第三十八話 ウィル 留学へ出発~前日の出来事
ウィルは急遽出発が早まり、慌てて荷造りをしていた。妖精たちが、次々にトランクへ自分たちの宝物を詰めようとする。妖精からの贈り物は、一つ一つ小さな瓶に入っている。妖精たちの願いを凝縮した飴である。東洋の妖精達からは、武術が上達する飴。西洋の妖精は芸術が上達する飴、風の妖精は、体調を整えてくれる飴、色とりどりの飴が入った瓶は、トランクいっぱいになっていた。ウィルは、その姿をにこやかに眺めていたが、寂しくもあった。生まれてから、ここまで育ったのも妖精のおかげだ。自分の才能を開花させてくれ、寂しい時には話し相手にもなってくれた、身の回りの世話だけではなく、立派な大人になれるように知識を与えてくれた。妖精がいなければ、ウィルはこの世からいなくなっていたであろう。
妖精達は、地下室から出られないようだ。一緒にリヒテル王国へ行きたいが、叶わない。ウィルは、一人一人に声をかけた。
そして、もう一人、大切な人に挨拶へ行った。図書館の司書さんだ。彼女との出会いのおかげで、曽祖父のこと、そして、この国の事が良く分かった。父王と話すことが出来るようになったのも、司書さんが背中を押してくれたからだ。
ウィルは図書館の大きな扉を開けた。
司書さんは、いつも通り、大きな机に、いくつもの本を重ねて、一冊一冊丁寧に、ほころびが無いかどうか調べていた。
ウィルは本の隙間から顔を出した。
司書さんは驚いて思わず声をあげそうになったが、慌てて口を手で押さえて、ウィルをじっと見つめた。
「ウィル様、驚かさないでください。心臓が飛び出しそうでしたよ。私のような老人に、突然話しかけるようなこと、今後はしないようにしてくださいね。元気に見えても、突然のことに対処が出来ないのが老人なのですよ。リヒテル王国でも、周りをよく見て行動してくださいね。人によって、接し方を変えてください。あなたは、いつかティアナ王国の国王になるのですから、森の中の獅子のように、絶えず目を光らせ、慎重に、そして時には勇敢に行動しましょう。」
いつも通り、厳しくも優しさのある助言をしてくれた。
ウィルはにっこりわらって、司書さんにお礼を言った。
「司書さん、たくさんのことを教えて下さりありがとうございます。
僕は、司書さんの言葉を忘れずに、リヒテル王国でたくさん学んで、成長して帰ってきます。」
明日はリヒテル王国へ旅立つ日。
ウィルは、地下室から月を眺めた。
エリーザも同じ月を眺めているのだろうか?一緒に眺めていたら嬉しいなと思いながら眠りについた。




