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【全年齢版】部長と私の秘め事  作者: 臣 桜
運命の日

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けだもの

 俺はグツグツと煮えたぎった想いを抑え、いつも通りに答える。


『……下手くそだったんだろうな』


 朱里は男の側が下手だと考えた事がなかったのか、俺の言葉を聞いて目を瞬かせた。


『……ど、どうして元彼が下手だって言えるんですか?』


『女性を痛がらせる奴は下手だ。間違いねぇよ。……俺ならちゃんと気持ちよくさせられる』


 そこで初めて『俺なら』と自分の存在を示したからか、朱里は無言で息を吸い、体を緊張させた。


 よし、俺を〝自分を抱くかもしれない男〟として見たな?


 あと一押しだ。


『……試してみるか?』


 暗いなか、俺は朱里を見てニヤリと笑ってみせる。


 ネオンに照らされた彼女は、戸惑った表情で俺を見ていたが、やがて小さく頷いた。


 ――落ちた。


 十二年、ずっと大切に守ってきた果実は、いまや完全に熟した。


 甘い匂いを放ち、みずみずしい果汁がたっぷり詰まった楽園の果実を、俺はこの手でもいで食い散らかすのだ。


 隣で朱里が緊張する気配を感じながら、俺は暗い目で満足げに笑った。






『シャワーに入っている間、待っていてください』


 そう言われたが水音を聞いているうちに平静でいられなくなり、俺は服を脱ぎ始める。


 ――もう駄目だ。我慢できない。


 いきなりドアを開けてバスルームに入ったものだから、朱里は目を見開いて驚いた。


 だが理性を飛ばした俺は、彼女を抱き締め、柔らかな唇に吸い付いた。


 ザアアアア……、とシャワーが降り注ぎ、裸になった俺たちを濡らしていく。


 もう自分の気持ちに嘘をつかない。


 黙っていたほうがいい事はあるだろうが、朱里を好きだという想いだけはは偽らない。


 俺は今まで誰も大切にできなかった。


 その分、思いきりお前を可愛がり、愛させてくれ。


 望むものは何でも与える。美味い物が食べたかったらどんなレストランでも連れて行く。旅行も行こう。お前と一緒ならどこに行っても楽しいに決まってる。




 ――朱里、お前が好きだ。





 そのあとの俺は、けだもののようだった。


 恋い焦がれ続けた女の体は、触れるだけでも気持ちいい。


 どこを触っても気持ちがいい。いい匂いがする。


 朱里のすべてが俺の理性をたやすく奪っていく。


『もっと……っ、ぶちょ……っ』


 ――まだだ。もう一つ壁を壊さなきゃ。


『……こういう時まで部長って呼ばれるのは萎えるな。名前で呼べ。――朱里』


 初めて大人になった彼女の名前を呼び捨てにした俺は、この上なく興奮した。


『――――ひぅっ』


 耳元で囁かれた朱里は、首を竦めて小さく悲鳴を上げる。


『ァ……あ、みこ……と、さんっ』


 求めていた女がトロンとした顔で俺の名前を呼ぶ。


 あまりにエロい顔、声で呼ばれて頭の中がジンと甘く痺れた。


 俺は彼女を愛撫しつつ、完全に手の中に堕ちた朱里の姿を見て、悦びに表情を彩らせた。


 ――田村なんて忘れろ。


 ――俺の事で頭をいっぱいにするんだ。


 俺はそう囁いたあと、ねっとりと舌で朱里の耳孔を犯しながら、痙攣する彼女を抱き締める。


 ――できたじゃないか。俺は女を愛せられる。悦ばせられる。


 だが、前戯だけで終わってやれない。終われるはずもない。


『抱くぞ、朱里』


 俺はぐったりとした彼女の耳元で、自分に言い聞かせるように告げた。






 生まれて初めて、夢中になってセックスをした。


 朱里が啼くたびに興奮と満足感が増し、さらに気持ちよくさせたいという欲が芽生える。


 こんな極上の女を満足させられないなんて、田村は本当に大馬鹿だ。


 ――これは俺の女だ。


 物凄い支配欲と征服感が俺の中を駆け巡り、生まれて初めて『満たされている』と感じた。


 最初こそ、大人の余裕でじっくりたっぷり焦らし、夢中にさせてやろうと思っていた。


 バスルームで前戯するまでは良かったが、いざベッドに移動したあとはあっけなく理性が飛んだ。


『…………あぁ…………』


 四時近くになった頃、俺は朱里の体を抱き締めて声を漏らす。


 あまりに激しく抱いたものだから、全身汗みずくだ。


 彼女はすでに気絶していて、ぐったりと体を弛緩させている。


『…………気持ち良かった……』


 呟いた俺は、汗で額に張り付いた朱里の前髪を除け、そこにキスをした。


 そのあと眠っている彼女の顔を飽きることなく見つめ、唇にもキスをする。


『…………やっと抱けた』


 呟き、ポロッと涙を零す。


 ――嬉しい。


 ――人を愛せたのが、こんなにも嬉しい。


『ありがとう、朱里』


 彼女の頭を撫でて微笑みかけた時、もう自分は彼女に妹を重ねていないと確信した。


 これからは朱里を一人の女として見て、愛し、守っていく。


(そのためには怜香を完全に黙らせないと。――これで完全に覚悟が決まった)


 暗闇の中、俺は静かに決意し、ゆっくり息を吐く。


『……絶対にお前と幸せになる』


 泣きそうな顔で朱里に笑いかけ、俺はもう一度気持ちを込めて彼女にキスをした。

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