表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大砲姫  作者: 阿波座泡介
ガルムント編
44/98

春節の宴 二日目 1

今回内容が『避妊』です。


読み飛ばしても、本編には影響の無い内容なので。


おイヤな方は、読み飛ばしてください。


演習は次回からはじめます。

「おお、ジョン伯もランキン伯も早いではないか」


 天幕を出るとそこにいた二人に挨拶するが。


「おはようございます。姫殿下」

「おはようでござる……ところで、姫殿下! 昨夜のアレは如何な所存でござるかな?」

 ジョン伯が挨拶も早々に本題に入る。

「昨夜のアレとは、何じゃ?」

「ユリアナ姫殿下。とぼけるものではございません。姫殿下が娼館に命じた奇天烈なアレでございます!」

 ランキン伯も、相当に怒っているようだ。昨夜は騒ぎになったのだろう。

「そのアレとは、これか?」

 私は懐からアレを取り出した。

「それでござる!」

「なんなのですか。これは!」

 ジョン伯、ランキン伯の問いに私は。

「これぞ、人口爆発の解決の秘策『避妊具』じゃ」

 と、アレを掲げた。


 アレとは、現代地球で一般に使用されるゴム製男性装着型避妊具『コ○ドーム』の類似品だ。

 コ○ドームとの違いは、ゴムでの製造が難しかったので、羊の腸を使ってつくった。

 私はアレを大量に用意し、事前に娼館の経営者に協力を要請して。昨晩にアレの実施テストと市場調査を行ったわけだ。


「人の根本欲求の一つ性欲は、食欲や睡眠欲と同様に制御が困難だ。そして避妊具は、その解消を低リスクで実施できる!」

 私は、傍らの衛兵から剣を借り。

 その剣の柄にアレを被せて。

「ちなみに、このようにして使う」

 と、実演して見せたが、衛兵は凄くイヤそうだった。


「いや、実演は結構ですから……」

 ランキン伯も微妙にイヤそうだった。


「姫殿下が、そんな……イヤでござるぅ!」

 ジョン伯は涙を流してイヤがった。


 なぜ、そんなにイヤがる?


「まあ、慣れない間は違和感もあろうが、性によるトラブルの回避には有効な手段なのじゃがなぁ」

「違和感どころの騒ぎではないでござるよ。娼館では騒ぎが三件に逃げ出した者が二人……拙者の身内もおりました……でござる」

「ほう、意外に少ないな」

 ジョン伯の報告に、私が感想を言うと。

「それは、アレを使えば料金が安くしてもらえたからです。ちなみに、差額の保障は姫殿下がされるとか?」

「少しはな……だが、性病や妊娠の予防は、娼館でも課題なのだ。効果を説明したら、喜んで協力してくれたぞ」

「ですが、兵の士気に影響します」

「慣れの問題じゃ。それに、娼婦も体をはっての仕事なのじゃ。そのリスクや損耗は騎士より軽いと思うのか?」

「……そう言った話も聞きはしますが」

「騎士と娼婦を同列に扱うのは、我慢ならんでござる!」

「同列に扱って何が悪い!」

 私は大声をだしてしまった。

 ジョン伯は声を失い、咄嗟に礼をして。

「失礼をしたでござる」

 と詫びた。

「いや……大声を出して、すまぬ」

 しまった。感情的になった……冷静に、冷静にじゃ。

「これは、昨夜だけの事としたくは無い。広く一般に……すべての人が使うようにしたいのじゃ」

「人口増加抑止の為に……ですか?」

 ランキン伯の言葉に首肯した。

「しかし、人の誕生は自然の理です。それを曲げるなぞ」

「死も自然の理じゃ。我らは、それを曲げた……違うか?」

「……その通りでございます」

 ランキン伯は弱い声で答えた。

「なれば、小賢しい知恵を用いて辻褄を合わせねばならぬ」


「ですが、なぜ今なのですか? ご領地の娼館から始められるべきでは」

「それは、すでにやっている。ガルムントでは、一般でも使えるように広めているところだが……実の所は、広まっていない」

「まあ、そうでございましょうな」


 なにしろ微妙な問題だ。

 大規模なキャンペーンとか、法律で、どうこうできる問題とは違う。


「で、切り口を変える事とした。まず、騎士団や平民軍で広める事を試す」


 生活習慣の変更は、若いうちが良い。

 それも、集団生活で全員に行わせるのだ。

 みんなが同じ事をする安心感は、定着効果をあげる。


「まあ、強要はせぬ。だが、子が死なぬなら、生まれる子の数を合わせる。他に人口増加を抑える手があるか?」

「思いつきません」

「分かりませんでござる」

 二人の答えに。

「では、これを試すのも。よいのではないか?」

 私は二人に避妊具を手渡した。


 二人は凄くイヤそうに受け取った。


 その後、バーンズ伯にも出会ったが。

「奇妙なものを考えられますのであるな」

 とだけ言われた。


 だが、その後にリンダ伯に会って、ヘコむ事になる。


「今朝、兵たちが奇妙な話をしていたのですが……」

 と、リンダ伯。

「なにやら兵たちは『姫殿下の帽子を使った』とか言うのですが……私が何かと問うと逃げるのです。何の事でしょうか?」

 ちょっと待て。

 なんだ『姫殿下の帽子』とか言う通称は!

 多分、アレの事だろうが……


 私は、そんな俗称が定着しない事を密かに祈った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ