魔女の家へようこそ
「誰か、誰かいませんか?」
トントントン……トントントン……
すると一匹の黒っぽい猫が、「にゃあ?」と鳴きながら扉を開け、隙間からこちらを一瞥した。どうやら「私」を値踏みしているようだ。
見つめられるままじっとしてると、さあ、終わった終わりましたとばかりに「にゃあ」と鳴き、家の中へ引っ込んでしまった。
――えっ? なんだったの?――
と、茫然としていると、大きく扉が開かれ、今度は人間が出てきた。人間の女性だ。艷やかな黒髪と、藍色のシンプルなローブに身を包んだその女性は、ずぶ濡れで泥だらけの私を嫌がりもせず、家へと招き入れてくれた。
「偉大なる、じゃない……魔女の家へようこそ。 迷える子羊さん」
「あ、あの、ありがとうございます。魔女? さん?」
「まずはお湯を使ってきれいにして疲れをとって、お腹をいっぱいにしましょう? その後お話を聞かせてもらっても?」
「は、はい!」
「じゃあ、手袋! お客様を手伝ってあげて頂戴」
「かしこまりました、ご主人」
「あ、さっきの猫さん? お手伝い?」
「こちらへどうぞ、お客人」
「あ、はい。よろしくお願いします」
猫さんは私を部屋へと案内してくれ、大きなたらいに程よい加減の湯を張り、湯上がり用の布や着替えを用意してくれた。
私はボロボロの衣服を脱いで、たらいのお湯で髪をすすぎ、冷え切った体を温め、ほっと一息ついた。
湯から上がり、水滴を布で拭き取り、用意された衣服に着替え、さっぱりとしたところに、猫さんが声をかけてきた。
「こちらへどうぞ。お食事を用意してございます」
「あ、はい。ありがとうございます」
いい匂いにつられて、私のお腹が「くぅ」とないた。




