第2話 苦い記憶と新たな決意~幸菜との出会い
アキトの回想シーンです(^^)
彼女との出会いは高校一年生の秋、文化部交流会でのことだった。
薄暗い視聴覚室の片隅で、一人難しい顔で文庫本を読んでいる少女がいた。それが、利発で思慮深く、学年でも常にトップクラスの成績を誇る文芸部部長、白石雪菜だった。
良家の子女であるらしい彼女は、その明るさと、内に秘めた芯の強さ、そして誰もが認める美しさを持っていた。
一方、アキトは、急な部長の欠席で副部長として駆り出されたものの、その交流会でも隅っこの方になぜか置いてあったパソコンで、熱心に自作のゲームプログラムをデバッグしていた。
周囲は彼の特異な才能を知るがゆえに、声をかけづらい雰囲気もあった。
そんな彼に話しかけたのが雪菜だった。
「ねえ。そこ、エラー画面が出ているようだけれど、大丈夫…?」
「ありがとう。今調べているんですけれど、参考のサイトが英語になっていて、俺あまり英語が苦手で困っているんです」
「ちょっと見せてもらえる?」
帰国子女で人とのハードルが低い雪菜は、あっさりと専門用語だらけのサイトを解説して見せた。
「スゲエ。。。」
雪菜の飾らない明るさと、専門的な内容も易しく解説してくれる知性に、彰人は初めて憧憬の念を抱いた。まるで光のように周囲を照らす彼女の存在は、陰にこもりがちな彰人にとって、眩しいほどだった。
その後、交流会で言葉を交わすうちに、会うたびに気さくに話しかけてくれる雪菜に、彼の思いは徐々に深まっていった。
彼女の知的な会話、時折見せる優しさ、そして何よりもその凛とした佇まいに、彰人は心を奪われていった。
一方の雪菜も、他の生徒とは違う物静かな彰人に、帰国子女で偏見のない雪菜は自然と目を惹かれた。彼が熱心にパソコンに向かう姿、真剣さ、時折見せる鋭い眼光に興味を覚え始めていたのだ。
口数は少ないものの、質問をすれば真摯に、そして分かりやすく答えてくれる彼の誠実さも、雪菜の心にじわじわと浸透していった。
彼女にとって、いつも周囲に人が集まっている自分とは対照的な、孤独を愛する彼の姿、自分の知らない世界を広げてくれるその知見は、どこか神秘的で、知的好奇心を刺激するものだった。
(注:アキトはぼっちだっただけで、孤独を愛していたわけではない)
交流会をきっかけに、雪菜は時折、コンピュータ部に立ち寄るようになった。
最初はプログラミングに関する素朴な質問をすることが多かったが、彰人が答えるうちに、二人の間に会話が生まれるようになった。
文学部部長である雪菜は、読書好きの彰人が意外なほど幅広いジャンルの本を読んでいることを知り、興味を持つようになった。
一方の彰人も、雪菜の豊かな知識と深い洞察力に惹かれ、次第に自分の好きな作家や作品について語るようになっていった。
やがて二人は、お互いにおすすめの本を貸し借りするようになった。雪菜は彰人に、海外の文学作品や哲学書を勧め、彰人は雪菜に、科学技術に関する入門書や、趣味で読んでいる歴史小説などを貸した。
本の感想を語り合ううちに、二人の距離はゆっくりと縮まっていった。
放課後、図書室の隅の席で、並んで本を読み互いに感想をそっと語り合う二人の姿は、いつしか周囲の生徒たちにとっても見慣れた光景となっていた。
そんな日々が続く中で、アキトは勇気を振り絞ることを決意する。
雪菜への告白である。
次も回想が続きます