉は、重力落下式の箱弾倉が機関砲の上部に乗っているが、装弾不良が起こりやすいとの報告もある。ベルト式かドラム式を開発すべきだろう。
ちなみにガスピストン式とは、発射ガスの一部を銃身から取り出してピストンを動かす方式。さらに言えば、ガスピストンがボルトキャリアと同じだけ動くロングストローク式だ。
長所は、部品点数が少なく、頑丈な構造にしやすく故障も少ない。
欠点は、発射ガスのロスが大きく、反動が大きくなりやすい。
狙撃には向かないが、弾幕には向く。
同じ機構の銃にAK47がある。
余談ではあるが、この銃はライフルボタンによる押し広げ加工によるライフリング加工をおこなっている。
以前は、フック状カッテイングロッドで切削加工していたライフリング加工をおこなっていた。
それを、ボタンと呼ばれる固い金属の型を砲身を押し広げながら押し進めて行うようにしたのだ。
この方式により、ユーイル小銃もライフル銃化が可能となった。
さて、このフォロワー級砲載艇であるが、現在はリフォーマーの補助としてデルガト湾の封鎖とリフォーマー護衛に就いている。
デルガト湾は、平民軍の機雷によって封鎖されている。
機雷は、私がユーイルからリフォーマーで運んだ秘密兵器が『電気信管式機雷』だ。
接触信管を使う機雷とは違い、操作者が電気のスイッチを入れることで信管が作動して爆発する機雷なのだ。
とはいえ、敵には『どうやって機雷が爆発するのか』は分からない。
先の代官救出作戦でも、デルガト湾水門をリフォーマーが砲撃して破壊し、そこから救出部隊が脱出。追撃してきた短艇を電気信管をフォロワーの船上から作動させ機雷を爆発させて阻止した。
その後、もう一度、小型魚船が出港しようとしたが、同じように機雷を爆発させて撃沈した。
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