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大砲姫  作者: 阿波座泡介
ガルムント編
5/98

茶会にて

 さて、一時間後。

 西の館の居間。

 私は、軽く汗を流し気軽なだが失礼のない程度の軽装に着替えて、グレゴリオとメアリーアンを迎えた。

 部屋の片隅には、先ほど使用した潜水具が立てかけてある。

「腹が減ったので失礼する。良ければ、お前たちも食べてくれ」

 そう言って、私は茶を飲みサンドイッチを掴み口に運ぶ。

「えっ!」

 グレゴリオは、私の作法に度肝を抜かれたように驚く。

「素手で食べ物を掴むなんて……いいんですか?」

 メアリーアンが、大皿に盛られた大量のサンドイッチに興味がある様子。

「平民は、素手で食事を取ると聞いたぞ」

 私は、無作法なことに咀嚼しながら答えた。

「平民だって、スプーンくらい使います。スラムや蛮族じゃあるまいし」

 グレゴリオが睨む。

 この男の怒った顔は、本当に怖い。

「これはサンドイッチと言う。薄く切ったパンで肉や野菜を挟んで食べるのだ。直接手で持って食べるのが正しい作法なのだ。気になるならナプキンを使え」

 怪訝な表情で。

「そう言うものなのですか?」

 と、グレゴリオはナプキンでサンドイッチを掴む。

「わあ、楽しいし美味しい。こんな風に食べるのって、面白いですね」

 メアリーアンの方は、早々に素手でサンドイッチを掴んで口に運んでいる。

「これは、どこの食べ物なのですか? ユリアナ様。私、こんなものがあるなんて知りませんでした」

 メアリーアンの質問に、私は答えた。

「異世界の食べ物だ」

 しばらく、音が止まった。

「ユリアナ様。ご冗談にしても、意味が分かりかねますな」

 グレゴリオである。

 まあ、当然の反応だな。

「その意味は、私も知りたいと思っている。この私の頭に異世界の知識があるのだ。これが、神の恩恵か。それとも、悪魔の罠なのか。私にも分からない」

 また、しばらくの沈黙。

「……本当なのですか?」

「証明はできん。ただの妄想や物狂い戯言と考えるのが妥当だろうな」

 だが、そうすると矛盾が起こる。

 それならば、私は一人で潜水具の仕掛けを考案したことになる。

「まあ、納得できるまで調べても良いぞ。この潜水具を考案したのは、本当は誰なのかを」

 その言葉に、グレゴリオは潜水具へと歩み寄り仔細を調べだした。

 しばらく、あれこれと調べていたが、唸りながら考え込んでしまった。

「材料は、金属と皮だ。これを作った技術は一流だが、ありふれたもの。だが、この発想、組み合わせ方……この世のものとは、とうてい思えない」

 グレゴリオは、しばし考え込んだ。

「ユリアナ様がここに引っ越されました日、病院で指示を出されましたね」

「ああ、そんな事もあったな」

 それは、ただ水と灰汁で洗っただけの包帯を見て、熱湯を使えと指示したのだ。

 つまり、煮沸消毒せよと言ったわけだ。

「異世界云々は、私には分かりかねますが。それがユリアナ様の頭の中にあるのならば……ユリアナ様は稀代の天才であると思います」

「褒めてもらって嬉しいがな。我は、そんな大層なものではないよ」

 私は、グレゴリオの言葉を否定すると。

「では、ユリアナ様は、天才がどのように考えると思っておられますか?」

 質問で返された。

「うむ……天才なあ」

 そう言われると、天才が世紀の大発明を思いつくのは、どうしてだろうか。

 いや、大発明をしたから天才なのかな。

「それは、分からんなあ」

「なれば、その異世界の知恵。天才の発想と同じではありませんか?」

 そう考えても良いのか。

「なるほど、我は天才か! 物狂いから幾らかは出世したようだな」

 ここは素直に、グレゴリオの言葉を受けておく。

 これで、グレゴリオとの信頼関係も少しは構築できたであろう。

9/24 誤字訂正

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