表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/45

第八話 地下室は宝の山

「地下室に閉じ込められているけど、僕にはたくさんの宝物があるんだ。素晴らしい絵画、美しい音色を奏でる楽器、様々な国の本、どれもティアナ王国には必要ないと言って、没収された物なんだ。」

エリーザだけではなく、マーサとアニーもウィルの話にじっと耳を傾けていた。もちろん、マーサはエリーザをしっかりと抱きしめたままだ。

「リヒテル王国とは違い、僕の国は芸術を排除して、全て、軍事力を上げるための教育だけをしているのは知っている?僕は、剣を持つよりも楽器や絵筆を持ちたかった。しかし、父上は許してはくれなかった。もしかすると、僕に武術の才能があったら、悪魔の子と言われても、地上で生活が出来たのかもしれない。でも、兄上たちと違い、僕は剣を握ることが出来なかった。剣を見るだけで、頭が割れそうな痛みがくるんだ。剣を握ると、妖精たちが大声でわめきだし、立っていられないほどの痛みになるんだ。だから剣を落とし、膝をつく僕の姿を見るたびに、父上、兄上、そして城中の人々に「役に立たない人間だ」とののしられ、また、地下室に閉じ込められる。父上が、僕を生かしているのは、全て母上を自分の元に戻すためなんだ。もしも、僕を殺してしまったら、母上は二度とティアナ王国へ帰ってこないと思っている。海外公演中に亡命をされたら困るからね。母上も、僕の事は気にかけてはいないけど、殺したいほど憎んでいるわけではないから。」

淡々と語る姿に、マーサとアニーはティアナ王国の情勢がどれほど恐ろしいのかを感じ取っていた。まだ5歳だというのに、壮絶な人生を歩んでいることが信じがたかった。

「国民には申し訳ないけど、僕は没収された芸術品に囲まれて暮らせるから、誰よりも幸せなのかもしれない。

僕がリヒテル王国の言葉を話せるのも、そのおかげ。リヒテル王国の本は、人気があって、たくさんの国民が欲しがるから、密輸が絶えないんだ。だけど、軍人がどんどん奪い取ってくるんだ。なぜ、燃やして捨てたりしないのかというと、国民に暴動をさせないためだ。国民には、ティアナ王国が、諸外国を侵略し、大きな国になるまでは、武力に力をいれるよう教育をしている。いつか、国が安定したら、芸術品を全て返却すると言っている。だから、それを信じて、男性は軍隊に入隊し、女性は軍事工場で働いている。皆、いつかのために、耐えているんだ。それを知りながら、僕は芸術を楽しんでいるから、本当は悪魔の子なのかもしれない。」

ウィルは少し得意げに話を続けた。

「外国の本は、妖精たちが言葉を教えてくれた。物には全て妖精が宿っているから。楽器も妖精が音の出し方とかを教えてくれたんだよ。」

エリーザと話すウィルの姿は先ほどとは違い、少しずつ5歳の子供らしさが見えていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ