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第7話 アキト、バグ・クラッシャーの神髄を発揮する

 チュートリアル回です(^^)

 アキトが青白い光を帯びたスモウ・リングに足を踏み入れると、ひんやりとした金属の感触が古びた靴底に伝わってきた。


 向かいには、錆び付いた無数の機械部品が不安定に積み重なり、異形を象る巨人、スクラップゴーレムが、軋むような鈍い金属音を時折立てながら仁王立ちしている。


 そのつぎはぎだらけの巨体はゆうに3メートルを超え、威圧感は満点だ。


 「ゴゴゴ……テキ……タオス……」

 

 低いうなりのような音声が、ゴーレムの内部の歪んだスピーカーから響いてきた。


 「なんだよ、こんなの普通に戦って勝てるのか?普通チュートリアルって、もっと易しくない?」


 リングの中央にいた、サイケデリックな色合いに染められたけばけばしい行司装束を身につけた、長い白い髭を蓄えた老人が、古風な扇子を構えて二人を交互に見た。

 その顔には、仙人のような古風な威厳と、どこか間の抜けたコミカルな雰囲気が奇妙に同居している。


 さらに、スモウ・リングの周囲には、一段高くなった審査員席があり、5つの席にそれぞれ異なる種族の者が、まるで動きを封じられた石像のように無表情でリング上の二人を見つめていた。


「さっき聞いた話だと、時間までに相手を土俵の外に出すかひれ伏させれば勝ちなんだったよな。なんとか心理戦に持ち込めないものか…。」


 頭上には巨大なスクリーンが設置され、アキトとスクラップゴーレムの情報が古めかしい電子文字で表示されている。


【対戦者】 不知火 彰人 (レベル 1)

【対戦相手】 スクラップゴーレム (レベル 5)

【スクラップゴーレム情報】

廃棄された機械部品が集積して形成されたガーディアン

低い知能を持つ

強靭な物理防御力と、鈍重ながら強力な物理攻撃力を持つ

特定の弱点はなし


「レベル5……いきなり格上の相手かよ!しかも特定の弱点はナシと来たもんだ。しかし、低い知能とあるから、心理戦には引っ掛かりやすいのかもしれない」


 アキトは、表示された情報に内心で舌打ちした。

(冗談だろ…こんなの、どうやって勝てっていうんだよ!武器らしいものは何も持っていないし、さっき聞いたら報償でもらえるらしいけど、そこまでは身体で戦えだってさ)


 あるのは、頭の中の膨大なコードの知識と、今までの経験から培われたバグを見抜く能力だけだ。


 審判の老人が、独特の抑揚をつけた異世界の言語で開始を告げた。


「ハッケヨイ!ノコッタノコッタ!」

(おい、ここだけは現行踏襲なのかよ!)


 スクラップゴーレムは、ゆっくりと、しかし確実に、油切れのロボットのように重い足取りでアキトに向かって近づいてくる。


「ゴゴゴ……テキ……タオス……」


 低いうなりが繰り返される。


(こいつの攻撃をまともに受けたら、一撃で終わりだ……何とかして、あの巨体を止めなければ……!)


 アキトの脳内は、超高速で思考を巡らせ始めた。


 物理的な攻撃力では到底かなわない。そしてこのゴーレムは、廃棄された機械部品でできている……ということは、内部には必ず制御システムが存在するはずだ。


(もし、そいつを見つけ出し、コードを書き換えることができれば……!いっちょやってみますか)


 彼はまず、意識を集中させ、鋭い光を瞳に宿しながら『脆弱性エクスプロイト (Lv.3)』を発動させた。


 ゴーレムのコード構造に侵入を試みる。しかし、レベル5の強固な防御壁は、レベル3のエクスプロイトを容易には通さない。警告を示す赤いエラーメッセージが、アキトの脳内にけたたましく響いた。


(やはり、そう簡単にはいかないか……!)


 その時、審判の老人が声を上げた。


「アキトよ、汝、アリーナの初戦においてのみ、特別な防御の機会を与えよう。古の誓約に従い、我が出す問いに正しく答えれば、一度だけ強固な防御シールドを展開できるが、チャレンジするかね?」


 アキトは一瞬躊躇したが、老人のちょっといたずらっぽい、まるで狐のような笑顔を見て、これは千載一遇のチャンスだということを認識した。

(よっしゃ、チュートリアルっぽいぞ!)


「挑みます!」


 審判は、白い長い髭を優雅に撫でながら、古めかしい奇妙な言語で問いを発した。


「では、問おう。Linuxにおいて、現在のディレクトリを一つ上の階層へ移動するコマンドは何であるか?」


(なんだよこれーーーー!誰だよこんな古臭いOS使ってんだよ!)


「cd .. です!」


 審判は満足そうに、ゆっくりと頷いた。「正解! 古の知識がしばらくの間汝を守護するだろう!」


 その言葉と同時に、アキトの周囲に半透明の、複雑な幾何学的な紋様が瞬時に浮かび上がる強固な防御シールドが展開された。

 直後、ゴーレムの巨大な、鉄塊のような拳がシールドに激突し、凄まじい衝撃がアリーナ全体を揺るがす。


 防御シールドは、強靭な力に耐え、表面がわずかに歪んだだけで持ちこたえた。

(このシールドがあるうちに、なんとかしなければ……!)

 このまま続きます(^^;

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