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【全年齢版】部長と私の秘め事  作者: 臣 桜
〝野暮用〟の中身

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急に決まる今後の予定

 私たちは顔を見合わせ、そのあとに尊さんは恐る恐るスマホを手にする。


「……宮本からだ」


 そう言って尊さんはメールを開き、私は画面を覗き込む。


【篠宮尊さま お久しぶりです。連絡をいただきありがとうございました。とても驚きましたが、事情を知ってすべてに納得がいきました。私は今、夏目(なつめ)凜という名前になりました。夫と四歳の息子と二歳の娘と、ゴールデンレトリバーのロンに囲まれて、毎日ワチャワチャ過ごしています。篠宮くんにも好きな人ができて本当に良かった。広島に来てくれるとのこと、お待ちしております。君から連絡があった事を夫に話しましたが、『ぜひお会いしたい』と言っています。喧嘩腰という意味ではないから安心して。オススメの美味しい物や綺麗な海を満喫しに来てください。詳細が決まりましたら、またご連絡いただけたらと思います。連絡をくれた事を本当に嬉しく思います。ありがとう。夏目凜】


 私と尊さんは手紙の印象と変わらないさっぱりとした文面を読んで、同時に息を吐く。


「……良かったですね」


「ああ、本当に良かった。背中を押してくれてありがとう」


 私たちは微笑み合ったあと、チュッとキスをする。


「よし! 広島グルメをチェックしないと!」


「そっちかよ」


 張りきって言うと、すかさず尊さんが突っ込んでくる。


「GWに……と思ったけど、七月半ばの連休にするか。そのほうが飛行機やホテルも取りやすいと思うし」


「そうですね。……で、GWは何か予定があったんですか?」


「え?」


「え?」


 尊さんに聞き返され、私は目を見開く。


「前に言ってた、ランドのつもりだったけど……」


「ふぁっ!?」


 言われて初めて、以前に言っていた涼さんと恵を巻き込んでのダブルデートを思いだした。


「……やべぇ、連絡行き違ってたら悲劇だった」


 尊さんは下手をすれば先ほどより焦った顔をしていて、申し訳なくなる。


「どっかで話を聞き逃してたかな……」


「いや、俺も言ったつもりになっていたかもしれない。悪い」


 私たちは二人で謝り合ったあと、顔を見合わせて笑う。


「広島行きはまだ先だし、あとから考えよう。なるはやで中村さんにも連絡してもらって、五月に二泊三日でラビティーランドとシー行きを考えよう」


「ですね! わぁ、楽しみ!」


 私はすぐにスマホを手に取り、恵にメッセージを送る。


【こんばんは。突然だけど、GWに尊さんと彼の親友の涼さんと一緒に、ランドとシーに行かない?】


 私はそこまでメッセージを打ち、尊さんに尋ねる。


「そういえば部屋割りってどうします?」


「女子同士で泊まれよ。確かに朱里とのランドデートは初めてだけど、面識がない男と中村さんを一緒に泊まらせるわけにいかないし」


「分かりました」


 こう言ってくれるところは、さすが尊さんだなと思った。


 本当は私と同じ部屋に泊まりたいと思ってくれただろうけど、恵のために一歩引いてくれている。


(あとでお礼をしないと)


 私はそう思いながら、さらにメッセージを打っていく。


【二泊三日で、部屋割りは私と一緒です。どう?】


 ポンとメッセージを送ると、すぐ既読がついた。


 そして【行く】と返事がくる。


【チケットって幾らしたっけ? 一泊の値段も教えてください。よろ】


 それを見て、私は尊さんに尋ねる。


「あの、恵がチケット代や宿泊費を気にしてるんですが、一人当たり幾らかかりますか?」


 尊さんはキッチンでお茶を淹れつつ答える。


「そんなん、今さらだろ。朱里や中村さんに出させるわけがないだろ。三食の食事代も持つから、あとはスイーツとかお土産代だけ自分で負担してくれたらいいよ」


 それを聞いた私は、スックと立ちあがり、タタタタタタ……とキッチンまで走ると、靴下を穿いた足でシャーッと床の上を滑りながら尊さんに抱きついた。


「しゅき!」


「おっと!」


 尊さんは弾みでお茶っ葉を零しかけ、片手で私の体を抱き留める。


「突撃してくるなよ。猪かよ」


「ウリウリウリウリウリウリ」


 私はふざけながら尊さんの横腹に頭をグリグリ押しつける。


「やめろって」


 尊さんはクスクス笑って私を抱き寄せ、自分と私の湯飲み茶碗にお湯を入れる。


「結構なお点前です」


「まだ飲んでねぇし、薄茶じゃねぇよ」


 彼は突っ込みを入れてから、両手でトトトと私の両脇腹をつつく。


「うひひひひ。速水拳だ」


 くすぐったさに笑ったあと、私は背後から尊さんに抱きつき、彼がお茶を淹れる様子を見守る。


「ご機嫌になったな」


「尊さんもじゃないです? 一つ心配事が減ったんですから」


「……だな」


 彼はお腹に回った私の手をポンポンと叩く。


「……正直、宮本の事は、怜香の件が片付いた今、一番気に掛かっていた事かもしれない。あいつが俺の前から姿を消すと決めた以上、もう二度と解決できない問題だと思っていた。……だから七月になったらわだかまりを全部解消できるかもしれない……と思うと、信じられない」


「もう会えない人への想いって、自分の中で昇華させるしかないですもんね。本当に良かった」


 そう言うと、尊さんは少し黙ったあと私を抱き締めてきた。


「……なんですか?」


 目を瞬かせると、尊さんは私をジッと見つめてくる。


「…………お前って、親父さんの事、何か覚えてるか?」


 尋ねられ、私は瞠目した。


「……お父さん、…………は…………」

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