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第二十四話 ウィル、ティアナ王国の歴史書を読む

ウィルはゆっくり、そして一行一行、少しも読み飛ばすこともなく、ティアナ王国の歴史を頭の中に描きはじめた。

ティアナ王国はウィルの曽祖父、ウィリアム王が建国し、大発展をとげた裕福な国だった。

建築家として有名だったウィリアム王は芸術家としても優れていた。

ウィリアム王は荒れた土地を上手く利用し、美しい街並みと農地を作り出した。街の皆に慕われ、村長となった。ウィリアムの手腕は有名になり、さらに裕福になった村へ近隣諸国からも人々が移住しはじめ、数年でティアナ王国が出来上がった。

その時に、今、ウィルが住んでいる城が完成した。当時は美しい音色を奏でる大小5つの鐘が朝夕に鳴り響いていたようだ。ウィルはどんな音がするのか、聴いてみたくなった。今の城には、鐘はあるが、緊急事態を知らせるだけの用途となり、たった1つの鐘しか鳴らない。

また、今では戦争で崩れ落ちてしまった外壁には、繊細な彫刻で飾られていたようだった。

『曽祖父の築き上げた美しく平和な国に戻したい』

ウィルは心からそう願った。

そして、読み進めていくうちに、だんだん悲しい内容へ変わっていくのだった。

ウィリアム王の息子、ウィリアム二世はチェレーナ王国からエリザベス王妃を娶った。

エリザベス王妃は嫁いできた時は、物静かで知的な女性だと思われていた。実際、エリザベス王妃は頭の回転が速く、知識も豊富ということで、ウィリアム二世の妻にふさわしいという理由でティアナ王国へ招かれたのだった。しかし、チェレーナ王国では妹たちは美しい容姿に恵まれ、民からも慕われ、エリザベスは見栄えが悪く、いらない王妃だからティアナ王国へ嫁いだと噂されていた。また、近隣のクラーク王国、リヒテル王国の王妃は絶世の美女と呼ばれる人ばかりだったため、一代で築きあがった成り上がりの王国しか嫁ぎ先が無かったという心無い噂さえも出回っていた。

エリザベス王妃は、ウィリアム二世を言葉巧みに操り、自分の故郷であるチェレーナ王国だけではなく、クラーク王国やリヒテル王国を侵略し、見返したいという野望を抱いていた。

ウィリアム二世は心優しい青年だったため、エリザベス王妃の策略に気づかず、いつのまにか、戦争をおこしてしまったようだった。

ウィリアム二世の息子、ヘンリー王が成人する頃には、戦争が激しく、男性国民は、ほとんど徴兵され、働き手がいない国は、輝きを失っていった。

エリザベス王妃によって芸術は禁止され、生き残った国民は日々の生活を細々と暮らすだけとなってしまった。

その後、チェレーナ王国は左側の左国のみ、ティアナ王国に占領された。ドマーニ川という大きな川向こうの右国は侵略できなかった。チェレーナ王国からはヴィクトリアという貴族がヘンリー王の第一王女として迎えられた。クラーク王国は停戦協定を結ぶこととし、ヘンリー王へレオノラ王妃を第二王妃として嫁がせた。

リヒテル王国は高く、険しい山脈に囲まれているおかげで戦争に巻き込まれなかった。

ヘンリー王は母であるエリザベス王妃の政治に疑問を抱いていた。しかし、いつのまにか、エリザベス王妃が巧みに作り上げた蜘蛛の巣にかかった蝶のように、ただ縛られ、羽ばたけずに戦争を見続けるだけであった。

たった一つ、エリザベス王妃へ反抗したことと言えば、ウィルの母である、ニーナと結婚したことだった。

『お父様は、もしかすると、戦争が嫌いなのかも。曽祖父、ウィリアム王の時代に戻したいと考えているのかもしれない。芸術を愛しているから、母様と結婚をしたのかな。僕がリヒテル王国へ留学したいと言ったら、本当は嬉しいのかな。』

ウィルは淡い希望を胸に抱き、どうやって留学をしようか考え始めた。


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