サンタさんが教えてくれた
僕は泣きたい。泣きたかった。
僕は小鳥。
夏も終わりの頃、僕は逃げ出した。風通りが良いカゴから、空高く舞いたくなって、壊れたカゴの隙間から飛び出した。
外から見るそれは窮屈で、錆びかけているように見えた。そして、上を見上げれば空はどこまでも続いていて綺麗だった。
ご主人さまは見ていた。どうしようかと、不安な色を目に宿して。僕に手を伸ばす。
―――さよなら、ご主人さま。
僕は飛ぶ。優しかったご主人さまは悲しそうだったけど、もう一度捕まえようとはしなかった。
僕は新たなご主人様が居た。笑いが絶えなくて、ドジだけど、愛してくれてた。
そうだ、愛してくれてた。
心から大事にしてくれていた、"ご主人さま"は。
比べてしまう。与えてくれる言葉、愛し方。きっと僕が気付かなかっただけで、たくさんたくさん愛して大事にして、空に飛ばせてくれたんだ。
ある日、僕は怪我をした。不安で不安で悲しかった。
泣きたいと思った。でも、泣けなかった。
―――あなたじゃない。
あなたは、泣かれたら困るなって言った。でもそれだけじゃない。あなたじゃないんだ。
安心して僕が泣けるのは"ご主人さま"だから。
もう遅いね、ご主人さま。あなたは待ってくれているでしょうか。
戻りたい、あなたに会いたいと思うのは僕の身勝手だ。
僕が自分で逃げて、また求めるのだから。
これだけは言いたい。
―――愛してくれてありがとう。
あなただったのです。本当に安心できる場所だったのは。
サンタさんが雪と一緒に教えてくれました。