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第三十一話 ウィル、父王ヘンリーへ自分を語る

ヘンリー王はじっとウィルを見つめていた。

ウィルの母、ニーナと結婚したのは、少しでも芸術に触れたかったからだ。

もちろん、ニーナの美しさ、そして舞踏に一目ぼれをしたという理由が一番だ。

ヘンリー王の心の底には、いつも、父のウィリアム2世が壊してしまったウィリアム王が建国した美しいティアナ王国を蘇らせたいという希望があった。

そして、毒母エリザベスが一番嫌う、美しい芸術家と結婚を、自分自身の意思で貫ければ、国も良くなるだろうと思っていた。

生まれてきた子供にウィルという名前をつけたのも、芸術の才能に恵まれるようにとの願いを込めて、ウィリアム王からとったのだ。

誰にも気づかれない地下室へ閉じ込めたのも、アーサーやジョージという兄たちにいじめられないようにという、ヘンリーの優しさでもあった。

ヘンリーは、地下室には、毒母エリザべスに処分されることとなった芸術品を保管していたため、ウィルがいつも芸術に触れられることを期待していたのだ。

誰にも伝えなかったため、ウィルが邪険にされているとは気づいていたが、少しでも優しさを見せてしまったら、毒母エリザベスに何をされるかわかったものではないと思っていたため、見て見ぬふりをしてしまった。


「ウィル、申し訳なかった。

今まで、ずっと、気にかけていなかったわけでは無い。

言い訳になるが、お前が一番ウィリアム王に似ていると思ったから、少しでも、わが母、エリザベスから遠ざけたかったのだ。

彼女は芸術をとにかく嫌っていた。

特に、ニーナのような美しい芸術家は、殺してしまいたいと思っているだろう。

だからこそ、ニーナには、世界中に公演をしてもらい、ティアナ王国にはなるべくいないようにしていた。

そして、ウィル、お前も、エリザベスに気づかれないように、しかし、芸術には触れられるように地下室へ閉じ込めてしまったのだ。

本当に、申し訳ない。

今更謝っても、許してはくれないだろう。」

ヘンリー王は、静かにウィルを見つめていた。

ウィルの燃えるようなニーナと同じ赤い髪、そして自分と同じ青い目、曽祖父の芸術に関する才能を引き継いだ第三皇子だと改めて思っていた。

ウィルは

「お父様、僕は曽祖父様が築き上げ、今は亡き、美しいティアナ王国を復活させたいと思います。そのために、リヒテル王国へ留学し、芸術だけではなく、文化や歴史、帝王学、全て学びティアナ王国へ戻ってきます。」

ウィルの決意に満ちた青い目を見て、ヘンリー王は涙ぐみそうになったが、ぐっとこらえた。

「ウィル、今のお前は、何ができるのか、教えてくれるか?」

ヘンリー王へウィルはゆっくり話し始めた。

「僕は、音楽の理論は地下室の本で学びました。楽器も触るとなぜか弾けます。見本となる音は僕の頭の中にありましたので、それを形にしていました。絵は、多種多様な様式で描けます。木炭だけではなく、水彩画、油絵、どれでも使えます。有名な画家の模写をして学びました。ほかにも、歴史は図書館の司書さんに質問をして教えてもらいました」

ヘンリー王は驚きを隠せなかった。

こんなにも、曽祖父ウィリアム王に似ているとは思わなかったからだ。

「ウィル、リヒテル王国からの推薦状には、第二皇女エリーザが、芸術の才能があると気づいたと書かれていた。ウィルはエリーザとティアナ語で話したのか?」

「お父様、違います。僕がリヒテル語で話しかけました。エリーザの歌声が素晴らしかったので、声をかけたのです。」

「リヒテル語は誰から学んだのか?ニーナはリヒテル語が得意ではなかったから、リヒテル王国へ行くときは通訳をお願いしていたはずだ。」

ウィルは迷った。

正直に妖精の事を話しても良いのだろうか?

気が狂っていると思われないか?

しかし、リヒテル語が話せる理由となれば、信じてもらえるかも。

ウィルは意を決して、これまでエリーザ以外に話したことがない、自分の秘密を父王へ伝えた。

「お父様、地下室には妖精がいるのです。

実は、リヒテル語だけではなく、音楽理論、楽器の演奏、絵の描き方、何でも教えてもらいました。それぞれの物に妖精がいるのです。例えば、リヒテル語の本を読むときは、妖精が読み方、発音、全て教えてくれました。ですから、リヒテル王国へ行っても、困りません。妖精は、地下室以外にはいないので、リヒテル王国へ行ったら、一人で頑張ります。」

ヘンリー王は静かに目をつぶり、ウィルへ伝えた。

「ウィル、正直に話してくれてありがとう。

実は、曽祖父、ウィリアム王も家族からは妖精王と言われていたのだ。

誰も信じなかったが、彼も妖精が見えたそうなのだ。」

ウィルは驚かなかった。なぜなら、初めて妖精と話したのは、ウィルをウィリアム王と間違えて話しかけてきたからだ。


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