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【全年齢版】部長と私の秘め事  作者: 臣 桜
尊さんの秘密

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20/413

部長は御曹司でした

「……マジですか?」


「マジ。本気で聞くって決めたなら、嘘はつかない」


「でも、社長の息子は副社長なんじゃ……、あっ」


 そこまで言って、私は()()()に気づいて声を上げた。


 私は篠宮ホールディングスの商品開発部に勤めていて、尊さんはその部長。


 会社の副社長は篠宮風磨(ふうま)という男性で、確か年齢は三十五歳だ。


 副社長もイケメンなのに独身で、彼を狙っている女性社員はめちゃくちゃ多い。


 尊さんも優良物件だけれど、それ以上に副社長という上位互換がいる。


 で、その副社長……、尊さんより年上。


「さっき言ってた〝兄貴〟って……」


「ビンゴ。副社長は俺の異母兄」


「うわぁ……」


 私は顔を歪め、天井を仰ぐ。


「お母様は、社長夫人で経理部長の篠宮怜香(れいか)さん。……という事は、尊さんは副社長と兄弟で……。…………あれ? なんで速水?」


 創業者一族と尊さんの苗字が違う事に気づいた私は、目を丸くする。


 料理人が大きな海老や帆立、野菜を鉄板で焼き始めたけど、高級料理を楽しむどころじゃなくなってきた。


 いや、お肉は絶対食べるけど。


 というか、今まで頭からすっぽ抜けていたけれど、尊さんが自分の家庭環境について話していたのを思いだした。


 意地悪な継母と言っていたのは社長夫人、そして尊さんの本当のお母さんは……。


「……凄く失礼な事を言いますけど、……尊さんは……、愛人の子供?」


 恐る恐る言うと、彼は静かに笑って言った。


「愛人……、はどうかな」


 尊さんは綺麗なカトラリー使いでふっくらと焼かれた帆立を切り、口に入れる。


 私も魚料理に合わせて運ばれてきた白ワインを飲み、同様に帆立を食べた。


「継母から見たら、俺の母は憎い浮気相手になるんだろう。でも俺の母と父は、学生時代からの付き合いで、長年愛し合った恋人同士だった。父は母と結婚したいと祖父母に言ったが、前々から怜香との縁談があって反対され、両親の言いなりになった。……捨てられた形になった母は、女手一つで俺を育ててくれたよ。……でも父親は母を忘れられず、俺たち家族の前に姿を現していた。……父いわく、『深く愛し合っていたから離れられなかった』らしい」


 そういう関係なら、〝浮気〟とは言えない。


 尊さんのお母さんからすれば、怜香さんのほうが〝あとから現れて自分たちの関係をぶち壊した女〟になるんだろう。


「父は継母と結婚したあとも、隠れて母と会っていた。責任を感じていたからか、十分すぎる生活費をもらっていたが、母はそれを嫌がって学費として貯蓄していた。……俺は兄貴が生まれた三年後に誕生し、篠宮家に存在を隠されたまま育った。父はちょくちょくうちを訪れていたから、実の父だと分かっていた。でも母は仕事を掛け持ちして苦労していたから、父に対して『なぜ側にいてくれないのか』と不満に思ってたな」


 尊さんの話を聞いた私は、彼がひねくれた性格になった理由を深く理解した。


 意地悪な事を言って、私の気持ちを試すような真似をするのも、そこに起因しているんだろう。


 彼は愛情に飢えている。


 雑に扱われる事を知っているから、試す事によって私が本当に自分を大切にしてくれるか確認しているのだ。


 尊さんはとても優秀な人なのに、不器用な生き方をしている。


 彼の心の底に巣くっているものを知って憐憫が湧き、「私が愛し、守ってあげたい」という感情に駆られる。


(……単純だなぁ……。さっきはあんなに『喰えない男』って思っていたのに)


 私はワインを一口飲み、溜め息をつく。


 でも物事にはすべて理由がある。


 尊さんはなるべくして、こういう性格になったんだ。


「今、お母さんは……、亡くなって……?」


 尋ねると、尊さんは苦く笑って頷いた。


「俺が十歳の時に交通事故で亡くなったよ。そのあと俺は正式に篠宮家に入った。兄貴はいきなり現れた弟に驚いたみたいだけど、……優しくはしてくれた」


 やっぱり問題は継母なのか。


「でも尊さんの名字、速水ですよね? どうして……」


 社長の家に入ったなら、篠宮の姓を名乗っているはずだ。


「速水は実母の姓だ。継母は俺が社内で篠宮と名乗るのを嫌がり、速水と名乗らせている」


「そんなの、ただのいびりじゃないですか。仕事だって、本当は部長以上のポストにつく実力があるんでしょう?」


 私は怒りのあまり声を震わせる。


「……ま、慣れたけどな。こんな扱いを受けるのは今に始まった事じゃない。逆に部長にしてくれた事を感謝してる」


「そんなの、虐待に慣れた人の言う台詞じゃないですか。もっと怒ってくださいよ。何でそんなにのんびりしてるんですか……っ。…………っ、~~~~~っ」


 私はグッとこみ上げた感情に負け、ポロポロと涙を零す。

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