デルガト攻略1
ケーニヒス公爵の支配するマウリス南部地方は、本来穀倉地帯だった。
いまでも、マウリス最大の小麦・米の生産地であるが、主力商品は砂糖に代わっている。
砂糖の生産は労働力の集約が必須となる。
大量のサトウキビを一気に刈り取って絞り短時間で絞り汁を煮込んで砂糖を精製しなくてはならないからだ。
中小の貴族では、その膨大な労働力を賄えない。
大貴族であるケーニヒス家は、領民のほとんどを農奴化して集中管理し、膨大な労働力で砂糖を生産しているのだ。
ケーニヒスのやり方は、現代地球のプランテーション政策に近い。
農民は大量生産される商品作物の生産だけさせられ、その工程も領主に管理される。
しかも、農民が自分の食べる農作物を栽培する事は禁止されている。
彼らは、食べ物を商人や領主から買うしか方法が無い。
そうする事で、農民は超ブラック状態で働かせられ搾取される。
しかし、武力も無く食べ物をつくる手段も持たない彼らには選択肢なぞは初めから無いのだ。
一般作物は特別に選別された一部農民だけが栽培するか輸入に頼る。
そして、中間管理には特権と武力を持つ少数民族を使う。
典型的な植民地支配である。
この場合、武力を持つ少数民族はケモノフレンド(獣人族)だ。
件のケモフレであるが、このデルガトの反乱では傭兵として南部自治団に雇われいるらしい。
これも、変な話だ。
南部では、中間管理職をしているケモフレが、何でデルガトまで来て、かつて自分たちが追い出した流民の下で働いているのか?
実のところ、流民達はケモフレ傭兵の下で働いているのではないか。
そして、ケモフレ傭兵の主はケーニヒス公爵。
つまりは、流民達は政治的には理屈合わせの案山子であり、軍事的には弾よけだろう。
世知辛い話だが、現代地球でもよくある話。
さて、デルガト攻略の話をしよう。
先の会談で、私はデルガト要塞に対してトンネル攻撃を仕掛けることをほのめかした。
これはブラフではあるが、土木工事力を使った攻撃を行うつもりではある。
トンネル攻撃は、坑道戦とも金掘り攻めとも呼ばれるもので、敵の攻撃を受けない地下にトンネルを穿ち、敵防御施設の破壊・無効化または敵陣地への兵の進行ルートの確保をおこなう。
件の南部自治団代表が『トンネル攻撃をするつもりならやってみろ』と言い放ったには理由がある。
地形的に見て、デルガト半島はチャート岩でてきている。
チャートは火打石にもなる鉄より硬い自然石だ。
硬いゆえに波などに浸食されにくく、独特の地形をつくる。
デルガト半島は、長年の波の浸食から残った硬いチャート岩の塊であろう。
トンネル攻撃をするには不向きな地質と言える。
「とは言え、こちらには現代地球のチート知識がある。チャート対チート、どちらが勝つか見せてやろう!」
うふふ、チャートとチート……なんか似てる。
「姫殿下、なんか悪だくみしてる顔でありますね」
「アンジェラ様、あの微笑みが怖いですぅ~」
「ルイス、見ちゃいけません」
失礼な奴らだな。そこのトリオ!
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