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リハビリ ラブ  作者: 黒田 容子
リハビリ ラブ  -タカノリside
19/24

リハビリ ラブ

詩織と不動産屋との立ち会い後のことだった


「昼、何たべようか?」

たわいもない 会話をしながらの帰り道

運転する視界の隅に ふと 引っ掛かる

「悪い、寄り道していいか?」

忘れないうちに買いたいものがある。誤魔化すように そさくさと 店へ向かった


「時間は掛からない。買うものは 決まってるから 」

車を止めて 駐車場から歩く俺を 追う詩織

別に何をいう訳でもなく。

詩織もまた 「じゃあ、化粧品、見てきていい?」と 聞いてくる


…付き合いたてなら ベタベタするのもいかもしれない、例えば今みたいな

だけれど 適度な距離を分かってる相手の方が 俺はいい


颯爽とした後ろ姿を見届けて思う

(やっぱ、いいもんだな)と。

小さく悦に入りながら、俺は 目的の売り場へと向かった



若干、余計な買い物をしていなくもない

レジで会った彼女が レジ袋の膨らみを見ていう。

「半分 払おうか?」

「大丈夫」やんわり 断った

買った物は 柔軟剤とタバコの消臭スブレー そして…もう一つ


袋を覗いた詩織がいう

「この柔軟剤、使ってたんだ~ なんか いい匂いだなあって思ってたんだ」

だが、その隣の買い物に気が付いたとき 声は止まった。

ご丁寧に、別途紙袋に包まれた長四角の包装。ここ数日の状況と物の形状からして 察すれば、思い当たる筈だ。いい年して いい経験を重ねていれば、特に。

別に 言えないものじゃない。ただ、伝え処には困るけど。


「この先、必要だろ?」

思った物が 想像通りなのが 伝えられて、詩織の喉は 動いた。だが、返事は 確かに聞こえた。

「そうだね」

小さくて、明るくもない声だったが、確かに はっきり聞き取れた


おずおずと 詩織の手が伸びてくる。

自分の利き腕に触れる指。

思うままにさせたくて、下げていた買い物袋を持ち替えた


「行こうか?」「うん」


促す声に 指が肌沿いに降りてきた

重なる手のひらを 指を広げて 出迎えた


すべすべとした 柔らかさのある指、

人指し指で 際の肌を味わうように擦ったら、ピクリと跳ねた


そのさまが 素直で、そして かわいくて。

周りに人がいないのを確認して引き寄せた。

そして。

頬へ俺からは初めてのはずの感覚を贈った




自分を見る女の目に 身体が動く日が来るとは思わなかった

あのまま いつまでも続いて 流れていくのだと思っていた

君が きっかけをくれた。思い出させた


手が重なり、顔が重なり、そして 近い先 今度は…

これは そんな俺の リハビリラブ


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