第二十九話 ウィル、父王ヘンリーに呼ばれる
ウィルは地下室で妖精たちと歴史書を読んでいるとき、侍女がドア越しにウィルへ伝えてきた。
「ウィル様、父王、ヘンリー王がお呼びです。至急、執務室へお越しくださいとのことです。」
ウィルは慌てて支度をした。
いつもは、誰にも気にかけてもらえないから、何も考えずに着替えているが、父王の執務室へ行くなら、そうはいかない。
妖精達の力を借りて、ウィルは先日の青月祭へ着ていった礼服に身を包んだ。
「妖精さん、ありがとう。皆のおかげで自信がついたよ。
お父様に呼ばれる理由は全く思いつかないけど、頑張ってくるよ。応援していてね。」
ウィルは以前とは違い、しっかりとした足取りで執務室へ向かった。
途中、近衛兵が近づいてきて、会釈をし、ウィルを執務室へ案内してくれた。
これまで、「もぐら」と言って馬鹿にしていた近衛兵達の態度もすっかり変わった。
ウィルはエリーザの言葉を思い出し、心の中でつぶやいていた。
「自分を信じる。
あなたを信じる。
苦しいことも、悲しいことも、
二人の気持ちが一つになれば、
必ず幸せになれる。」
そして、そっと、上着のポケットに手を入れ、リボンを握りしめた。
エリーザからもらったリボンだ。
遠く離れていても、この言葉とリボンのおかげで、ウィルはエリーザを感じていられた。
それだけでも、強くなれる気持ちになった。
執務室の前に到着した。
この思い扉の向こうには父王、ヘンリー王が座っているはずだ。
実の父にも関わらず、ほとんど会話をしたことがないため、ウィルは言葉を発することが出来るのか心配になってきた。
もう一度、リボンを握った。
「エリーザ、僕、強くなるよ。」
もう一度心の中でつぶやき、目を上げた。
扉にはティアナ王国の紋章が掘られている。
月桂樹の葉で囲まれたフレームの中に獅子が正面を見ている。
ウィルは獅子と目を合わせた。




