表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大砲姫  作者: 阿波座泡介
ガルムント編
47/98

春節の宴 二日目 4

開けた地形での騎兵突撃戦法は一撃必殺である。


だが、騎馬兵は無敵では無い。


騎馬兵への対応は、森や隘路・沼地など、馬の行動が制限される複雑地形に誘い込めば容易である。


しかし、騎馬兵が、自らすすんで複雑地形に進むことはない。

いかに、敵騎馬兵を複雑土地に誘導するが、カギとなる。


 今回は、こちらのウルバン砲攻略が目的なので、敵騎馬兵の動きを予想するのは簡単だ。

 織田信長よろしく、敵の目標の前面に阻止障害を築き、その後方に銃座陣地を構築すればよい。


 この阻止障害としは、馬防柵や逆茂木などがある。

 今回の演習には、有刺鉄線を使った。

 有刺鉄線は、針金に棘をつけてだけの簡単な仕掛けながら、運用が簡単で高い阻止効果がある。



 黄色の旗印を掲げた騎馬集団は、三つに分かれ、こちらの陣地へと突撃を開始した。


 陣地を囲むコイル状の有刺鉄線に突入した騎兵は、有刺鉄線に絡まってしまう。そこを、平民兵に撃たれて、戦闘から離脱してゆく。


 この展開は予想通りではあるが。

「まずいな……」

「はい。突撃をする騎士の数が少ないですね」

 私の呟きに、メアリーアンが答える。


 総勢百五十騎のランキン・ジョン連合騎士団による初撃は、ジョン伯黄猿騎士団約三十騎による有刺鉄線への突撃であった。


迎えるガルムント平民軍は総勢二百六十。内、銃兵が二百に砲術兵が六十。


 突撃してきた黄猿騎士団三十騎は有刺鉄線に絡まり身動きが出来なくなったところを銃撃されて倒れた。だが、その内の十騎ほどは離脱に成功している。

 初撃で討ち取った騎馬兵は二十騎。

 全体の一割強だ。


「体制を立て直していますね」

 双眼鏡を覗くメアリーアンである。


 ジョン伯の黄猿騎士団とランキン伯の青鷺騎士団は、全マウリス騎士団の中では小規模で正面戦闘につくことが少ない。

 それゆえ、私も詳しい内容を知らなかった。

 だが、あの動きを見ると、威力偵察とかに従事する事が多いのかもしれない。


「柔軟に動きよる……嫌な相手じゃ」


 猪突猛進をモットーとするバーンズ伯が率いる赤獅子騎士団の方が戦い易い相手とも言える。


 とは言え、時間はこちらの味方だ。

 守りを固めていれば、勝利が転がり込む。

 それは相手も承知の事だ。


 様子見をしていると、敵に新しい動きがあった。


「なんだ? なにをしている」


 黄旗印の騎士が、こちらの陣地を囲むようにグルグルと走りだした。

 走る馬の蹄は乾いた土を舞い上げて土煙が舞う。


 射程ギリギリを周回する敵に、平民軍銃手は各個射撃を行うが、なかなか命中しないようす。それでも、二~三騎は倒したよう。

 だが、そのうちに、射撃による火薬煙が立ちこめだす。


「しまった……射撃を止めさせろ」

 私の言葉に。

「射撃中止!」

 と、メアリーアンが大声でガードルートに命じ、ガードルートは部隊に命じた。


 しばらくすると射撃は止まる。

 しかし、火薬煙と騎馬の土煙で戦場の視界は著しく悪い。

 有刺鉄線に突っ込む騎士の姿くらいは十分に分かるのだが、それより遠くにいる騎士団の姿が見えにくくなっている。

 まったく分からないと言うほどでも無いが、状況が分かりにくい。

「後方で、青鷺騎士団が何かしている様子でしたが。詳しくは分かりません」

 メアリーアンは双眼鏡で周囲を警戒している。


 黒色火薬の欠点の一つが、この煙だ。

 爆発時に大量の煤が発生してしまい、砲身に詰まったりもするが、空中に舞う煤は視界を著しく奪う。


 しばらくすると、風がおこり、煙はゆっくりと薄くなる。


 だが、こちらが状況を把握するより早く、事態は起った。


 強い風切り音が起こり、状況を確認しようと塹壕から体を出している兵士が矢を受けてしまう。


「弓兵か?」

 騎士が馬上で弓を使うこともあるが、馬上弓は射程が短く、狙撃的な使い方には向かない。

 また、馬を降りて強弓を使っても、銃よりも射程の短い弓では、鉄条網の近くまで接近しないと狙撃は無理だ。

 遠距離からでは、空に向けて多数の弓を放つ面制圧が一般的だ。


 だが、続けて起る風切り音に、次々と兵が倒れる。

 弓の狙撃を恐れた兵士は、塹壕に体を隠した。


 だが、その事を待っていたように、黄猿騎士団が動き出した。


いつの間に仕掛けたのか、鉄条網の数か所に縄をかけて引っ張りはじめたのだ。

見る見る間に、鉄条網は引っ張られて伸び、厚みが薄くなる。


それを阻止しようと、塹壕から飛び出した兵は、弓の餌食となる。


敵は、こちらの銃の射程より遠くから弓による狙撃を行っている。

普通の弓なら射程は百m程度。

だが、射程千mの弓がある。

「まさか……あんなものを騎士が野戦で使うのか?」

だが、他に説明がつかない。

「ユリアナ様。二時の方向です!」

メアリーアンが何かを見つけた。

私も、慌てて双眼鏡を覗く。


それは、一見すると重機関銃のように見えた。

機械弓(バリスタ)か」

草原の座り込んだ騎士が、二脚式の銃座に据えられた機械弓を構えている。その左右にハンドルのような物が飛び出していて、それぞれに騎士が取り付いている。また、後方には予備の矢を持った騎士が控えている。たぶん、次の矢をつがえる装填手だろう。

一射したバリスタの左右の騎士が、ハンドルを回しているのが見える。

あのハンドルで、弦を引いているのだろう。

弓が引けたバリスタに装填手が次の矢をつがる。

その間に、射手は次の狙撃ポイントを見続ている。

さらに、そんな銃座が全部で三つ。

その銃座を守るように、大楯を持った者までいる。


これは、狙撃特化した騎馬兵だ!


「弓による超遠距離狙撃ですね。兵の動きが制限されて、敵の工兵が自由です」


しかも、黄猿騎士団ときたら、騎士のくせに工兵の仕事をこなしている。

このままでは、鉄条網の阻止効果を無効化されるのは時間の問題だ。


「こちらも奥の手を出すか、バレット部隊を!」

少し間が空きました。すいません。


次回はバリスタ 対 バレット

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ