リハビリ メイクラブ
鼻がふっくらしてる男は、アソコも大きい
涙袋が大きい男は、愛情深い
唇が血色よくて 張りがある男は、尽くしてくれる
占いは 信じるものを救うための物語
なら、私の事も 救ってくれるのかしら?
職場の後輩が捨てていった 女性ファッション誌、こっそり 貰って帰ってきちゃった。
表向きは、新しく 服でも買おうかな…って思ったのだけれどね、本当は ある特集に惹かれて 廃棄の古新聞、古雑誌の束から 引き抜いてしまった。
その気になるタイトル、なんと「人相で分かる! 気になるカレの性癖」
こんなの読んでるなんて バレたら ドン引きものよね。
私のイメージは、堅実で淑々とした清楚な女性…いや、清楚は言い過ぎかしら? まあ 多少は やさぐれてると思うけど、流石に ムッツリ宣告は 受けたくないとこよね
今まで、見向きもしなかった この手の特集記事。 読む気が起きたその理由は 最近付き合い始めた恋人、タカノリ。
まだ ベットインしたことないけれど、遠かれ近かれ コトはあると思う…
この頃 ずっと気になってる。 どういう風に 抱いてくるんだろ、って。
甘く苦しく? 激しく痛く? 穏やかに切なく?
女だったら みんな 恋人出来たら気になると思うの。
ベットインしたら どんなふうに 抱かれるのかなって…
タカノリは 生憎 飄々として掴めない。 仕事関係の人ってみれば 超デキる男。でも、その全てが恋人との時間でも生かされる訳でもないみたい。
子供っぽくチョッカイも仕掛けてくるし、シレッと 突き放す事を言うときもある。
ベットでのタカノリって…
想像つかないな
例の雑誌「人相で分かる! 気になるカレの性癖」は、早々に 新聞とチラシの間に混ぜ込んで縛ることにした。
来週の水曜日かなにかが 捨てる日だったわよね。前日の夜に 玄関へ置いておけば、朝 出勤前に ポイ、解決ね。…そう、安心していたんだけど。
ある日の夜。
お風呂から上がると、ドアの先は 前触れもなく真っ暗だった。
「…タカノリ?」
タバコ、買ってくる。と 出掛けていったのは覚えている…
近所の自動販売機よね、遅い気がする。いまだに 電気ひとつ付いていない。
「もしくは、疲れて寝ちゃった…?」
奥の部屋からは物音、ひとつ聞こえない。
もう一度、呼ぼうとした時だった。
「この前捨てた古新聞の中に、面白い雑誌があってね」
ベランダの方から タカノリの長身が向かってくる。ゆらりと現れた シルエット…ラフなチノパンにTシャツ姿。袖から見える肌の艶が 文字通り 色気が有りすぎてて。思わず、あとずさった。
「顔の造りで 男のエロの傾向が分かるとかいう記事があったんだ。」
えっ、それは。その雑誌は… 新聞へ混ぜて捨てたはず。
それでも ニヤッと笑うタカノリ。その笑顔は 確信犯そのもので 口許は緩んでるのに、目許は…猛禽類。
「(なぜ、それを 知っているの?)」
繕うよりも早く、表情が 正直に真実を物語ってしまう。
だって、読み終わって すぐに 一人で束ねて縛ったのよ? 横からみても 分からないように 埋め込んだのに。
そこまでして、雑誌を隠しては、あの記事は知られたくなかったの。けれど、結果としては 悟られてしまった。
なぜ?という疑問を明かすように、タカノリが口を開いた
「倉庫屋、ナメんなよ? 仕事柄、荷物を持った時、いつもと違うと すぐに分かるんだよ」
…はっ 身体が硬直する。
タカノリって、そういえば こういう男だった。
本当に この人は アタマが良い人。
いつも 抜け目なく勘が働いて、ね?
そういえば、あの古新聞の束を捨てに行ってくれたのは タカノリだった。
「束ねるバランスが悪いけど… 女の子にしては、上出来」
笑って誉めてくれたときには、気が付いていたのね
とてつもない秘密を握っていても ポーカーフェイスで スマートに躱すのに、時と場合を見定めれば 急所へ突き刺してくる。
「タカノリって、優しいのに イジワル」
そんな一言も 言ってしまいたくなる
きっと。
彼から伸ばした腕も、触れる指先も、何も悟らせないのに けれど 淡々と 悦を送り込んでは 私を暴かせるのかしら…?
「いつ切り出そうか、考えていたよ」
ベランダにいたタカノリの手は、少し冷えていた。湯上がりで緩んだ身体には 対照的な刺激を送ってくる
タカノリの色気に 気圧されて 更にあとずさったつもりが、いつのまにか 脱衣所へ招き入れた格好になっている。
「積極的だね」
そう呟く声がしたかと思うと… タカノリが おもむろに シャツを脱いで 惜しげもなく 胸板を晒して私の前にたつ
見慣れたはずのタカノリの笑み…それが、今日は 一段とまた謎めいてみえる。
「占いの俺は、どうだった
?」
メガネの奥の瞳が 同じ高さまで降りてきて 薄く引かれた唇からの息が 私の濡れたの肌に掛かった
「さて、答え合わせをしようか…?」
今更だけど。
エッチは、正直 好きじゃない。
歴代、下手な男に当たり続けたんだと思う、多分ね?
だって思うのだもの
闇雲に舌を動かすだけの一方的なキスは 嫌い。
自己満足でおっぱい揉まれても、気持ちがいいわけないし、
フェラをねだるのに、クンニは嫌がる意味が分からない
何度も擦り付けるだけの挿入は 痛いだけ。
卑猥な言葉も、身勝手な楔もいらない
穏やかに ゆっくりと 肌の温かさを味わいあって、想いが 切なくなるくらい…深い抱擁が まずは したいのに。
伝えても 聞いてくれない。
だから、いつも 「(早く終わらないかな)」どこかで思ってた。
キモチのいいフリとか、「これが世に云う『快感』なのかな?」思い込むとかして やり過ごしてた。
男って つくづく 馬鹿。
…だから、エッチは 嫌いだったんだけど。
突然 始まったセックスの序章のは、ふわり、ふわりと続く 優しいキス。
その繰り返しが 静観を決めこんで生きてきた女の冷めた部分を 溶かしていく。触れるだけ、重なるだけ、熱を分けるだけ。
タカノリ、どうして こんなキスが出来るの? 私たちって似た者同士だから? 互いの硬くヒビいった物思いを こうやって ほぐしあうから、なおさらに 気持ちがいいの…?
導かれるように タカノリのベットに招かれてからは、唇以外にもキスは 贈られ続けた。それはもう、惜しみ無く。
「タカノリ…」
いつのまにか、名前が口から漏れた
「ん?」
いや、違うの。呼んだわけじゃないの、ごめんね? タカノリの気持ちが 私の中から 溢れ出て 口許から 流れただけなの
やっぱり、私は 貴方となら オンナに戻れるよう、よ?
肌を重ねる、その言葉の心地よさを 思い出した
女特有の柔らかい質感が、男の生まれ持った引き締まった身体つきを受け止める…この新鮮さ、ずっと奥深くに仕組まれていた悦びの記憶…
「タカノリ…」
私ね、本当は 『男』にウンザリしていたの。セックスって 生臭いだけと思ってた。
身体だけじゃなく、心ごと 抱いて欲しかったの…
そんな コミュニケーションがとれる人なんて、いないって 諦めてた。
「もっと… されたい」
貴方は違うみたい、ね。
あまりにも 今までと違う系統だったから、密かな期待をしていたの
「次のキスが 終わったら、ね?」
今までの中で 一番引き寄せあったキスで 確信した。貴方なら、身体も気持ちも 預けてもいい…
背中を這う大きな手、お尻に回る長い指、全てが 他意もなく慈しんでくれているのが、分かるんだもの
互いの口から漏れでる甘い息に、常識とか貞操とか 体裁とかが 霞んで消えていく気がした。きっと、タカノリもそうよね?
そんな貴方にしてもらう今夜は リハビリ メイクラブ