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第22話(上)COBOL王国到着 - 予想外の早着と厳格なる入国審査

COBOL王国入国審査です。

異世界物の入国審査って割と好きです。

「よし、順調だぞ、まあ、本気を出した俺さまならこんなものだな!」


 バグジロウの声が車内に響く。

(今までよりはるかに速いし、揺れも少ない。明らかにパワーアップしているぞ…もしかすると『機械共鳴』のおかげもあるのか?俺とバグジロウの一体感が増して、パワーアップしているのかもしれないな。。。。)


 アキトはバグジロウに親近感を感じ、操作パネルに軽く手を置いた。

 いつのまにか弁当箱が空になっていて、空の高さも徐々に落ちてきている。


 高原の向こうに、霞がかったようなシルエットが見えてきた。

 そこには、城郭のような伝統的な建造物の輪郭が浮かび上がっている。


 「COBOL王国が見えてきたわね」リリスが前方を指さした。

 「以前来たことがあるけど、この感じ、久しぶりに新鮮な気持ちになる」


 「強固ナ秩序ノエネルギーヲ感じマス」イオが言った。

 「安定性ヲ重視シタ設計思想ガ、空間自体ニモ影響ヲ与エテイマス」

 「上空から全体像を見て見てみたいな」リリスが提案した。

 「OK、まかせな!」

 バグジロウが一気に高度を上げると、次第に王国全体の姿が鮮明になってきた。


 そこには、高層ビルのような現代的な建造物はほとんど見られず、代わりに平屋や二階建ての、古い城下町を思わせるような整然とした町並みが広がっている。

(木造や石造りの建物が多く見えるが、これはこれでいいもんだな…)


「お、あれが有名なIDENTIFICATION宮殿だな、王族が住んでいる」リリスが遠くに見える八角形の大きな建物を指さした。

「IDENTIFICATION DIVISION…」


 思わず口をついて出た言葉に、自分でも少し驚いた。

(そういえば、高校時代にCOBOLも少しかじったっけ、自然に出てきちゃったな…)


「アキト、COBOLを知っているの?」リリスが振り返る。

「まあ、基本的な構造くらいはね。」アキトが苦笑する。

(そういえば大学時代の同級生の松岡が地方銀行のSEになって、『まさかCOBOLを使うとは思わなかった』とぼやいていたっけ。今後使うことはないと思っていたが、こんなところで使うことになるとはな…)


「ソノ言語ハ、整然トシタ構造ヲ持ツトサレテイマス」イオが静かに言った。

「古キ時代カラ続ク堅牢性ガ特徴デス」


「世界でも一番長く使われ続けてる言語のひとつ」リリスが頷く。

「モダンな言語の世界には、軽んじる人も多いけれど、今でも重要なシステムの多くが実はCOBOLで動いている。学ぶところは多いわ」


「おしゃべりはそこまでだ。さあ、行くぞ!」バグジロウが高度を下げて、入国ゲートへ向かっていく…。


■厳格なる入国審査


 COBOL王国の入国ゲートに着くと、整然と並んだ入国審査の窓口が見えた。そこで勤務している審査官たちは、藍色の羽織のような上着に、格子柄の袴風の下衣を身につけていた。その姿は、どこか江戸時代の役人を思わせる。


 「降りるぞ」バグジロウが静かに着陸した。


 入国審査の窓口に向かうと、べっこうぶちの眼鏡をかけた年配の審査官が迎えてくれた。審査官の胸元に輝く「COBOL-85」というバッジに目が留まった。


(85かよ!もしかして、これは役職によってバージョンが違うのか?)


「IDENTIFICATION DIVISION(身元確認部門)へようこそ」

 審査官は厳格な表情で発言する。

「入国目的を述べよ」

「観光です」リリスが答えた。「友人の故郷を訪れるために」


「ENVIRONMENT DIVISION(環境部門)の査定が必要だ」

 審査官はおごそかに言った。

「出身地域と使用言語を申告せよ」


 アキトは最初に渡された書類を見て、思わず苦笑した。

 

 (まさにCOBOLのような様式だな…。厳格で冗長だけど、一度覚えたら安定している)


01 VISITOR-RECORD.

05 NAME PIC X(30).

05 ORIGIN-DIVISION PIC X(20).

05 PROGRAMMING-LANGUAGE PIC X(15).

05 PURPOSE-OF-VISIT PIC X(50).

05 DURATION-OF-STAY PIC 9(3).


 大学の実習で少しだけかじったときに「なんだこりゃ?」となった「PIC」という文字変数定義の記法まで忠実に再現されていた。


「すごいな…これ、本物のCOBOLみたいだ」思わずつぶやいた。


 審査官の顔がわずかにやわらぐ。


「我々の言語を知っているのか?」

「ええ、少しだけ学んだことがあります」

「ほう…」審査官は興味深そうに眼鏡を上げた。


「最近は他国の若者で我らの言語を知る者は少ない。とくにPICTURE句(文字変数定義)が理解できるとはな」


「まあ、実際に使ったことはそれほど…」


「いや、それだけでも嬉しいよ」審査官は温かみのある声で言った。

「我々の言語は冗長と言われるが、それは明確さと安定性のため。COBOL王国も同じ理念で成り立っている国だ。覚えておくといい」


 彼は書類に「EXIT PROGRAM」と書かれた印を押した。

「PERFORM UNTIL(手続き実行)の手続きは終了した。次の窓口へ進め」

(なんだか言葉遣いまでCOBOLのキーワードだらけだ…)


 次の窓口では「DATA DIVISION(データ部門)」と呼ばれる手続きが待っていた。持ち物検査や滞在予定日数の確認だ。


 「コンピュテーション(計算)が完了した」若い女性の審査官が言った。

 「滞在許可日数は30日間だ。超過する場合はPROCEDURE DIVISION(手続き部門)で延長申請をせよ。申請なしで超過すると違約金だ。注意するように」


 最後に審査官長らしき人物が、最終確認を行った。

 その袖口には「COMPUTE」という文字が金糸で刺繍されている。


「GO TO(移動せよ)WORKING-STORAGE市場。トークン(通貨)の交換も可能だ」

 そう言って彼は最終的な許可証を手渡してくれた。


(厳格な手続きだな、定型的でCOBOLっぽいけど人間味を感じる。プログラムの文法みたいだけど、一つ一つに意味があるんだな…)


 アキトたちはバグジロウのところに戻り、COBOL王国へ入国する。


さて、このまま街に入ります。

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