第二十話 ウィル、地下室から出てみた
ウィルは毎日、東洋の妖精達と合気道の訓練を続けていた。
ウィルは持ち前の感受性の強さ、音楽演奏で培ったリズム感、柔軟性、協調性のおかげで、あっという間に上達をしていた。
東洋の妖精達も、練習の時は大人のように大きく変身をしてくれた。
時には魔物に変身して、ウィルがこの先、どのような相手でも負けないような訓練をしてくれた。
「ウィル、そろそろ合気道の練習も良いけど、他の勉強も必要だと思うよ。
第一王子や第二王子には様々な分野の家庭教師が付いているとの噂をきいたよ。
地下室には芸術関係や文学作品のような、戦からは遠ざかった物しかないよね。
ティアナ王国では必要のない禁書ばかり覚えても、他の王子には勝てないと思うよ。」
本の妖精がウィルに伝えた。
ウィルも同感だった。
「でも、僕はどうしたら良いのかな?」
ウィルには思いつかないのだ。
「図書館へ行ってみたら?図書館の本の妖精に、ウィルに必要な勉強を教えて欲しいと頼んであげるよ。」
ウィルは緊張した面持ちで、震えるような声を出した。
「え、ええっと。ぼ、ぼくが、図書館へ行くの?
それは、地下室から出て、剣の訓練所を横切らないと、、、、
ど、、、どうしよう、、、。
ぼ、ぼく、行けるかな、、、、。」
リヒテル王国で治した吃音が、ここでまた出てしまった。
ウィルの吃音は、緊張や不安から出るものであった。
妖精達が
「ウィル、大丈夫だよ!
それに、ここを出て強くならないと、エリーザに二度と会えないよ!
そのための第一歩だよ。」
そういわれると、ウィルの顔も引き締まった。
「エリーザに、二度と会えないなんて嫌だ!
僕は約束したんだ。
そして、芸術を学びに行きたい。
合気道だけで終わってしまったら、訓練した意味がなくなってしまうね。
妖精さんたち、ごめんなさい。
僕、頑張って図書館へ行ってみるよ!」
妖精達は皆、喜んだ。
ウィルが強い意志を持ってくれたこと、そして、夢を持ってくれたことが、妖精達も嬉しかったのだ。
ウィルは妖精達の声援を胸に、地下室から一歩一歩と歩み出た。
そして、外へ続く階段をゆっくり上がってみた。
一人でこの階段を上るのは初めてだった。
先日、リヒテル王国へ行くときは、近衛兵達に馬鹿にされながら上がった。
ウィルは外へ続く扉の前で立ち止まった。
鍵はかかっていない。
しかし、自分では明けたことのない、外への扉。
この扉を開けて、ウィルは新しい自分に生まれ変わる第一歩を踏み出した。




