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【全年齢版】部長と私の秘め事  作者: 臣 桜
送り狼

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試してみるか?

「あのですねぇ、学生時代から約九年付き合ったんです! フラれてすぐに立ち直れる訳がないじゃないですか! …………っそれに、あいつ、私と別れてすぐ他の女と付き合って、~~~~っ、来年にはその女と結婚式挙げるんですよ!? 同級生はほぼ招待されるのに、私だけ不参加! それは当然として、みんな絶対私の話をするに決まってます! こんな惨めで恥ずかしくて、情けない事ありますか!?」


 物凄い勢いで言ったからか、部長は「おう……」と少したじろいでいる。


 やがて彼は溜め息をつき、長い脚を組んだ。


「それで今日、ぼんやりしてたのか」


 ……確かにミスして課長に怒られたけど……。


 この人、その横を通ってたから、バッチリ見られてたな……。


 私は溜め息混じりに言う。


「……公私混同って言いたいんですよね。……分かってますよ。来週からちゃんと働きます」


 私はブスッと頬を膨らませ、冷たい窓に額を押しつける。


 窓の外を見ていると、イルミネーションやらクリスマスカラーの飾りが胸に痛い。


 昭人と付き合えていたなら、今年のクリスマスも一緒に過ごしていたのに。


 プレゼント交換をして食事をして、可愛い下着をつけて、スペシャルな日だから求められたらエッチに応えようと思っていた。


 ――でも。


「今年はあいつ、私じゃない女性ひととクリスマスを過ごすんですよ。九年も私と付き合ったのに……。一日の私の誕生日を祝って、そのあとはすぐクリスマス。……思い出が一杯なのに……っ」


 思いだしてまた泣き始めると、部長が冷めた口調で言った。


「セックスするのを嫌がってフラれたのに、元彼が今の彼女とヤるのが気に食わないのか。自分勝手すぎないか?」


(セックスセックス言わないでよ!)


 私はチラッとバックミラーを見る。


 けれど運転手さんは慣れっこなのか、まっすぐ前を見ていた。


 それを見て少し安心した私は、ブスッとして返事をする。


「……だって、一応彼氏でしたし」


 言い訳めいた返事をしつつ、私は今さらながら、自分が彼女として昭人を満足させられなかった事を自覚した。


 当時は『大した事じゃない』と思っていた。


 一緒にいるだけで満足できたし、エッチしなくてもお互い想い合えていると信じていた。


 だってエッチは痛いし、そんなにいいものだと思えなかったから。


『ムラムラするなら手でするよ』と言ったけど、昭人は『いいよ』と断り、一人で処理していたみたいだった。


 だから問題ないと思っていたけど……、……フラれたという事はやっぱり問題あったんだろう。


 車内に沈黙が落ちたあと、私は部長に尋ねる。


「男性ってやっぱり……シたいんですか?」


「男の性欲のピークは二十歳前後。女の性欲のピークは三十代から四十代。それが噛み合う恋人、噛み合わない恋人がいても不思議じゃない」


「…………うう…………」


 私は頭を抱える。


(私、昭人がしたくて堪らない時に、おあずけしまくってた?)


 だったらさせてくれる彼女に鞍替えしても仕方ないけど……。


(でもエッチってそんなに大事? あんなの、気持ちいいって思えない)


 だから私は、また言い訳混じりに言った。


「……だって、気持ちいいって思えなかったんです。痛かったんです。何回か我慢して付き合ったけど、『またしたい』って思えませんでした。抱き合うのは好きだけど、デリケートな所を触られると痛くて……」


(……部長相手に何言ってるんだろ。きっとまだ酔ってるんだ)


 心の中で自分に言い訳をした時、彼はボソッと言った。


「……下手くそだったんだろうな」


「……下手?」


 ドキッとした私は、思わず部長のほうを見る。


「……ど、どうして元彼が下手だって言えるんですか?」


「女性を痛がらせる奴は下手だ。間違いねぇよ。……俺ならちゃんと濡らして、気持ちよくさせられる」


 部長はずっと窓の外を見ていたけれど、言い終わったあとに私を見た。


 熱の籠もった視線を受けた私は、妖しく胸をざわめかせる。


 プライベートが謎で満ちている部長が「濡らす」とか「抱く」と言うので、普通の男性が口にするよりずっと卑猥に思えた。


 私は真っ赤になり、職場ではまったく見せなかった色気を放つ部長を凝視する。


 見つめているというより、彼の発する雰囲気に呑まれて視線を逸らせなかったと言っていい。


 すると――。


「……試してみるか?」


 部長は普段見せない妖艶な笑みを浮かべ、ダンスに誘うように優雅に手を差し伸べてきた。


(この人……、ヤバイ……。……かも……)


 気がつけば私は、無害と思い込んでいた狼のあぎとの中に入ってしまっていた。


 そうなればもう、辿る道は一つだ。


 私はこれ以上ないほど赤面しながら、無言で頷き彼の手を握り返してしまった。




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