第三十五話 ウィル ティアナ王国からの旅立ちまでの日々~その3
ウィルは父王の執務室の前に立った。
以前はこの扉に彫刻された獅子が恐ろしくてたまらなかった。
しかし、本日は、獅子の目を見ると、力強い信念を持つ勇気ある者の目に思えた。
ウィルは、獅子から勇気をもらえたように感じた。
そして、そのまま、扉を力強くノックした。
父王の良く響くテノールの声が聞こえ、扉を開けた。
父王は以前とは違い、ウィルを暖かく迎え入れてくれた。
「ウィル、お前の決断を聞こう」
ウィルは父王の目を見て、はっきりと答えた。
「僕は、全員に罰を与えたいと思います。
それは、今後、僕以外の人にも、真摯に向き合わず、ひどい態度をとった場合は重い罰が与えられると思い、真面目に、そして優しく働いてもらいます。
役職は、全てはく奪、または、降格をしていただきます。
教育係を付け、態度を監視してもらうことも条件です。
それが嫌な場合は、皆様に退職金無しで辞めていただきます。
自分自身で決めてもらおうと思います。」
父王は、ウィルを見つめながら答えた。
「ウィル、お前の判断は、優しすぎるかもしれない。しかし、まだ幼い人間が、強く罰するとなると、反感も買うだろう。
私は、お前の判断を尊重しよう。
リヒテル王国へ行くまで、これまで、何も身につけていなかったマナーを、第三皇子としてふるまえるよう、マナーの講師たちにもよく言っておこう。」
ウィルは深くお辞儀をして、執務室を出た。
寂しく、暗く見えていた執務室からの廊下は、柔らかい日差しが差し込み、明るく見えた。
ウィルはその廊下をゆっくりと歩きながらマナーの授業に向かった。




