第四十三話 街道沿いの宿屋でティアナ王国を知る
ロダンが慌てて戻ってきてくれた。
「ウィル様、お席の用意が出来ました。足元に気を付けて降りてくださいね。」
ウィルはゆっくり馬車から降りた。
宿は街道沿いにあるが、小さな森が後ろにあり、隠れ家のような雰囲気であった。
「ウィル様、こちらの宿は、ウィル様の曽祖父、ウィリアム王御用達でした。当時、ウィリアム王が考案した料理を宿の看板メニューにして良いと言われ、現在でもウィリアム定食という名物があるのですよ。本日はそちらをご用意いたしました。」
ウィルは嬉しくなった。
「ロダン、ありがとう!最高のおもてなしです。曽祖父様のことを知りたかったので、今から楽しみです。」
ウィルが宿の中へ入ると、吹き抜けの食堂、2階は宿泊施設となっている。よくある宿ではあるが、他の店と違うのは、食堂の中に大きな窯があるのだ。
そして、大きなヘラのような物に、何かがのっている。
体の大きな宿の主人が、大きな窯の中に、そのヘラを差し込み、ヘラの上のものを窯に入れた。
数分後、そのヘラを再度差し込み、先ほど入れたものをヘラにのせて取り出した。
そして、ウィルのテーブルに置いてあった、大きなお皿の上にのせた。
甘いトマトの香り、ふんわりとしたヤギのチーズ、そして、上に緑の葉がのっている。
店主が大きな声で話しかけてきた。
「ウィル様、当店名物の三国ピザです!ウィリアム王が考えましたメニューです。
ティアナ王国産バジル、リヒテル王国産ヤギのチーズ、そして、チェレーナ王国産トマトをふんだんに使ったソースを、薄く伸ばしたパン生地にのせて、この大きな窯で焼きました。
この窯もウィリアム王が考案したものです。ウィリアム王が留学から戻られた際に、友を忘れないようにと、名物を使ったメニューを考案したのです。さぁ、熱いうちに食べてください。でも、火傷には注意してくださいよ。ナイフとフォークで食べても良いですが、手づかみもピザ生地の感触を楽しめますからお勧めしますよ。」
ウィルとロダンは、大きなお皿から一切れとり、そのまま手づかみで食べることにした。
曽祖父様が考えた思い出の味、なんて美味しいのだろうとウィルは感動した。
王族のための高価で手の込んだメニューではなく、街の人も楽しく食べられる食事を考案したことにも驚いた。
ロダンも
「ウィル様、ティアナ王国は、戦争で農地が荒れてしまいましたが、この街道沿いは、戦争の被害が少なく、食材も豊富なのです。そのため、このメニューも途切れることなく食べることができました。特に、チェレーナ産のトマトは、ウィリアム王が苗を持ち帰ってくれたものなのです。当時、チェレーナ王国の皇子とご学友になり、友好の証として苗をいただいたようです。そして、この宿の裏で苗を栽培しました。チェレーナとの戦時中もこのメニューが食べられたため、三国ピザが消えることなく、現在も店の看板メニューに出来るのです。」
ウィルは、曽祖父が国民に今でも愛されていることを誇りに思った。
そして、自分もたくさんの事を学び、ティアナ王国国民に還元しようと心に誓い、三国ピザをぺろりと平らげた。
ロダンは笑いながら、もう一枚追加注文をしてくれた。
食堂の皆も、ウィルに笑顔で話しかけてくれた。曽祖父の思い出話や武勇伝を教えてくれた。幸せな時間がゆっくり流れる宿、ピザ窯の暖かさが、お客さんにも伝わっているのだろうか?ウィルはそんなことを思いながら、皆の笑顔を見つめていた。




