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第三話 勿忘草の妖精は歌姫と呼ばれたい


「勿忘草の花を摘みましょう

大切なあなたへ贈ります

美しい青空を詰め込んだ

あなたの瞳と同じ色

忘れられない美しいあなたへ」


どこまでも澄み切った青空に溶け込む美しい歌声を口ずさみながら少女は丘をかけている。

ひらひらと舞う空色のドレスとキラキラ光る金色の髪、愛らしい笑顔、少女はくるりと振り向いた。

岩陰にいたウィルは気づかれたかと思い、もっと小さく体をかがめた。

少女はウィルではなく、乳母に向かって声をかけた。

「マーサ、無理をして丘を登らなくて良いわよ。転んでケガをしたら大変でしょ。丘の下でゆっくり休んでいてね」

「お嬢様、そんなことは出来ません。リヒテル王国の王女様を一人にするなんて、とんでもない!国王様に知られたら、マーサの首が飛びます」

少女は笑いながら

「マーサ、お父様はそんな心の狭い人なのかしら?こんなことで首を切るような人が国を治めて良いのかしら?」

「お嬢様、そんなことを言わないでください。たとえ話ですよ。国王様は国民に最も尊敬され、慕われている素晴らしいお方です。」

マーサの慌てふためく姿を見て、少女はクスクスと笑った。

「マーサ、大丈夫よ。侍女のアニーが近くにいてくれるから、安心してね。」

マーサが丘の上を見上げると、背の高い侍女がカゴを持って立っていた。

マーサはほっとして、岩に腰掛けようとした。

岩陰にいたウィルはマーサに気づかずに、顔を出した。

マーサのお尻がウィルの顔に近づいた時、

ウィルは驚き、慌てて顔をひっこめようとした。

しかし、思わず「あ~っ」と声を出してしまった。

岩陰から見知らぬ人の声に思わずマーサ、アニーは凍り付いた。

もちろん、当の本人のウィルが一番強張った顔をしていた。

少女はウィルに声をかけた。

「ねえ、あなた、どこからきたの?」

ウィルは恐る恐る答えた。

「ぼ、僕は、ティ、ティアナ王国からきました。

な、名前は、、、ウィ、ウィ、ウィル、、、です。」

少女は

「ウィウィウィル?素敵な名前ね」

「ご、ごめん。。。。ぼく、うまく話せなくて。。。。

ウィルです。

ぼくの、名前はウィルです。」

「聞き間違えてごめんなさい。私はエリーザ。

ウィルはリヒテル王国の言葉が話せるのね。

あなたは青月祭に来たの?それなのに、どうしてこの丘に来たのかしら?

この丘は、観光客が来るような場所でもないのに。」

エリーザは不思議そうにつぶやいた。

「ぼく、美しい歌声に誘われてきたら、この丘にたどり着いたの。

エリーザの歌声、本当に素敵だね。まるで勿忘草の妖精だと思ったよ。

姿も美しいし、、、、」

ウィルは照れながら、それでも心からの言葉を発した。

エリーザは

「褒めてくれてありがとう。

でも、私、妖精よりも歌姫(ディーバ)って呼ばれたいわ。私の夢はリヒテル王立音楽院首席演奏者になって、世界中を歌ってまわりたいの。」

「エリーザなら、きっと首席演奏者になるよ。僕もいつかリヒテル王立音楽院に入学出来ると良いのだけど、、、、」

ウィルは寂しそうにつぶやいた。


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