君の色
俺には人のオーラが見える。
冗談ではない、マジだ。誰も信じてくれないから言わないけれど昔から人のオーラが見えていた。
オーラの色や大きさで人の感情がよくわかる。
だから、自分に好意を寄せている女子だってすぐにわかった。
「好きです!」
と、告白されても知っていたからそんなに驚かない。
そして逆に俺の好きな人の気持ちもよくわかることだ。
小さいころからオーラを見ていたから、人間の汚い部分がよく見えた。人を好きになることなんてできなかった。
そんなときに出会ったのは裏も表もない彼女だった。
表に出ている態度とオーラに矛盾が何もない。
とても素直な人だった。彼女と話していると一番気が楽だった。
だけど、彼女のことが好きだと思った頃にはもう遅かった。
「お前さ、石川のこと好きだろ」
「え、ええ!?」
俺にその気持ちが向けられていないことは簡単にわかった。
「な、何で!」
困惑した色のオーラになった。
「わかるよ。ほら、俺オーラ見えるから」
「そんなこともわかるの!?」
唯一オーラが見えることを信じてくれた人でもあったのだ。
「おう。・・・わかったわかった」
それ以上は言うな、という目とオーラを出していた。
「もう、馬鹿」
「はいはい」
「ねえ、人の好意わかるんなら友原の好きな人のオーラとかも見えるわけ?」
最初に言ったようにそれは当然のことだ。
「まあ・・・な」
「どうなの?」
「え?」
「だから、友原の好きな人。いるんでしょ?」
「・・・」
「なによ・・・」
こうなるんなら言わなければよかった。
「いつもあんたはぐらかすわよね。その人に彼氏でもいるの?」
「彼氏はいないけれどさ」
「その人に好きな人はいるんだ!」
「・・・そうだよ」
俺の落ち込んだのをみて楽しそうに言った。
「うわー、どんまい!」
「うるせえ!」
「ってかさ、誰?その人」
「はあ?」
「す・き・な・ひ・と」
「言うか、馬鹿」
「えー、私だけ知られてるってムカつくもん」
「はいはい」
そして彼女は言う。
「その子を振り向かせてやろうとか思わないの?」
「はあ?」
「だってオーラ見えてるんならわかるでしょ?自分に対してどう思っているか」
「・・・わかりすぎるんだよ」
「え?」
「可能性のあるなしとかが一目でわかるから。絶対に振り向かないってわかるから」
「だけど・・・」
何かいいたげだ。
「じゃあ、俺がお前に告白したとする。どうする?」
「え?」
「お前は、俺を好きになるか?」
「ないね」
ずばっと言いやがる。
「その理由は?」
「そりゃ、友原は友達だし、それに・・・まあ、私には好きな人いるし」
「そういうことだ」
「で、でも、わかんないじゃん!もしかしたら、その子はそれがきっかけで!」
自分が別だという感じだ。
「んなわけないだろ!」
「私とは違うからさ、まだ・・・え?」
ギラリと睨むと彼女の勢いが収まった。
「友原・・・?」
「馬鹿か、お前」
「何よ」
「俺が好きなのは・・・」
答えがわかっていたから今まで告白なんてしたことなかった。だけどこれは言わないといけない気がした。
「お前だ」
「え・・・?」
困惑の顔、そして困惑のオーラが一気にでた。
「ずっと言ってた片想いの相手はお前だよ」
わかってる。こうなるのはわかっていた。
「ごめん、お前の気持ちは知ってる。俺の想いが迷惑なのもわかってる。だけど、いい加減気づいてほしかったんだ・・・!」
頭を下げた。
「えっと・・・その・・・ごめん。気づいてなくて・・・」
驚いたオーラになった。
「で、でも!応えられないけど・・・迷惑じゃないよ!」
「・・・」
「ありがと」
失恋したけれど、迷惑ではないということ、ありがとうと思ってくれたこと、それが本音だということはわかった。
まだしばらくは諦められないだろう、この片想い。
いつの日か、彼女のオーラを俺の色に変えるまで粘ってみるのも悪くないと思った。