第七話 ウィルの秘密と宝物
エリーザはうつむきながら話すウィルをじっと見つめていた。
ウィルは話を続けた。
「妖精は時々、栄養を与えてくれるように思えるんだ。僕は、美味しい物や栄養が豊富な物をほとんどもらえないのに、風邪もひかずに暮らしているから。城の人たちは、青白くやせこけているにもかかわらず、風邪をひかないのは悪魔だからと噂をしているけどね。日の当たらない地下室にいるから、青白い顔なの。エリーザに悪魔だと思われたら悲しいな、、、。」
エリーザは思わず、大きな声でウィルに伝えた。
「ウィル、何を言っているの?私の話を聞いていた?私、あなたから優しいオーラが出ていると伝えたわよね?そして、リヒテル王国の言い伝えも伝えたわよね?優しい人に妖精が見えるって。私の事、信じていないの?それなら、もう、私、帰るわ。これ以上話しても無駄よ。」
ウィルが声を出す前に、エリーザは泣き始めた。
マーサとアニーが駆け寄ってきて、エリーザを抱きしめた。そして、ウィルから遠ざけようとした。エリーザは慌てて、
「マーサ、アニー、落ち着いて。私は大丈夫。急に悲しくなったの。ウィルが私の事を信じてくれないと思ったから。そして、私がもしも、ウィルの立場だったらと思ったら、生きていられないわ。ウィルはなんて強い人なのかしら、、、と思ったら、急に感情があふれてきたの。どうしても涙が止まらないの、、、。」
ウィルは驚きながらも、心が温かくなるのを感じた。
今まで、自分のために泣いてくれた人は、誰一人いなかったからだ。
実の母親でさえも、ウィルの事を気にかけてくれないから、初めてのことだった。
ウィルは
「エリーザ、ごめんね。君を信じているよ。でも、僕は、、、、誰にも信じてもらえず、悪魔の子だと言われて育ってきたから、自分自身もどうして良いのかわからなくなる時があるんだ。だから、泣き止んで。エリーザのような優しい子とお話が出来て、本当に幸せだから。」
エリーザは目に涙をためながら、ウィルを見つめた。
ウィルは「エリーザ、ありがとう。僕、生きていて良かったよ。君に会えたから。僕の秘密を信じてくれてありがとう。だから、話すよ。僕には、妖精だけではなく、たくさんの宝物も持っているということを。どんな宝物かというと、世界中の国々から集めた美しい本や絵、そして、素晴らしい楽器なの。」
エリーザは目を見開いた。真っ暗な地下室で暮らしているはずのウィルが宝物に囲まれて暮らしているとは思わなかったからだ。