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山吹童子伝  作者:
第壱章
2/13

人成らざる者

(とき)は現代。

岩戸が開く。ぎぃぎぃと音を立てて。

岩戸の外は御天道様が頂点(まで)昇って明るく成っていた。

「彼れから何年経った、、、」

岩戸の陰からは、眩しそうに眉を(しか)(なが)ら外に出ていく者の姿が現れた。

其の者は、人成らざる者の様な異質な空気を纏っていた。

「籠り過ぎたか、、、」

緩りとした昔訛りの口調の人成らざる者の(こえ)掠れて聞き辛いが女の様にも聞こえた。

「此の山も、動物も木々も可成(かな)り減って仕舞(しま)った」

「遠くに視える岩山の様なものは何で在ろうか、城壁にしては余りに高過ぎる」

「其処に視える女の着物は何故彼程(あれほど)歪なのだ?金が無い様にも見えぬが、、、(しか)し彼れは随分と身軽そうだな」

其の者の言葉に応える者は居なかった。

「まァ善い、調べれば判る事だ」

「逐、野狗(やこ)は居らぬか」

人成らざる者の聲に応える様に、壱匹の狐の様な物が草陰から出て来た。

「御呼びで御座いましょうか、主人殿」

野狗と呼ばれた狐の様な姿をした其れは黑い毛並みをしており、人間の言葉を発していた。

「嗚呼、今は彼れから何年経った。今の日本国の情報を教えろ」

「承知致しました」

弐人の間には主従関係が在る様に視えた。

「先ず、今は貴方様が洞窟に入られてから捌佰(800)年以上が経たれました」

「御存知かと思いますが、現在貴方様以外の鬼族は人の手によって滅ぼされて居ります」

「嗚呼、、」

人成らざる者は顔を伏せて居たものの、愛憎の念が感じ取られた。

「、、、現在、貴族制度は滅び政治の中心も皇族や貴族ではなく、総理と呼ばれる者を筆頭に、民衆の意見を尊重した政治体制に移変りました」

「民衆を中心に、か?」

「はい、幾度もの異国との戦乱の結果日本国内で革命が起き、此の結果へ」

話を遮らない為か、人成らざる者の聲は聞こえ無くなった。

「先ほど申し上げた異国との戦乱も同様に、今日迄に日本国は幾度も異国、特に欧米と接触を重ねて来ました」

「其の為、現在の日本国では米国文化が大いに栄えて居ります」

「米国?聞いた事の無い(くに)だな、宋では無いのか?」

「はい、宋は現在中国と云う名で呼ばれており、今も関係は続いていますが文化的に広まっているのは米国文化であります」

「米国では宋とは違い、日本国と比べて可成り風変わりな言語を話すと聞きました」

「へェ、面白い」

「他には何か或るのか」

「、、、、、、」

「どうした?此れだけか?」

「貴方様の御出身で或る西園寺家に関してで御座いますが、」

「、、、!!」

「西園寺家は後継問題によって碌佰(600)年程前に其の血が途絶えました」

「、、、そうか」

「余りに長い年月が経過された故、細かな説明は致しかねますが、迂生(うせい)がお伝えできる事は以上で御座います」

「、、、、、、」

「主人様、今後は如何される御予定で御座いますか?あの洞窟から現れに成られたと云う事は暫し滞在なされるとお見受け致しますが」

「嗚呼、此の山の付近にとある神社が在ると聞いた、予の様に此方側についた人間が信仰するものだと」

「成る程、然し乍ら信用するのは如何な物かと、」

「ほう?」

野狗と呼ばれる狐の様な者の言葉に、其の者は顔を曇らせた。

「あの時代の宮司(ぐうじ)が此方側の者だとしても、現代の宮司に至る迄に朝廷や貴族一味の洗脳に絆されていた場合、名乗り一番に殺しに掛かる可能性も有り得るかと」

「成る程」

「野狗、御前は予が高々神社の宮司(ごと)きに殺られると思っているのだな?」

人成らざる者の周囲の空気は緊張感を(まと)い、一歩間違えれば史上最悪の自体すら巻き起こらんとしていた。

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