記録神の端書4
――人物――
クロム
本作主人公。人とのかかわりを覚えて、慣れないことに困惑しつつも性格のぶっきらぼうさやとげとげしさは少しずつ取れてきている。神殿と関わらなければ対立はしなくていいとわかり、心底安心している。
バティン迷宮を踏破したものの、その履歴は探索者協会に申告していないために探索者協会では全く認知されていない。
リュドミラ・オルドヴスト
クロムの追っかけで激重厄介ファン。情報をつなぎ合わせてクロムと森林神の使徒、ひいては神殿と対立したことを突き止めた。
学生時代に魔道具の作成や魔術の腕を磨いたため腕は確か。〈深淵の愚者〉や実家の騎士たちに稽古を付けられ、一月半で大きく実力を伸ばした。
クロムに探索者としての憧れは強く持っているが、恋愛感情はない模様。
ラピア
反逆と薄明の神。バティン迷宮二十九層でクロムが危機に陥った時、クロムを助けた。クロムに記憶を渡そうとしたところで〈白輝蜈蚣の外套〉に邪魔をされ、魔術で作ら得た依代が砕けた。マルジュナという単語やクロムにすべきことを残した。
依代から意識が戻った時、地団太を踏んで地面に杖を叩きつけたらしい。
ハイラル
故人。森林神の使徒で、過去にはクロム(グラム)に強い対抗心を燃やしていた模様。グラムはこうでなくてはというある種の信頼があったようだ。
ヘルリック
かつてクロムを迷宮に出合わせた行商人。バティンポリスにはブラインを支えるために訪れていた。ブラインが独り立ちを始めたため、クロムたちがバティンポリスを去った後、ブラインの面倒を見終えたとして次の都市へと移動を始めた。
ブライン
ヘルリックの商いの弟子。実家のチリア道具店を継いで、ブライン道具店に改名した。ヘルリックに師事を乞い、職人との伝手を広げながら商人としての腕を磨こうと必死になっている。
父親が〈盤割の鎚〉の関係者と知り困惑するとともに、真実を知るべく合間合間でボスポラスたちに協力を始めた。
ランカ・パキラ
今代の海神の使徒。クロムを地下神殿へと導き、探し人である銀髪の女の存在を示した。周囲には隠しているが、寝ている間だけあり得るかもしれない未来を見ることができる。
ザンジバル・パキラ、ボスポラス・パキラ
ドレークの息子たちでランカの兄たち。領主代理とその補佐として奔走し、ランカの警護と先代領主の暴走を止めたということで多少は権力者たちからは認められるようになった模様。現在は新たな領主とその腹心として街の立て直しを図る。
ザンジバルは新たな領主の任命を受けるために帝都まで向かい、ついでにセンドラー魔道学院と渡りをつけたものの、その頃には既に被検体もといドレークの〈疑心〉は解けていた。
ドレーク・パキラ
都市バティンポリスの元領主。海神祭の騒動の際に〈疑心〉の魔術に掛けられ、愛していたはずのバティンポリスやランカたちに憎悪を向け始めたために失踪した。
ドレークの立場は失墜したものの、相対的にザンジバルの立場を上げることになった。〈サーラの護符〉の効果により〈疑心〉は解け、今は地下牢で自省の日々を送っている。
シュフラット・マーレイア
都市バティンポリスの古株貴族。無表情な堅物で態度にも棘があるが、味方や身内には甘い一面を持つ。弟のアゼルが〈盤割の鎚〉に殺されたと知り激怒し、私財を擲ってバティンポリスとその近辺から〈盤割の鎚〉を排斥し、現在も多くの伝手や力を〈盤割の鎚〉の捜索に充てている。ドレークの目論見とは違うが、バティンポリス内での勢力としては弱体化したことになった。
〈遠洋の灯〉アーノルド、ヘレン、マルロ、ミネ
四級探索者パーティ。この冬に実力を大きく伸ばし、今では〈蒼天の翡翠〉を教導役として探索者としての能力を伸ばしている。全員が魔術の素養があったために、前衛、中衛、後衛どの役でも全員ができるようになっており、順調に成長すれば高水準のパーティとなるだろうと噂されている。
〈蒼天の翡翠〉ガント、ルーカス、オーム、アラン、ヴェイロン、ポーラ、ピリア
二級パーティ〈薄闇の水晶〉と統合し戦力増強した二級パーティ。まだかみ合わない面はあるものの、知古ということでこの冬の間にひとつのパーティとしてまとまりつつある。
〈遠洋の灯〉の教導役を引き受け、余すところなく知識や技術を叩きこんでいる。
バッカラ
権力争いに敗れるかたちで総本山から島流しされてきた、バティンポリス神殿の新たな神殿長。温和で親しみやすい雰囲気はすぐに街の人々からも好かれたものの、神殿としては前任アゼルのほうがマーレイア家からの献金が多くて良かったと陰で言われてしまった。ドレークの目論見とは違う形ではあるがバティンポリス内での立場としては弱体化した。
クロムの過去を知っているがそのことをクロムには明確に伝えず、過去の亡霊と称して総本山が混乱する様を見たがっている性格の悪さがある。信仰の対象は総本山ではなく神にあると思っている故か。
エレク
幼少時のグラムを見つけ出し神殿騎士に仕立て上げたものの、グラム自身は理想的な神殿騎士とは異なってしまった。グラムが神殿から離脱し、ハイラルが台頭したことが切っ掛けとなり権力争いに敗れ、総本山から追放された。表向きは余生を穏やかに過ごすために地元ミンレイへ戻ったことになっている
――魔獣――
慈母烏賊(親)
バティン迷宮最奥層に現れた、青白い発光をする烏賊型の魔獣。
攻撃や再生を行わず、敵の攻撃を一身に受ける。倒れるとき腹から子を産む。
慈母烏賊(子)
慈母烏賊が倒れた時に腹から産み落とされた子。生来の高速再生能力の他、慈母烏賊の受けた攻撃方法や魔術を獲得する。クロムは多彩な攻撃をしたわけではなかったため、幸いにして比較的楽な戦いになったようである。
――道具――
海鳴りの爪
攻撃範囲が広くなる〈範囲拡大〉、攻撃範囲にいる敵全員に攻撃を当てられる〈範囲攻撃〉、攻撃が何にも当たらなかった時稀に遠く離れた敵に攻撃ができる〈海鳴〉の三つの効果がある。クロムが手に入れた物は通常のものよりも〈海鳴〉の威力が強く、〈範囲拡大〉が刃渡り(三節)の倍ほどの範囲程度のもの。通常〈範囲拡大〉は三倍から五倍になるようである。
浮き灯り
ランタンのような形をした魔道具。マナを込めることで宙に浮き、マナが消費されると消灯して手元に戻る。
サーラの護符
バティン迷宮最奥層の魔獣が書き変わった護符型の迷宮品。複数の効果がある。
〈標〉:身に着けている者を不意の災難から守る。
〈海神の加護〉:魔術補助、心理系魔術解除、十日に一度致命傷を負った時一度だけ傷を回復する。
〈矢避け〉:矢や飛び道具が当たらなくなる。
〈艱難辛苦〉:持ち主に試練が降りかかり、試練を乗り越えた時に見合った対価を得る、
――マルジュナ――
古きもの、あるいは古神。アリヒをはじめとした神々が現れる以前に天上世界・地上世界に蠢いていた強大な力を持った魔獣たちの総称。
ラピア曰く、クロムが倒した白輝蜈蚣はこの類の魔獣のようである。
4/1~ 小休止「静穏な時間」