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【全年齢版】部長と私の秘め事  作者: 臣 桜
第三回女子会

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決着

「最初に言った通り、上村さんに謝罪してほしい。君たちが心から反省していないのは承知の上だが、社会人としてケリはつけるべきだ」


 尊さんに言われ、彼女たちは緩慢な動作で立ちあがる。


 そのあと、三人はタイミングを計るように顔を見合わせ、頭を下げた。


「申し訳ございませんでした」


 その様子を見ても、私の胸はまったく晴れない。


 睨まれた直後だからだというのもあるし、改心しての謝罪と、仕方なく謝罪するのとでは、された側だって気分が違う。


 でもこれ以上、できる事はない。


 私たちがどれぐらい「反省して」と言っても、彼女たちは不当な目に遭った自分たちのほうが被害者だと思い、私に対して悪い事をしたなんて思わないだろう。


「どうして自分が反省しないとならないの?」と思っている人相手に、別の正義を理解させる事は不可能だ。


 考え方そのものが違うから、第三者が「君たちは非常識な事をした」と言っても、彼女たちは自分たちの行動には正義があり、まっとうな理由があると思い込んでいる。


 まったく交わらない平行線の状態で議論しあっても仕方ないし、いつか尊さんが言っていたように、「他人を変えようと思うのは無理」なんだろう。


 一応の謝罪が終わったあと、尊さんが尋ねてくる。


「上村さんから何かあるか?」


 尋ねられ、私は「いいえ」と首を横に振った。


 今考えていた事を口にしたとしても、余計に彼女たちを煽るだけだし、尊さんたちもきっと私と同じ事を思っている。


 すぐに改善できない事を求めても無駄だし、懲戒解雇になるなら今後私たちの人生に関わってくる事はない。


「どこかでお幸せに」と思って気持ちを切り替えるしかないんだろう。


 だから、この場で言う事は本当にない。


 最後に風磨さんが社長として場をまとめた。


「君たちは過去に上村さんに『死ねばいいのに』とも言ったし、根拠のない噂を流して彼女の社会的信用を落とした。加えて掲示板の情報開示請求等をして、書き込みをしたのが君たちだと判明したなら、罪を犯したと断定できる。……今まで何度も指導を行い、反省文を書く事を繰り返していたのに、改善できないなら会社としても解雇せざるを得なくなる。……だが自主退職してくれるなら〝解雇された〟という履歴書の傷はつかなくなる。……どうだ?」


 彼にそう言われ、三人は渋々と頷く。


「社会人になれば、自分の言動が自分の人生を作る。それを忘れればいつか自分の行いが仇になるだろう。その時になって傷つけた人に助けを求めても、誰も手を差し伸べてくれない。今回の事を君たちがどう捉えるかは自由だが、なぜこうなったのか胸に手を当てて考えてみなさい」


 社長自ら言われ、三人は項垂れる。


「情報開示請求の結果が出たあと、こちらとしては正式に解雇に向けて動くつもりだが、その前に君たちから自主退職したいと願い出るなら受け入れる。……話は以上だ。退室してどうぞ」


 言われたあと、三人は力なく肩を落とし、足を引きずるように会議室から出て行った。


「はぁ……」


 私は溜め息をつき、椅子の背もたれに身を預ける。


「上村さん、お疲れ様」


 尊さんに声を掛けられ、私は小さく会釈をする。


田辺(たなべ)部長、あなたは自分の部署の社員を信じ、守ろうとしたのでしょうけれど、結果的にこうなってしまいました。以前から再三似たような事例を聞いて注意したにも関わらず、同じ行動をとるなら厳重注意をし、最悪の出来事が起こるのを防ぐべきでした。『分かってくれるはず』が通じない人もいるんです。……今後は二度と同じ事がないように注意してください」


 風磨さんに言われ、総務部部長は「申し訳ございませんでした」と頭を下げた。


 それで話し合いは終わりになり、総務部の部長、課長が出て行ったあと、エミリさんが声を掛けてきた。


「上村さん、お疲れ様」


「ありがとうございます」


 室内には私と尊さん、風磨さん、エミリさんだけになり、なんだかホッとする。


「私も副社長秘書になった時、色々言われたから、気持ちが分かるわ~。ホント、いつでもどこでも、ああいう手合いはいるのよね。ま、気にするだけこっちの人生が減るから、処分が決まったあとは楽しい事を考えたほうがいいわよ。『嫉妬されるぐらいのいい女』って思っておけばOK!」


「はい!」


 私は今晩の焼き肉を思い出し、いい笑顔になる。


 尊さんはそんな私を見て、「何を考えているのか分かるぞ……」という笑みを浮かべていた。

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