第二十一話 ウィル、第二王子と対決する
重い扉をあけると強い光に目がくらんだ。
思わず後ずさりしそうになったが、扉の外へ歩き始めた。
ティアナ王国は要塞を兼ねた作りの城である。
岩山の中腹に作られた城は、城壁を兼ねた建物が周囲を囲むように建てられている。中庭のような広場があるが、庭と呼ぶには殺風景だ。土もないため、花など植えることもない。そのような広場を通り過ぎると図書館のある建物へ早く行くことが出来る。
ウィルは緊張しながらも、初めて一人で見る建物を眺めながら歩いた。
いつも、下を向いて、近衛兵に連れられて行くだけの道だったが、こんなにも建物が高いとは思わなかった。
建物が何階建てなのか、数えているとき、後ろから声が聞こえてきた。
ウィルが慌てて振り向くと、第二王子と友人たちが、ワイワイ剣を振り回し、ふざけながら歩いてきた。
剣術の授業が終わったのだろう。
「おい、おまえ、誰だ?
ここで何をしている?」
第二王子の友人がウィルに向かって言った。
「不審者としてつかまえようぜ!」
そう言って、また別の友人がウィルの腕をつかんだ。
その時、友人は、まるで風に舞う木の葉のように宙を舞い、次の瞬間、地面にひれ伏していた。
第二王子があっけにとられて、棒立ちになっていた。
他の友人たちも次々にウィルへとびかかっていった。
ウィルは、東洋の妖精に教えてもらった合気道を使って、次々と倒していった。
最後に、第二王子が剣を抜き始めた時、ウィルは大きな声を出した。
「ジョージ兄さま、剣を下ろしてください。
僕は第三王子、ウィルです。」
第二王子達は、皆、耳を疑った。
これまで第三王子の存在は知っていたが、皆、見たことも、会ったことも無かったからだ。
侍女や近衛兵達に「もぐら」と呼ばれ、地下にこもり、一歩も外に出てくることの出来ない、赤毛のやせ細ったガリガリの悪魔のような人間、声も弱弱しく、言葉の滑舌も良くないという噂の第三王子。
目の前にいる第三王子のウィルは、噂とは全く違う。
赤毛ではあるが、ガリガリとは程遠い。
実は、リヒテル王国で叱咤された近衛兵達の話を聞いて、これまでと待遇が変わったのだ。
今まで馬鹿にしていた侍女たちも、ウィルが自分の意見を言えるように変わったから、反撃されるのでは?
呪われるのでは?と恐れはじめ、食事などがしっかり与えられるようになったのだ。
そのおかげだろう。
体格が変わり、さらに身長なども伸び、どんどん成長したおかげで、
堂々と、威厳のある姿になったのだ。
第二王子達は唖然とした。
そして、ウィルが行った見たことのない動きに圧倒されていた。
「おい、ウィル、お前、今、何をしたのだ?
噂通り、悪魔なのか?
呪術で仲間を吹き飛ばしたのか?」
ウィルはおかしくてたまらなかった。
今まで、どうして、こんな人たちを恐れていたのだろうか?
笑いをこらえながらウィルは答えた。
「ジョージ兄さま、僕は図書館へ行きたいだけです。
それにも関わらず、不審者とみなして攻撃されれば、反撃するのは当たり前です。
兄さまたちも、剣の技術だけを磨くのではなく、他の技も身につけると良いですよ?
いつでも剣を持ち歩き、見せるだけでは相手に勝てませんよ。
僕を悪魔と呼ぶのは構いません。
しかし、邪魔をするのは辞めていただきたいです。」
そう言い放つと、ウィルは真っすぐ歩き始めた。
床に這いつくばったままの人を横目に、ゆっくり過ぎ去った。
『エリーザ、僕は変わったよ。
リヒテル王国へ行く日まで、もっともっと強くなるよ。
だからエリーザも待っていてね。
君に会いたいよ。
今、何をしているのかな?』
ウィルはエリーザへの思いを抱きながら図書館へ向かった。




