第三十三話 ウィル ティアナ王国からの旅立ちまでの日々~その1
リヒテル王国への交換留学が決定してから、月日が矢のごとく過ぎ去った。ウィルにとって、今までの人生には無い、忙しい日々ではあったが、充実していた。エリーザに出会うまでのウィルは、好きな時間に起きて、妖精たちと地下室で過ごすだけだった。毎日の食事はプレートにのせられ、扉の前に置かれていたと聞けば、他国の人々は、囚人と同様の扱いだと思われる。ヘンリー王は、これまでウィルに対して、侍女たちが仕事をしていなかったことを知り、落胆した。ウィルが妖精たちに守られていなければ、この年まで生きられていなかったという事実を突きつけられたヘンリー王は、城で働く者たち全員へ伝えた。
『ウィルを第三皇子として接することが出来ない者は城から出てもらう。これまで、ウィルに対する誹謗中傷をした者、仕事を適切にしなかった者は罰する。』
ヘンリー王の言葉を聞き、これまでウィルを冷遇していた者たちは、恐れおののき、慌ててウィルに許しを請うために、列をなした。
ウィルは、列をなした者たち、皆に対して、第三皇子として威厳のある立ち振る舞いをしたいが、どうしたら良いのかわからず、悩んでいた。
妖精達の意見も様々だった。
「今までウィルに辛いことをしてきたから簡単に許しちゃだめだよ!」
「僕が魔法でこらしめてあげるよ!」
「ウィルは王様になるのだから、強くなくちゃ!」
「でも、優しい王様も良いと思うよ。ウィリアム王がそうだったもん。僕大好きだったよ」
「悪いことをしたのに、許しちゃっていいの?そういうのは優しいのかな?」
「優しいから厳しく罰することもあるよ?」
妖精達は意見の言い合いが激しくなり、対立しはじめた。
「みんな、ありがとう。仲直りをして。皆の意見を参考にして、自分で考えるよ」
そういうと、ウィルは地下室から出た。
ウィルは妖精たちの言葉を聞き、冷静に判断してくれる人に意見を聞きに行こうとおもったからだ。
図書館へ行くまでに、誰にも会いたくなかった。だから、妖精にお願いをして、地下室の周りに嵐をおこしてもらった。列をなしていた者たちは、ウィルの怒りなのでは?と思い、慌てて逃げた。
人がいなくなった静かな廊下を歩き、図書館の司書さんに会いに行った。
司書さんは、厳しいながらも、正しい判断、そして、最初にウィルを皇子として扱ってくれた人だから。




