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大砲姫  作者: 阿波座泡介
デルガト半島動乱編
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出陣

この章、書き直しました。

デルガト半島で動乱があった。


この地は、我がマウリス王家の誕生地である。


その聖域を、逆賊どもが奪い取った。


完全な略奪である!


だが、今の王家には王都を離れて自由に活動できる軍団が無い。


では、貴族どもに頭を下げて騎士団を出してくださいと懇願するのか?


なに、私の頭などは軽いものだ。

少しくらい下げても減るものではない。


だが、それでよいのか!


不正がなされているを正すは正義である。

正義を成す事に、何故に誰かに頭を下げる必要があるのか!

それは何故だ!


この国には、正義を行う軍隊が無い。

無い故に、正義は行えなかった。


否、昨日までは無かった。


だが今日からは。

今からは違う。

我は、違うと信じている!


今、ここに我は、マウリスに正義を行う軍を起こす!


マウリス平民軍である。


だが、いまの平民軍には、私だけだ。

私、一人の軍隊である。

兵はいない。

今までは、いなかった。


だが、我の声を聞いた者の中に、マウリスの正義を守る兵になりたい者はいるか?


もちろん、戦わねばならん。

死んでしまうかもしれん。


我が約束できる事は、少しの報酬と名誉だけである!



それでも平民軍に身を捧げられる者は、一時間後にここに集まって欲しい。


我からは、以上である!



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



練兵場に皆を集め、そんな話をしたのが一時間前である。


さて、状況を整理しよう。

私ことユリアナ・エルム・マウリスは婚約中だ。

しかも、信じられない事に二重婚約中なのだ。


事の始まりは、私が春節の宴でヨアヒム・エッセン公爵子の求婚を受けて婚約を決意した。だが、ほぼ同時に、スペンサー・ケーニヒス公爵(離婚歴あり)から結婚の申し込みを王都にいる父上が受けてしまったらしい。


それにより、二重婚約になった。


しかも、現状では『国王が非公式だが承認したのはケーニヒス公爵家の申し込みだけ』であり、私とエッセン公爵家の話は、申請未満の扱いになっている。

私としては、はなはだ不満な状況と言える。


この状況を打破すべく。私は王都への帰還を決意したが……


なんと、国王は倒れて政務不能の状況であり。代理として国務をになっていたのは、第二王子のテオラス兄上とスペンサー・ケーニヒス公爵との事。

そこで、テオラス兄上に王都帰還のを申し入れしたが、却下された。


こうなっては仕方が無いので、私は国王代理の指示を無視して帰還を強行しようと準備していた。

 

さてそこの頃、デルガト半島で一揆が起こった。


このデルガト半島は、地政学的には無価値だが王領だ。

さらに、ただの王領では無く、マウリス王家の生家がある『デルガト城』がある土地なのだ。

つまり、ここが占領されままだと、王家としては恰好が悪い。

しかも、代々の習わしで王族の正式な冠婚葬祭は、このデルガトにある大聖堂で行われるのが習わしだ。


この『正式な冠婚葬祭』は王家一族で行うものである。

婚約の場合なら、婚約の発表やらお披露目は王都で行われが、先立つ『婚約の儀』はデルガトの大聖堂でおこなわれるのだ。

つまりは、デルガトを奪還しなくては、国王が了承しようが、本人同志が恋仲だろうが、公式な婚約が行えない。

そう言う大事な場所なのに、デルガトには駐留騎士団が無いのだ。

おかしいだろう。

代官率いる家臣団が自警隊を組織して防衛するのが代々の習わしなのだが。

もう一度言う。

おかしいだろう 。


それに応じて、内々の王令で『デルガト半島の騒乱を鎮めよ』との下知が私宛にあった。


実際に令を下したのは、父上では無くテオラス兄上であろう。

(いや、本当はスペンサー・ケーニヒス公爵の目論見かもしれんが……)


この王令は、実の所は正式なものでは無い。

元老院も議会も通していないのだ。

実態は、国王が個人的に打診をしてきた体である。


このまま私が了解すると、公式には『私が自主的に動いたけど、国王も了解の上ですよ』となる。


受けないならば、公式な記録には何も残らない。ただ、世間は『私には国王の令を実行する力がありません。どこかで埋め合わせをします』と取るだろう。


つまりは、受けないと『王家に貸し一つ』となる。


今の状況であると、私的には少々マズい事態である。


こうなると。私の選択肢は『王令を受諾し、デルガト半島を制圧する』の一択となる。


改めて言うが、私は王家の末に籍を置くだけの無位無官の小娘だ。

実戦部隊である騎士団には命令する権限も無い。


唯一、私が私的財産で賄っている私兵集団である『平民軍』のみが手駒と言える。

つまりは、この作戦は平民軍のみで遂行するしか無い状況なのだ。

かなり、追いつめられた状況ではある。


しかしだ。

考え方によっては『公式に準じた要請により平民軍が軍事行動を行える』機会を得たとも言える。

これは、なかなかのチャンスではなかろうか?

いや、チャンスにする。


そんな事を考えていると。

「何やってるんだよ姫さん! おめえが集めた兵に景気のいい言葉を一発かけてやれよ」

アンジェラが、新型モビルスチームの上で大声で叫んでいた。




「傾注せよ。姫殿下からの御言葉を賜る」


メアリーアン・ギブスン上級大佐が下令する。

(メアリーアンは昇進しました)

広場に集まった軍装に身を固めた平民軍将兵が一斉に姿勢を正す音が響く。


私は、演台の上から、ゆっくりと練兵場を見回した。


広い練兵場にぎっしりと詰め込んだように集まる兵の数は、平民軍の総員と思われた。


「まったくもって、我の周りには馬鹿しか集まらぬらしい。これほど馬鹿が多いと笑いが止まらんわ」

私の言葉に、広場ではドッと笑いが起こる。


笑いが収まるのを待って、私は言葉を続けた。


「これから我が赴く戦場は、貴族どもの小綺麗な場所ではないぞ。我の戦場は、鬼も逃げ出す正真正銘の地獄となろう。それでも、我に従うか!」


オオ! と広場全体から鬨の声が上がる。


「よろしい、ならば戦争である!」


 私は、言ってみたい漫画のセリフの一つを天に向け叫んだ。


誠に申し訳ありませんでした。

再開と宣言していながら、ものすごく長く中断してしまいました。


デルガド半島動乱編は完成しましたので、これから毎日アップしてゆきます。


お楽しみください。


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