これからの子羊
「お味はどうかしら? お気に召して?」
「もぐ……はい、おいしいです」
ちょっとだけ涙ぐんだ顔を少し上げ、彼女はワタシを見た。そして、消え入りそうな小さな声でこう尋ねてきた。
「魔女さんは、どうして私にここまでしてくれるのですか?」
「あなたがワタシを必要としているからかしら?」
「必要……?」
「そう、必要。そもそもワタシの力を必要としない者は、この家へ辿り着けない。そういう結界を張っているからなの。あなたはこの家へと辿り着いた。つまり、ワタシの力を必要としている。きっと無意識のうちに、ね」
彼女は匙を握りながら、茫然としていた。しかし、やがて落ち着いたのか、何か必死に考えようとする表情へと変化した。これからの事を考え始めたのだろう。彼女にとってこれは死活問題なのだから。
「私、仕事を覚えるのも遅いし、要領も段取りも悪くて、手伝いもまともに出来ない要らない子だったんです。だから出ていけって、追い出されて。もう戻る家もないし。考えても考えても、どうしたらいいかよくわからなくて」
「それなら、人生やり直してみない? 最初からとはいかないけれど、姿を変えてワタシの弟子になるとか? どうかしら?」
「弟子? ですか?」
「良ければ、嫌な記憶も一緒に、この小瓶に詰めてあげましょうね」
そう言って魔女は一つ小瓶を取り出した。




