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第四十話 ウィル 旅立ちの朝

妖精達に別れを告げ、ウィルはティアナ王国の通用口に立っていた。本来ならば、正門から馬車で出発するのだが、第一皇子と第二皇子達の妨害にあわないようにするため、前夜に父王が通用口から出るように指示をしたのだ。交換留学生の話がウィルにだけきたことが、癪に障り、嫌がらせをしようとしているとの情報が侍女たちから入ったのだ。侍女たちは、これまでとは違い、ウィルに対して優しくなったのは、先日、ウィルが下した判断からであろう。父王も、穏便に出発できるようにと思い、通用口という場所を指定したのであろう。ウィルはどこから出ても構わなかったのだが、父王は、申し訳ないという面持ちでウィルに伝えてきた。

「ウィル、これまでは、私がふがいないために、辛い思いをさせてきた。今さらだが、謝罪を受け入れてくれるか?」

ウィルは父が国王ではなく、一人の父としてウィルに話しかけてくれたことが嬉しく、感動して言葉をつまらせた。

「ウィル、私とは話をしたくないほど、怒りを抱えているのだろう。すまなかった。ウィルがリヒテル王国で学び、ティアナ王国へ戻ってくるときは、お前に恥じない人間になるように努力しよう。国民の生活が少しでも良くなるよう努力をする。二人の皇子達の教育と、王妃たちの傍若無人ぶりも見直すこととする。」

ウィルは慌てて父王へ答えた。

「お父様、僕に対して謝らないでください。僕は、悲しかったけど、辛いとは感じませんでした。お父様の気持ちが知れたことが何よりも嬉しいです。だから、怒りは抱いておりません。誤解をさせたなら、僕の方が謝罪をします。ただ、出発前に、お顔を拝見出来、嬉しく、言葉に詰まっただけなのです。」

ウィルの思いを父王へ告げると、優しく、少しはにかみながら笑顔を見せてくれた。曽祖父の肖像画にある笑顔に似ていた。そして、少しだけ、自分にも似ているように思えた。

前夜の会話をウィルは思い出しながら、通用口で迎えの荷馬車を待っていた。荷馬車で城を出て、途中で王族の馬車に乗り換えるという計画だ。

通用口には司書さんが息をきらして駆けつけてくれた。寂しくひっそり旅立つウィルを少しでも励まそうと思って、朝早く誰にもみつからないように、走ってきたそうだ。そして、ウィルに一冊の本を手渡した。

「ウィル様、こちらは、あなたの曽祖父ウィリアム王が書いた諸外国の手記です。直筆の日記のようなものですから、勝手に持ち出すことは出来ません。お父様である、ヘンリー王が許してくださりました。馬車の中で是非お読みください。リヒテル王国について、そして、近隣諸国についても記載されております。留学先で出会う方と、会話の糸口になればと思います。

お体に気を付けて、立派に学んでティアナ王国へお戻りください。

私、マリアはあなたの無事をいつもお祈りしております。」

ウィルは司書さんといつも呼んでいたが、名前を初めて知ったことに恥ずかしさを隠せなかった。

「マリアさん、ありがとうございます。いつも僕のために勇気を与えてくれたこと、感謝しております。マリアさんから頂いた、知恵と勇気をもって、リヒテル王国へ旅立ちます。

今まで、名前を呼ばなくてごめんなさい。

これまで、友達っていなかったから、お名前を尋ねる行為を自分からしたことがありませんでした。リヒテル王国では、たくさんのお友達を作れるようにします。

マリアさん、大切なこと、教えてくれてありがとうございます。」

ウィルは迎えにきた荷馬車に乗った。

荷台には、たくさんの樽や箱が積み上げられ、その間にひっそりと体をうずめた。

御者は

「ウィル様、狭い空間に申し訳ございません。少しの間だけ、辛抱してください。

それでは、出発しますね。」

御者は静かに王城を出た。

ウィルは曽祖父の手記を胸に抱きながら、目をつぶり、少し眠ることにした。



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