第二十三話 ウィル、歴史を学び疑問を抱く
ウィルは『ティアナ王国と諸外国の歴史』という本の表紙をめくった。
1ページ目には、優しそうだけど、どこか威厳のある王様の肖像画が印刷されていた。
「この人は、お父様にも少し似ているけど、雰囲気が全く違う。
お父様は、いつも眉間にシワを寄せて、怖い顔をしているけど、この人の笑顔をみていると、エリーザのお父様を思い出す。」
ウィルは、下に描いている名前を見た。
「民に愛されたウィリアム王」
ウィルはもう一度見直した。
「民に愛されたウィリアム王?」
思わず声に出してしまった。
静まり返った図書館にウィルの声が響き、ウィルは思わず椅子の下に隠れたくなった。
その声に気づいた図書館司書がウィルの側へやってきた。
「第三王子様、何かご質問等ございますか?」と声をかけた。
ウィルは隠れる暇もなく、司書に話しかけられてしまった。
「司書さん、すみません。
思わず大きな声を出してしまって。
気をつけます、、、。」
「第三王子様、気になさらずに。
ここの図書館は、小さな音も響くように設計されていますから、小声でささやいても聞こえてしまうのです。
お陰で、悪い人が侵入しようとしても、すぐに足音で気づかれてしまいますから、貴重な蔵書が守られているのですよ。
あなたが持っている、この本に描かれているウィリアム王がそのように設計をしたのです。」
「ウィリアム王がこの図書館を設計したの?」
ウィルが質問をすると、司書は優しく答えてくれた。
「ウィリアム王は、図書館だけではなく、この城も設計しました。
また、この城だけではなく、街の整備、そして、美しいコンサートホールや美術館、立派な設備の整った病院等、全て設計したのですよ。
ウィリアム王は、天才建築家だけではなく、芸術家ともいわれていました。」
「ぼく、、、、そんな綺麗な建物、見たことが無いよ、、、、。どうしてかな、、、。ずっと地下室にいたから知らないのかな。」
ウィルがつぶやくと、司書は悲しそうな顔をして話してくれた。
「ウィリアム王は第三王子様の曽祖父となる方です。ウィリアム王の時代は、ティアナ王国はどの国よりも美しく、芸術を愛し、民が裕福な国だったのです。
悲しいことに、第三王子様のお祖父様ウィリアム二世、そしてお父様のヘンリー王が戦争を始めたため、全て失ってしまいました。
なぜ、このようなことになったのか、民は皆知りません。
しかし、いつか、また、昔のティアナ王国に戻ると信じて生きているのです。」
ウィルは言葉を失った。
このような悲しい国になってしまったのは、祖父と父が原因だということを知り、胸が押しつぶされそうだった。
ウィルは、なぜ、このようなことになってしまったのか、そして、ウィリアム王が作ったティアナ王国を知りたいと思った。
「第三王子様、そちらの本は貸し出し不可となっておりますが、特別にお部屋へお持ちいただいても大丈夫ですよ。
司書の私が責任を持って、お貸しします。
是非、ゆっくり一人でお読みください。
いつか、第三王子様がウィリアム王のような人になっていただけると信じております。
私はこれまで、たくさんの王族、貴族の方を見てきました。
その中で一番、ウィリアム王に似ていらっしゃると思ったのは第三王子様です。」
ウィルは司書の言葉に感銘を受けた。
今まで、エリーザ以外に僕を認めて信じてくれた人はいなかった。
ウィルは司書にお礼を言って本を小脇に抱え、地下室へ戻った。
そして、ゆっくりと本を読み始めた。
妖精達はウィルを静かに見守っていた。




